□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第376回配信分2011年07月11日発行 トップは信頼感を損なってはいけない 〜試行錯誤は構わないが基本はしっかり〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●このメールマガジンで政治の話しはご法度にしている。○○政党がいいの悪 いのという論評をすることは極力避けている。政治に関してはいろいろな人 が、いろいろな想いがあるだろうから。しかし、昨今の政府の迷走振りには呆 れてものが言えない。いったい何を考えているのか。本当に冗談のけて、こう いう国からはまともな産業やまともな企業は海外に脱出を真剣に考えるだろ う。いや、普通の神経や常識の持ち主なら、さっさと海外でビジネスを展開す るだろう。そう考えてもおかしくない。 ●原発がいいとか悪いとか、それもあまり議論したくない。それも、利害得失 いろいろとあるだろうから。しかし、基本方針の迷走はいただけない。特に トップが決めた基本方針がぐらぐらすると、土台から揺れてくる。自分の家で 言えば、こういう家を設計したいと言っておいて、設計士に図面を書かせ、工 務店が工事を始めてから、突然気が変わって設計変更するようなものだ。それ なら、もっと最初からきちんと筋道を立てて、きちんと手順を踏んで、時間が かかってもいいから、きちんとやるべきだ。 ●それが、突然気が変わったと言って、やおら急に思いついて、変更を指示す る。現場はたまったものではない。ちょっと待ってくれよということになる。 自分が一番偉いのだから、どう変更を言っても構わないと思っているのかもし れないが、それは独裁者のすることだ。昔の社会主義国の方式ならいざ知ら ず、日本のような高度に社会の仕組みが発達した国では、時間がかかっても手 順を踏んで、きちんと議論をして、それなりの納得感でことを進めないといけ ない。 <朝礼暮改はきちんと説明責任を果たす> ●よくあることだが、状況や環境が変わると、決定が変更になることは、まま ある。それは当然のことだ。経営とは、環境の変化に適応することだから、環 境が変われば当然決定が覆ることもある。それは悪いことではない。旧来の決 定にしがみついたままで、何も新しいことを取り入れないで、そのままにして いるから、業績が次第に悪化していく例を、筆者はいやというほど見てきた。 そんな例は、枚挙にいとまない。しかし、それは各論の細かい方法が変更され ることだ。おおもとの基本方針がころころ変わることはまずい。 ●そして、変更してもいいが、きちんと説明をすることは大事だ。なぜ、この 時期、タイミングに変更するのか。その理由は何か。期待する効果は何か。 バックアップのシステムはどういうことが用意されているのか。などなど、面 倒かもしれないが、トップには説明責任がある。説得は難しいが、一生懸命説 明することは大事だ。しかし、たいがいそれをなおざりにするトップが多い。 そうなると、信頼感が崩れ、モティベーションが極端に下がる。どうせうちの トップはまた気が変わるからという空気が蔓延する。 ●そうなると、変えたことがまたきちんと伝わらない。本気で聞いていない。 どうせまた変わるよということなら、真剣にやらない。様子見して、誰かが犠 牲になるのを見ている。自分が先頭で旗を振ることはしない。真剣に考えて決 定された変更ではないというのを、従業員は、社員は見抜いている。そうなる と、組織のモティベーションは極端に下がる。ずっと下がりっぱなしで、どん どん業績は悪化する。トップは自分のせいだと思わないから、どうしても従業 員が悪いと言うことになる。 <部下を二階にあげて梯子を外さない> ●最悪は、今回のように部下を二階に上げて梯子を外すことになる。梯子を外 された部下は、トップを恨みながら、二階から飛び降りないと仕方ない。危険 とリスクを覚悟で二階から飛び降りる。ケガの程度はいざ知らず、飛び降りた ことは本人はずっと覚えている。指示したほうは意外と覚えていないことも多 いが、被害者的な立場の者は一生忘れない。それくらい、部下を二階に上げて 梯子を外すことは、上下関係の信頼を根本から揺るがす大事件だ。しかし、ど うもそうは感じていないように思える。 ●自分はトップだから方針の変更をして何が悪い、という開き直った印象が強 い。各論は都度変更しても構わない。しかし、政策の、方針の基本事項に関わ ることは、そうやすやすと気が変わったからといって変更してもらっては困 る。東京行きの新幹線に乗って東京に向っているのに、突然名古屋で途中下車 して何か食べるようなものだ。それは、朝令暮改ではなく、わがまま、天邪鬼 というものだ。それを誤解されているトップの方もあるだろう。部下との信頼 関係が崩れると、修復に時間がかかる。 ●飛び降りる前に梯子をかけて、戻せばまだ被害は小さい。しかし、ここから 意地になって梯子を戻さない。面子などを重んじて時計の針を戻すことをため らう。面子や立場などどうでもいいので、正しいことを正しい手順でやり直せ ばいい。しかし、たいていそういうリセットはやらない。もっとまずいのは、 周囲が指摘するから、一層頑なになって意固地になって、固まってしまう。周 囲のアドバイスや忠告にも耳を貸さない。そうなると、完全に裸の王様にな る。こういうトップもよく見る。 <組織活性化のベースはトップへの信頼感> ●中小企業の強みで、意思決定が早いというフレーズを答える経営者の方も多 くいらっしゃる。確かに、トップに決断力があると、その企業の意思決定のプ ロセスは簡単だ。トップが右と言えば右になる。カラスが白いと言えば、それ が真理となる。それで前に進めるのは、事実と違う場合でも、不合理な場合で も、トップへの信頼関係がある場合だ。中小企業は、何と言ってもトップの権 限が絶大だ。本人は自覚されていないかもしれないが、トップがぐらついてい ては、組織活性化など有り得ない。 ●一度部下を二階にあげて梯子を外したようなことが起こると、ご本人はあま り記憶にないだろうが、当事者はよく覚えている。信頼関係はなかなか気築く のは大変だが、ブランドと同じで崩れるときは一瞬だ。そして、一度崩れると 堤防ではないが、なかなか修復には時間がかかる。それはお金でもカバーでき ないし、単なる言葉でもカバーできない。人と人との信頼関係だから、一度疑 心暗鬼になるとこれはリカバーするには時間と膨大なエネルギーがかかる。簡 単な思いつきのアイデアレベルならいいが、基本に関わることは慎重に考え る。 ●組織活性化の基本は、従業員同士の「連帯感」、仕事への「誇り」。そし て、経営陣なかんずくトップへの「信頼感」。一番大事なのは、この「トップ への信頼感」だ。どうも、いまの日本という国にはこの「信頼感」が本当に欠 如している。思いつきのアイデアレベルのプランを試行錯誤するのはいいが、 基本方針に関わる重要事項を思いつきで、ころころ変えるのは良くない。本当 にトップへの信頼関係が崩れる。組織が崩れるのは、従業員の問題より、この トップの迷走からくる信頼関係の毀損だ。また、それに気が付いていない方が 多い。