□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第408回配信分2012年02月20日発行 意外と多い社長不在の会社 〜誰が何を決めるのか〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●社長が不在というのは、留守が多いという意味ではない。外出勝ちで、ほと んど部屋にいない社長も多いだろう。それは会社という建物にいないというこ とと、部屋にいないということ。ここでいう、社長不在とは、社長という存在 自体がないに等しい企業、会社が意外と多いということを、最近特に実感して いる。企業自体が、創業後間がない企業もあれば、業暦60年以上の企業もあ り、それはそれでさまざまだが、概ね業績が芳しくない企業の場合、社長さん はいらっしゃるが実際にものを決めている人がいないケースが多い。 ●いいか悪いかは別にして、何かを決めれば何かが起こる。反対の意見もあれ ば賛成の意見もある。態度表明をしたくないから、意思を言わない人もいる。 後だしじゃんけんのようなことをする人もいる。結果が出てから、そらみろと 言う人もある。さまざまでいいけれど、誰かが決定しないとなにごともことは 進まない。そんなことは分かっているが、何かを決めれば有利不利、損と得、 勝ちと負け、痛みと和らぎが交互に錯綜するのは止むを得ない。ゼロサム社会 なのだから、全員がハッピーという結論は、ない。 ●しからば、誰かにいやな結論も出さないといけないことがある。誰かが損を する決定を下さないといけないこともある。誰かの面子をつぶす決定をしない といけないことも多い。そんなとき、決定をしないといけない人は、非常に悩 ましい。悩ましいが、正面からぶつかることをしないで、ぶつかると痛いか ら、肩透かしをしようと考える。そんな案件で、横に逃げた社長さんで正しい 決定が下るということは、まずない。そのほとんどが、責任回避、追及できな いように、あいまいな結論でお茶を濁すことが多い。 <罪その1:不作為の罪> ●まず第一の罪は不作為の罪。要するに、そこに問題があって重要だとわかっ ているのに、何もしない、目をつぶる。どうしようも出来ない場合もあるだろ う。経営資源、とりわけ資金がないから見送らざるを得ない場合もあるだろ う。人材が不足して、どうしてもその案件をやりたいのに、いまやると組織が パンクしてしまうと危惧して手を出さない場合もあるだろう。時間が不足し て、準備もままならず、みすみすチャンスを見送る場合もあるだろう。それは それで仕方ないが、見送った説明をしないといけない。 ●説明がないと、単にど真ん中の直球をみすみす見送ったように思われてなら ない。特に、部下がやる気満々なときに、冷水を浴びせるような決定を平気で するトップがいる。モティベーションが下がる、なくなること、この上ない。 どうしてそういう結論に至ったのか、目先の課題に対処しないのか、十分な説 明責任を果たしているトップは非常に少ない。理由がよく分からないまま、や らないという決定のみが表明される。これでは、やる気満々の部下も愛想が尽 きるというものだ。二度とモティベーションは戻らない。 ●何もしないほうが楽なことは、よく理解できる。何かを決めたら軋轢が起こ る。右が良ければ左は悪い。人間は昨日と同じことをやっていたら、楽なの だ。慣性の法則というものがあり、転がっている間摩擦がなければ、球体は惰 性で転がり続ける。摩擦があるから止まるのだ。摩擦がなければ永遠に転がり 続ける。だから、摩擦を起こさないと運動は止まらない。誰が摩擦を起こすか だ。うまく摩擦を起こさないと、あとあと非常に尾を引く。そうなると感情が 入って、正しい判断ができなくなる。 <罪その2:先送りの罪> ●民主党が悪者にされているが、従来から自民党が同じように問題を先送り、 ほうかむりしていた。それが民主党になって過去を暴いたのはいいが、何ら建 設的に改革を実行できていない。もっと悪いのは、課題、問題を何ら手をつけ ないで、単に先送りしたという事実だけが手元に残った。結局先送りしても、 何ら解決には結びつかない。もう少し時間を稼いでから、データが集まってか ら、他の人の意見も聞いてから、結論を出そうとする。そんな先送りして、答 えが見つけられるか。はなはだ疑問だ。 ●問題、課題を先送りして、以前より内容が革新的に変わって、答えが見つ かったという事例を筆者は知らない。だいたい、結論を先送りにしても、何ら 改善されないまま、ただ時間が経過したということだけだ。むしろ不幸な人を 増加させただけだ。それなら、いっそ以前に課題が明確になったときに、何ら かの対応をすればよかった。それをやらないで、単に結論を出すのを、いまい やだから先延ばしにしただけだ。不幸な人が増え、関係者が多くなり、損害額 がどんどんふくらんでいく。もう、手に負えなくなっている。 ●こちらが決めないうちに、他社がどんどん改善、改革を施し、以前と比較し たら大きく出遅れたことになる。朝のランニングでも、停止信号で止まったは るか以前に追い越された車に、意外と簡単に近づけるものだ。止まっていると こちらがゆっくり走っていても、どんどん身近になってくる。それくらい、止 まっていると過去に追い越した企業から、あっさり追い抜かれる。とにかく、 一歩でも前に出て何か改善、改革の手を緩めない。結構しんどい努力だが、そ れを怠ると凋落は寸前にまで来ている。 <最後は社長が決める> ●中小企業で、何事も決めるのは最後はトップである社長しかいない。優秀な 部下のスタッフや外部の我々も、真剣にアドバイスし進言はするが、最後の決 断は社長にしていただくしかない。そこで、何事も決まらないと、何事も変わ らないし始まらない。いい提案、いい企画、いいプランが上程されても、会議 で社長が決断しないと何事も決まらない。よしんば決まっても、なかなか進ま ない。優柔不断で、結論を先送りしたり、決めないと、世の中がどんどん進 み、環境がどんどん変わってくる。 ●この決断ができないと、リーダーシップが取れないし発揮できない。中小企 業はそんなにスタッフが多くいるわけではない。日常の仕事でみんなアップ アップしている企業も多い。そこへ新しい改善、変化、改革をやるのだという 決断は、みんな気持ちでは歓迎するだろうが、内心はまた負担が増えたと、心 から歓迎している人は少ないはずだ。そこを何とかみんなの気持ちを一つにし て、前に進まないといけない。大企業なら、そんなり進む新しいプロジェクト も、ことはそう簡単ではない。 ●決断が明解に下って、みんなに十分説明ができて、そしてフォローもして、 やっと担当者の重たい腰が上がる。それくらい、変化を導入するのに時間がか かる。だいたい人間というものは、変化を嫌うものなのだ。そこを曲げて新し いことを始めるには、それ相当の熱意と努力が欠かせない。まずは社長が明解 に決断する。その背景、理由も含め、きちんと説明をする。責任は重たいかも しれないが、そういう立場の人は自分しかいないと覚悟する。それができいな ら、自らの責任を放棄していると言われても仕方ない。