□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第388回配信分2011年10月03日発行 偉大な記録が途切れたその後が肝心 〜また次に向けてリセットできるか〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●偉大な記録が途切れた。ご存知、大リーグマリナーズのイチローの10年連続 200本安打という大記録が、とうとう11年連続にならずに186本というあと14 本で途切れてしまった。このニュースは大きく報道されたので、ほとんどの方 がご存知のはずだ。途切れてみて分かった記録の偉大さ。前人未到の大記録に 挑んで10年。この大記録が途切れたことで、イチローの存在感が、さらにいっ そう大きくなったように感じられた方も少なくないはずだ。途切れて初めて分 かった偉大な記録なのだ。 ●ドラフト4位でオリックスに入団後、7年連続首位打者を獲得。日本人で初 の年間200本安打を打ち、その後大リーグへ。野手では通用しないというジン クスをあっさり吹き飛ばし、その後の活躍は衆目の認めるところだ。国民栄誉 賞の授与ということも、一時話題になったが、まだ早いということで辞退し た。いやはやなんとも37歳にしては、少し出来すぎだ。孤高の人と言われる由 縁であろう。なぜか人を寄せ付けない雰囲気があり、人なつっこいというよ り、何か近寄り難い雰囲気をかもし出す。 ●10年というのもすごいし、連続というのはもっとすごい記録だ。一口に10年 と言っても、赤ん坊が小学校4年生だし、小学校4年生が成人の日を迎えると いうことになる。10年の間には、それこそいろいろなことがあった。しかし、 毎年毎年ヒットを量産し続けた。途切れた理由をいろいろな人が分析している が、ずばり加齢だろう。つまり、歳がいったということ。動態視力が落ちたの も、足が遅くなったのも、つまりはすべて、これ歳がいったということだ。簡 単な理由ではないか。やはり、寄る年波には勝てない。 <連続記録はいつかは途切れる> ●成岡が大学の4年生のときに、確か読売巨人軍がV9を達成したが、その後 連勝記録が途絶えた。9年連続セリーグを制覇し、ついで日本シリーズにも9 年連続して勝利した。今なら考えられない記録だが、当時は巨人は圧倒的な強 さを誇っていた。非常に分かりやすかったのは、とにかく巨人を倒すことを目 標にすればいいということだ。巨人戦にエースをぶつけてくる。他の球団は総 力戦で巨人を倒しに来る。それでも受けて立って巨人は負けなかった。いやは や、滅茶苦茶強かった。 ●とうとう巨人がV10を逸してから、セリーグは戦国時代に突入した。その後 は、確か中日が優勝。そして劇的な広島カープの優勝と続く。巨人のVが途絶 えてから、他の全球団に優勝のチャンスがあった。そんな時代になったのだ が、連勝記録が途絶えたあとは、実はしばらく見る影もなくぼろぼろになった のだ。途切れたあと、全く別人のようになった場合と、また立ち上がって記録 に挑む場合とがある。巨人はV9の状態には決して戻ってこれなかった。一度 そうなると、立て直すのが非常に難しい。 ●記録とはいつかは途切れるものだ。または破られるものだ。それは初めから 覚悟していたほうがいい。大事なことは、連勝記録が止まったあと、果たして どうなるのか。たいていの場合は、緊張感が解けて全然異なる状態になるのが 普通だ。記録が途切れた途端に、緊張感がなくなり以前と全然違う状態にな る。たいていの場合は、状態は悪くなり成績の悪化が止められない。記録が切 れたのをきっかけに引退に追い込まれた選手も数多くある。それくらい偉大な 記録が途絶えた後のリカバリーは難しい。 <また立ち上がって歩くには> ●途絶えた記録をまた復活するには、相当な決意と覚悟が要るだろう。今回の イチローが果たして今後どうなるのかは注目の的だ。彼ほどの偉大なアスリー トは並みのアスリートではないから、世間の常識は当てはまらないから、無駄 な予測はしないほうがいいだろう。とにかく、再度立ち上がり歩き出すには、 相当なエネルギーが要る。しかし、一度途絶えたことより、次に歩き出すこと のほうが重要なのだ。ビジネスも、何でも全部が全部うまく行くわけではな い。うまくいかない後、どうするかが問題なのだ。 ●緊張感が途切れたり、エネルギーがなくなったりして、それまでと同じよう に歩けることは少ない。やはり、記録が途絶えたショック、落胆、反省、後 悔、いろいろな理由が考えられる。特に、加齢などという抗えない理由に対し ては、対抗のしようがない。多少防ぐことはできるが、全く解消することはで きない。加齢とうまく付き合うことが必要だ。足が遅くなり、動態視力が落ち る。スイングが鈍くなり、バットコントロールができなくなる。これはどうし ようもないことだ。なにせ、37歳なのだから。いつかはそうなる。 ●しかし、そこを少しでも克服することが偉大なところなのだ。並みの人なら そこでどんどん老け込むのだが、イチローはまたリカバーするだろう。しか し、以前と同じ状態でのリカバリーは難しい。200本安打はもう無理かもしれ ない。186本でも偉大なのだが、もともとが偉大過ぎるのでたいした記録に思 えない。偉大すぎると次が難しいが、年齢相応の技術を磨いて、またチャレン ジするだろう。そういう姿を見て勇気をもらうのだ。テニスのクルム伊達の復 活がいい例だ。高いモティベーションを保てば出来る。 <記録より途切れない気持ち> ●伊達の復活には夫のサポートが非常に重要だった。記録より気持ちを維持す ること。その気持ちが持てないと、記録など決して続かない。10年連続200本 が途切れたイチローの、次のモティベーションは何かということが重要だ。企 業経営も同じだ。売上、売上と数字のみを追いかけていると、いつかは上昇気 流も途切れる。いったん途切れたときに、次のやる気の源泉は何かということ だ。売上や利益、従業員数、店舗数などの数字のみを目標にしていると、それ が途切れたときに土台を失う。 ●高度成長の時代は、数字、数字を成長の原動力としてきた。大きいことはい いことだった。年々売上が増加し、利益が増え、人数も多くなり、それが企業 の、事業の成長だった。しかし、それは体重が増えたのと同じで、成長ではな く膨張していたのかもしれない。見かけの形にとらわれて、本当の成長は何か ということを見失っていたかもしれない。奇麗ごとではないが、企業の成長と は何か。それは途絶えることのないイノベーションを続けていくことだろう。 体重より体質の改善、改革なのだ。 ●10年連続の記録より、一流であることを続けるほうが難しい。常に賞賛を浴 びるようなプレーを続けることのほうが大変だ。人に感動を与えるような選手 であり続ける。そのほうが、連続して安打記録を更新することより、はるかに 感動を与える。年齢相応以上のプレーをすることが、さらに一層その人を成長 さす。気持ちをしっかり持ち続け、感動を与えるプレーを続けることだ。それ が成長の原動力となり、前に進むモティベーションとなるだろう。凡人が言う ことではないが、イチローがまた歩き始めることを願っている。