□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第375回配信分2011年07月04日発行 頑張れ被災地「相双連合」高校野球 〜校歌、帽子とにかく出場することに意義あり〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●先週末の土曜日、母校洛星高校野球部の本年夏の高校野球予選出場を前に、 母校グランドでの壮行会が行われた。この行事は3年前から始まり、高校、中 学の現役選手、チームへ、夏の選手権大会予選出場を前にグランドで記念品 (ボール)をOB会から贈り、選手を激励するものだ。昨年は土砂降りの雨の中 で屋内での激励会となったが、本年は曇りながらグランドのバックネット前で 行った。OB20名、高校現役選手30名、中学現役選手40名、父兄などが見守る 中、一言激励の挨拶を申し上げた。 ●結果はともかく元気でケガなく力いっぱい日頃の練習の成果を試合で発揮で きることが最大の願いだ。このために3年間、6年間しんどい思いをして、頑 張って練習に励んできた。対戦相手がどこであろうと、結果を恐れず持てる力 を全部出せれば最高だ。結果はあとでついてくると思えばいい。特に高校3年 生はこれが最後の公式戦であり、これが終わると6年間の野球生活にいったん ピリオドを打つことになる。だから、どんな大会よりもみんながこの夏の大会 に向けて闘志を燃やすのだ。 ●ところが、今年3月の大震災で被災地の高校では、それこそ練習もままなら ない。練習がままならないより、チームが編成できない学校もある。選手自身 が亡くなったり、身内が被災したり、家族ばらばらになったり。それでもせっ かくここまで頑張ってきて、何とか試合にだけは出場したい。そんな被災地の 学校が連合して、本当に例外的な対応を高野連も認めて、福島県の学校3校が 連合艦隊で参加できることになったという。この新聞記事を読んで、野球小僧 であった筆者は感激、感動したので、今回ご披露することとした。 <頑張れ「相双連合」高校> ●毎日新聞の記事によると、福島県大会の県予選の抽選会が先日福島県郡山市 内で行われ、福島第1原発事故の影響で転校が相次ぐなどして部員が減少した 双葉翔陽、富岡、相馬農の3校で結成された「相双連合」は、1回戦で喜多方 高校との対戦が決まった。合同チームの初戦の相手は遠藤剛司主将(双葉翔陽 3年)の左手にゆだねられた。無数のフラッシュを浴びながら「相双連合、9 番です」と大きな声。会場から起きたどよめきが注目度の高さを物語ってい た。 ●東日本大震災後、各校の多くの部員は家族とともに避難、県内外に転校して いった。富岡は部員が7人から1人に、相馬農は4人から2人に減少。部員が 9人に満たないことから、ともに地方大会への出場は難しい状況だった。一方 で、19人から14人となった双葉翔陽は単独でも出場は可能だったが、話し 合いの結果、地域のつながりを重視して、日本高野連が特例措置での適用を決 定した連合チームを結成することになった。この英断はなんと素晴らしいこと ではないか。 ●スポーツニッポン新聞によると、相双連合のチーム名の由来は、双葉翔陽 (大熊町)、富岡(富岡町)、相馬農(南相馬市)の3校は、福島県沿岸部の 相双地区という地域に所在している。そのため、地域名に起因して「相双連 合」というチーム名となった。校名の頭文字をとったものではないということ だ。連合チームの名称にも地元の熱い期待と復興への想いがこめられている。 対戦相手は何となくやりにくいだろうが、とにかく何も考えずに全力でプレー して欲しい。悔いの残らないように。 <校歌とユニフォーム> ●3校が一つのチームとなったため、服部芳裕監督(52)によると「校歌は 3勝して1校ずつ順番に流していこうという案もあった」。しかし、福島県出 身の作曲家・故古関裕而(ゆうじ)氏が手がけた夏の高校野球の大会歌「栄冠 は君に輝く」をチームの校歌代わりにすることに決めたそうだ。それぞれの校 歌は、シートノックの際に球場で流されることになった。「栄冠は君に輝く」 という大会歌は、戦後の学制改革で1948年に「中等野球」から「高校野球」へ と変わったことを記念し、歌詞を公募してできた大会の歌だ。 ●採用された加賀大介さんの歌詞に作曲家の故・古関裕而氏が曲をつけて1949 年から夏の甲子園の大会歌に採用された。開会式と閉会式で歌われ、甲子園を 中継するNHKの学校紹介の際にも流されることで有名だ。「雲〜は湧〜き  光〜あふれ〜て」で始まる歌詞は多くの野球ファンの間で親しまれている。 我々もこの大会歌がかかると、ああいよいよ甲子園が始まると気持ちが新たに なる。それくらい高校球児には特別の思いで聞く歌になっている。 ●連合チームの場合、ユニホームはバラバラでも出場は可能だという。ただ、 高野連の規定で着用する物のうち何か一つは統一する必要がある。そのため、 「相双」と刺しゅうされた紺色の帽子を発注。24日にも届く予定で、25日に行 われる初の練習試合でお披露目となった。ナインは平日、県内各地の計6校の 公立高校に散らばって学校生活を送っている。全体練習は週末を利用した週1 回のみ。決して満足な練習環境ではないが、服部監督は「徐々にチームの形に なってきている」と手応えをつかんでいる。 <何にも代えがたい野球ができる喜び> ●開幕まで残された練習は2回。双葉翔陽のメンバーにとって初戦の喜多方は 1年前の3回戦で敗れた相手で「打撃には自信があるので、点の取り合いに持 ち込んで勝つ。リベンジしてみせる。仲間も増えたので、三つのチームの力を 合わせて全力で頑張りたい」と連合チームの遠藤主将は語る。野球ができる喜 びをかみしめながら、歴史的勝利に向かって17人が一丸となる。このチームの 勝利が、努力が、復旧復興のひとつのシンボルになれば、地元の人に大きな元 気を与えられる。 ●平時では分からないことだが、素直に野球ができることは本当に幸せなこと だ。高校野球も太平洋戦争中は中止になった。モスクワ五輪も東西の冷戦のあ おりを食って日本選手団は不参加だった。スポーツが何も考えずに純粋に打ち 込める環境は、本当に何にも得がたいものだ。大震災があって始めて改めて認 識したこと。それはひとつの目的に向って一生懸命泥臭く努力する尊さだろ う。そこに観客は、ファンは純粋に魅力を感じる。10点以上負けていても全力 疾走なのだ。 ●諦めないこと。最後までやりきること。無心で努力すること。継続するこ と。筆者も野球生活から学んだことは多い。それは、いまのいまも大きな財産 となって生きている。この連合チームの結果は別として、連合チームの結成に 尽力された学校関係者、父兄、選手、高野連の方々に拍手を送りたい。もし、 初戦で負けても、あるいは決勝戦まで進んでも、結果は別として、一生の思い 出になるだろうし、地元被災者のみなさんに大きな力を与えることになるだろ う。遠い京都から声援を送りたい。