□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第361回配信分2011年03月28日発行 第三の奇跡を生むか、みんなで頑張る 〜復興、復旧より建設的な創造で前進する〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●これくらいの想定外の災害と言うのは、阪神大震災以来だ。平成07年01月に 起こった阪神淡路大震災も、それは大きな地震だった。京都にいて感じたの は、震度5くらいだったが、震源地の神戸では震度7。地震計の針が振り切れ たので、すぐにNHKTVでの放送では、神戸の震度が表示されなかった。データ がなかった。なので、一番大きな被害は大阪のように感じた方も多かった。そ して、しばらくしてようやく神戸が激震のど真ん中ということがわかった。 ●確かにあの震災の被害も甚大だったが、エリアが狭かった。尼崎から明石く らいまでと淡路島周辺なので、逆に集中はしていたが対応も早かった。地域が 狭かったことが被害は大きかったが、復興のピッチは早まった。しかし、今回 はそうはいかない。太平洋沿岸に沿って数百キロの海岸線が軒並み被害にあっ た。これを修復、復興するのは大変だ。なにせ、茨城県あたりの海岸線から青 森県まで、果てしなく延々と続く海岸線を全部カバーするのは至難の業だ。 ●はたして、ここに万里の長城のようなとてつもない防波堤、津波防止の堤防 を建設することが正しいのだろうか。今回の震災と津波で多くの学者の方が想 定外という言葉を使ったように、自然は人知を乗り越えて鉄槌を下した。それ なら、さらに大きな鉄槌に対して万全の備えをすることが正しいのか。これは 真剣に議論しないといけない重たい課題だ。今回絶対に安全と太鼓判を押され た防波堤が、いとも簡単に決壊し、津波は乗り越えた。今後も起こらないとは 限らない。 <過去の経験から学べることはしれている> ●だいたい、想定される津波の高さは10m以下で・・・・、というような前提 で色々な防災計画が作られている。しかし、阪神淡路大震災でも想定以上の震 度だったし、今回の津波も想定をはるかに越えていた。それに100%対処する には莫大な費用と労力が必要だ。それくらいの投資(金額は分からないが)を するなら、都市や町の設計の計画自体を抜本的に見直す必要がなるかもしれな い。過去にこだわるより、100年先の未来を見たほうがいい。 ●数十万人の被災者を全部元通りに戻すには、多くの費用と時間がかかるだろ う。被災者の方には申し訳ないかもしれないが、ここは大きな決断が必要だ。 一定の割合の人員は別の場所に移住する。そこに大きな安全を確保した都市を 新しく作る。近代的なITを駆使し、環境に配慮した近代的な都市を新しく創造 する。その周辺に工業団地を作ったりして、雇用を確保する。新しい農業のス タイルも実験する。新しい創造的な都市がひとつできる。 ●これはひとつの県でできる業ではない。国家あげてのプロジェクトでなし得 るような業になるだろう。しかし、震災の復興に投資するなら、復旧を目的に するより、建設的で前向きな創造的な投資でありたい。新しい生活に慣れ親し むには時間がかかるだろうが、5年、10年経過すれば、それが結果的に正解 だったということにならないか。第三の奇跡を生むには、これくらいの思い 切った決断と先見の明が必要かもしれない。そうすれば、立ち直る可能性が高 い。 <一方では想定外のリスクにも備える> ●しかし、首都圏から西の海岸線では従来どおりのリスクへの対処が行われて いる。静岡県から西のほうでは、いつ何時これくらいの震災が起こらないとも 限らない。今回の震災と津波、そして原発のトラブルを大きな教訓にして、想 定外のトラブルにどう立ち向かうか、日頃から訓練が欠かせない。今回くらい のアクシデントが起こると、訓練のシナリオには乗らないが、しかしやらない よりはやったほうがいいに決まっている。特に抜き打ちでやる訓練は貴重な教 訓が生まれる。 ●だいたい、大きなトラブルになるときは、一次災害の次に二次災害が起こ る。その二次災害が事故の被害を大きくする。成岡の勤務していた製造業は24 時間365日の連続操業で、温度も350度くらいのものが常時非常に高速で流れて いるという非常に危険をはらんだ事業所だった。結構、毎日緊張の連続だっ た。そういう現場でトラブルは、忘れたころに起こる。電気系統のトラブル、 システムの故障、機械のダウン、人的なミス・・・。あげればきりがない。 ●もともと機械化が進んではいるが、所詮人間のすることだからミスは付き物 だ。標準書があってもその通りいかないのが、現場なのだ。デスクで考えてい る、机上の議論ではいかない、できないことがトラブルのときには増幅され る。そこが非常に怖いところだ。人間はトラブルの際には、想定外の考えられ ない行動をする。系列を間違ってポンプを止める。違うスイッチを押す。ア ラームが鳴っているのに、無視する。所詮誤報だと思い込む。それが実際は現 場では大変なトラブルが起きているのに分からない。 <完全に自然の脅威をカバーはできない> ●リスクへの対応は、起こる頻度、起こったときの影響度などを掛け算して考 える。当然、重たい順番に対応を考える。しかし、それは全部机上でのシュミ レーションだ。想定内の範囲で起こったことには、一定程度対処できるが、想 定外以上に起こった災害やトラブルには対処できない。数百年に1回の大規模 災害には、実際には対処できない。まだ可能性としては残っている富士山の噴 火に対して、どこがどう対応策を準備しているのか。 ●実際には割りきりが必要だ。ここまではカバーできても、これ以上はカバー できないというのが実際のところだ。そういう対処の仕方なら、割りきりが必 要だ。淀川水系委員会で議論になったのも、起こることが稀なトラブルや災害 に対して、コストパーフォーマンスに合わない投資は意味があるのかというこ とが、議論の対象になった。結論は別にして、そういうプロセスが明々白々に なったことは意味がある。情報の公開には大きな意義がある。 ●挙国一致内閣を編成し、原発のトラブルが収まったら早く議論を開始する。 選出議員の地元の利害得失から判断しないようにする。自分の足元の部分最適 より、5年先10年先の日本のあるべきビジョンを示して、全体最適へ向けてど ういう努力ができるのかを真剣に考える。誰かがリーダーシップを取って、方 向を示し、全員がベクトルを一致して、その方向に邁進する。それくらいリー ダーシップの取れる人が出てこないと、この国家の危機は乗り越えられない。