□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第395回配信分2011年11月20日発行 中小企業は人材採用のチャンス 〜いまより必ず優秀な人材を採用する〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●先日某大学にて業界研究講座というような2回生の諸君に対して、今後の就 職活動に向けての業界の指針となるような講義をさせていただいた。今年の成 岡の担当テーマは「製造業」。製造業は幅広いので、従来いろいろな方が担当 されたが、どうも焦点が絞りにくく、学生諸君の講義への評判も、いまいち芳 しくなかったようだ。そこで、今年度はがらっと内容を変えて、製造業企業で の内部の仕事をご紹介した。製造現場もあれば、営業もある。管理部門もあれ ば、広告宣伝を担当するスタッフも要る。 ●いちばん興味を持ってくれたのは、新製品、新商品開発と言う仕事だ。やは り、どんな企業でも市場や顧客のニーズに的確に対応して、新しい価値を持っ た製品や商品を開発していかないといけない。数十年も売れているお化けみた いなロングセラー商品もあるが、それはごくまれ。たいていは数年、永くて10 年もてば上等だ。それくらい、市場ニーズの変化は激しい。現在の一面だけし か見ていない学生さんには新鮮だったのかもしれない。講義終了後に提出して もらうレポートでは、新たな気づき、決意が多く見られた。 ●今まで製造業と言えば、工員さんが作業服を着てもくもくと作業をしている イメージしか企業になかったというレポートが多くあった。それが今回講義を 聞いて、製造業にも自分たちが働いて面白い仕事がありそうだと、俄然興味を 持ってくれたようだ。講義は成功のようだった。しかし、その製造業が、実は いま大変な岐路に立っている。先日も、TV事業から太陽光発電パネルの製造 に、尼崎の工場を転換すると決めたパナソニックが、何と撤回してマレーシア で500億円かけて製造すると言う。日本脱出だ。 <大卒新卒の就職内定率は60%> ●それくらい、いま日本の製造業は切羽詰っている。日本に残って頑張ろうと 言う製造業は非常に環境が厳しい。しかし、中小の製造業はそう簡単に海外に 事業を移転できない。大企業ならいざ知らず、中小中堅企業が簡単に海外で生 産拠点を設けるとなると、非常に多額の投資になり、リスクも高い。中国の国 内景気も、このまま継続するとは思えない。アメリカの人民元切り上げの圧力 は激しい。土地バブルの崩壊の兆しもある。海外、海外と簡単に言うが、こと はそう簡単ではない。 ●第一、海外で事業をするには人材が必要だ。いくら金融機関がお金を貸して くれても、人材がいないと絵が描けない。現有の勢力、人材で事業を海外に展 開できる中小企業はまれだろう。最近は協同組合方式で海外に進出する中小企 業チームもある。とにかく、事業の構造転換を図るには、まずは人材が必要 だ。古来、事業は人なりと言われてきた、まさに、それは現在も変わらない共 通の真理なのだ。そこで、この閉塞感のある現在は優秀な人材採用のチャンス なのだ。 ●大卒新卒の内定率は60%を切るという。ざっと3人に1人はまだ行き先が決 まっていない。先日もTV番組で大卒者の就職戦線の特集をやっていたが、非常 に厳しい状況をつぶさに報道していた。面接を数10社受けても、受けても内定 がもらえない。何が悪いのか分からなくなり、最後は自分を見失う。人間不信 に陥り、自虐的に見るようになる。落ち込んでストレスが溜まり、うつ病にな りそうな学生もいる。誰が悪いと言うわけではないが、二極分化しているよう だ。内定をもらえる学生と、受けても受けてもダメな学生と。 <よく見れば将来に可能性のありそうな学生もいる> ●優秀かどうかは使ってみないと分からないが、少なくても現時点で将来性が ありそうな学生さんは多くいる。優秀だろうという可能性にかけてみたい学生 さん、可能性がありそうな人、この人は何かやれそうだ、そう感じられたら、 それは買いだ。少なくとも現状の社員のレベルより優秀な可能性のある人材を 採用する。必ず現状より上のレベルを期待できるという判断で採用を決定す る。中小企業で新卒の採用は、ほぼ100%期待値だから、重たい決定だ。そう いう重たい決定には、必ずトップが関わる。 ●過去聞いた話しだが、創業後のリクルートという会社での人材採用の方針は 明確だった。採用を担当している個人個人の人材より必ず優秀と思える学生の み採用すると言う方針だった。これを繰り返すと、どんどん優秀な人材が集ま る構図になる。優秀とは何をもって優秀というのかは、問題のあるところだ が、少なくとも採用を担当している社員以上のレベルの学生でないと採用しな かった。我慢比べみたいなところもあるが、この採用の方針は明確だった。な にせ創業間もない会社に来る学生などいなかった。 ●将来の可能性にかけるという新卒の採用は、いわば給料は仮払いだと割り切 る必要がある。あとできちんと精算してもらう。当面の支給は全部仮払いだ。 場合によっては精算できない人材もいるだろう。しかし、仮払いの数倍の業績 を挙げる人材もあるだろう。合計で勘定が合えばいいと割り切ることだ。2− 6−2の原則をあてはめると、採用内定した人材のうち、本当に活躍して貢献 してくれるのは20%ということだ。即戦力ではないから、将来の期待値の大き いことを感じさせる学生を採用すればいい。 <中小企業での採用は社長の責任> ●少なくとも100名以上の企業になるまでは、採用は社長のミッションだ。人 事の担当者に任せればいいというのは、大企業病の最たるものだ。100名を超 えるまでは全部自分で面接し、決定する。履歴書や職務経歴書だけで判断して はいけない。特に学卒新卒者は職務経歴がないから、なおさらだ。私事で恐縮 だが、成岡が移籍した出版社で昭和61年から毎年新卒採用を担当した。特に昭 和61年採用組みは、社内では1期生と呼ばれて幹部候補生として一生懸命採用 教育に注力した。 ●会社説明から一次面接、二次面接、集団討議、役員面接など中小企業だった が、丁寧に、かつしつこく面接した。最終的には30名くらいを一挙に採用し、 減耗を考慮して将来の幹部に自前で育てようと頑張った。一番重要にしたこと は、学歴や経歴より、その人物、人となりだ。個性的なキャラクター、びっく りするようなクラブ活動経歴など魅力的な人材が多くいた。残念ながら全員が きちんと残って、会社の希望通り育ったわけではないが。しかし、面接は人間 と人間のぶつかり合いだから、真剣そのものだった。 ●内定後、入社前の研修会や内定者の懇親会など、考えられることは全部やっ てみた。数名が内定辞退し、他社に流れたと思うが、それは致し方ないことだ ろう。なにせ、ブランド力も企業パワーもない中小企業だったから。生涯賃金 が2億円としたら、5名採用と言うことは10億円の人材投資をしているのと同 じことだ。10億円の設備投資をする案件なら、役員会で数時間喧々諤々の議論 になるだろう。意外と人材の採用ではそういうことは起こらない。いま、優秀 な人材を採用するチャンスだ。