□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第389回配信分2011年10月10日発行 ハードは整備できてもソフトの充実が大事 〜富山県射水市に見た地方活性化の指針〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●先日ご縁があって富山県の射水市(旧地名は新湊市で周辺の町村を合併して 射水市になった)商工会議所で講演する機会をいただいた。1時間半の内容で 時間が少々足りなかったが、地元会議所の青年部の方々からのお招きだった。 終了後20名くらいの方と地元の著名な料亭で懇親会をしていただいた。その料 亭は青年部の幹部の方のお店だった。古いつくりの屋敷とも言えるような建築 で、非常に歴史を感じさせるお店だった。いや、お店と言うより屋敷と言うほ うが当たっているかもしれない。 ●そこの息子さんが青年部の幹部なのだが、講演会にもお越しいただいて講演 が終わって質問をいただいた。やはり、ご当地もご多分に漏れず過疎化が進 み、地元の経済も停滞気味らしい。もともとこの射水市という土地柄は、目 立って著名な企業があるわけではない。西のお隣が高岡市で東のお隣が富山 市。両方の大都市に挟まれた、それこそ典型的な地方都市だ。しかし、町村合 併で人口は10万人ちかくになったという。その料亭でも客足が落ちているのだ ろう。悩みは尽きない。 ●高岡市は古くから銅製品の製造で知られている。鋳物関係の製造業が多く あって、市内の中心部には立派な大きい大仏が建立されている。日本三大大仏 といって、奈良東大寺、鎌倉、そして当地高岡の大仏が日本三大大仏なのだ。 それくらい鋳造の技術は素晴らしく、かっては銅製品や鋳物の生産では日本で も有数の町だった。現在では、その流れだろうかアルミ製品関係の製造業が周 辺に多い。しかし、住宅着工件数の減少でアルミサッシの需要も減少してい る。対策は難しい。 <北陸新幹線工事が進んでいる> ●車中から眺める景色でひときわ目を引いたのは北陸新幹線の工事だ。特に金 沢〜富山間の工事は急ピッチで進んでいる。線路の高架橋工事から始まり、橋 げたなどの線路関係の工事。駅舎の改造工事。電車基地の造成工事などが着々 と進行している。クレーン車が乱立し、非常に活気があるように感じられた。 北陸新幹線は、一時期凍結とか、凍結解除とか、行ったり来たりしたが、金 沢〜富山間から更に延伸して、長野〜上越までを結ぶ構想だ。2014年には開業 の予定と聞く。 ●当面、金沢までの工事は進んでいるが、金沢から西の工事はまだ着工されて いない。しかし既に福井駅などは新幹線工事が完了している。駅舎の改造を新 幹線が将来来るものとして工事が終わっている。新幹線が開通すると大きな経 済効果を生むことは周知の事実だ。最近では九州新幹線が開通した後の九州地 方への観光客、ビジネス客の増加は著しい。拠点駅からの在来線への乗り継ぎ の乗客も増えているという。やはり大きな経済効果をもたらすことは間違いな い。 ●大物政治家のパワーによるところも大きいだろうが、やはり交通インフラの 整備は地方活性化のひとつの切り札であることは間違いない。高速道路と新幹 線はいつも話題になるが、このような交通のハードの設備を充実したからと いって、人の流れや動きが急速に変わるものではない。特に昨今はインター ネットと言うお化けのようなスピードでの情報伝達、発信ができるので、何も 人間がわざわざ移動しなくても間に合うようになった。メールなどと言う便利 なツールを駆使すれば、簡単な用件はすぐにこと足りる。 <人が動くには魅力あるコンテンツが大事> ●単に交通網の整備が進んだからといって、経済が活性化するとは限らない。 京都から丹後地方に延びる高速道路も、かなり整備が進んだが依然として丹後 地域の経済は、年々疲弊している。なかなかその流れは止まらない。それは残 念ながら丹後地方に、まだ魅力あるコンテンツがないからだろう。部分的には 小さな規模ではあるのだ。温泉、スキー場、農場、名所旧跡、観光地、とれた ての魚市場、・・・・。しかし、いずれもまだ単品の域を出ない。総合的に何 か大きなメッセージを発信しているわけではない。 ●北陸地方は、福井県から富山県、新潟県にかけて有名な温泉地も多い。関西 から行くのも便利だ。あと、福井県の繊維工業、メガネフレームの生産に始ま り、石川県、富山県と著名な製造業が多くある。コマツ、YKKなどは日本を代 表する製造業だ。自動車関連部品の工場もある。しかし、その製造業が存続の 岐路に立っている。円高を始めとする6重苦で日本から製造業がどんどん海外 に出ている。いや、出ざるを得ない状況だ。電気代、家賃、共益費が格段に安 い隣のマンションに引っ越すのは当然なのだ。 ●それでも集客をして人を引きつける魅力あるコンテンツを充実させないとい けない。一度足を運んでみようという気にさせないといけない。いくら新幹線 が出来て便利になっても、それだけでは地元は活性化しない。商店街のアー ケードは降りたままになる。地方から立ち上げるには、地元の若い力が必要 だ。とにかく、その地方ならではの魅力あるコンテンツを蓄積し、醸成し、発 信し、活用し、結果を残さないといけない。そういう魅力が出てくれば、当然 自然に集客はできるはずだ。 <まずは行動で示すこと> ●乱暴に言えば、B級グルメでもいいし、お祭りでもいい。アート系のイベン トでもいいし、音楽でもいい。スポーツと言う手段もある。〜〜〜といえば射 水市だよね、と言ってもらえるようになるには、一定の相当数の時間がかか る。それは覚悟しないといけない。今日一度やったから、それで成功したか ら、ずっとその状態が続くということは珍しい。継続が大事であり、コンテン ツの統一感も必要だ。全員がばらばらにやっていたのでは、ベクトルが揃わな い。みんなが同じ方向を向くことが大切だ。 ●それは、国が、県が、年が、会議所がやってくれるというものではない。富 士宮市がB級グルメの大会で連続して1位になり著名になったのも、そこには 熱心に活動した地元のメンバーが数名存在したからだ。岐阜県美濃市の和紙の アート照明のイベントも、やはり地元で熱心に動いた人がいたからこそ、なの だ。ビジネスとは何でもつまるところ人と人との摩擦、接触から始まる。じっ としていてはエネルギーは外部に発散しないし、発信もない。とにかく、動く ことが大事なのだ。 ●動くといろいろなものが見えてくる。ビジネスは、商売はやってみないと分 からないことが多い。しかし、何かボールを投げてみると予期せぬことも起こ る。そして、それが確率的には低いかもしれないが、予期せぬ成功がある。こ れがドラッカーの提唱する「予期せぬが続くと予期せぬではなく、期待された になる」理屈なのだ。あれこれ会議室やデスク上で議論し、検討するのもいい が、煮詰まったら行動を起こすことだ。少々強引でもいい。全員の賛成など有 り得ない。最後は、その人の意思の強さがモノを言う。