□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第409回配信分2012年02月27日発行 どんな経験でも将来役に立つと思うこと 〜無駄な経験など何一つない人生すべて師〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●ぼちぼち年度末に向って、転勤や異動の時期になる。会社員や官公庁にお勤 めの方にとっては落ち着かない時期を迎える。上司や支店長、課長や部長が異 動しても、非常に組織としては影響が大きい。まして、自分の部署の上司や役 員が異動なら、なおさら影響は大きい。また、異動が自分の身の上に起こるこ とも、ままある。成岡もサラリーマン生活、中小企業の役員生活が長かったか ら、相当な回数の異動や転勤などを経験した。東京への単身赴任も数回、延べ 8年間くらいあった。 ●異動の都度、いろいろと感慨はあった。まだこの部署で残って頑張りたいと 思う気持ちのほうが強かった。異動さされるというのが、役に立たないから他 の部署へ転属されるという、どちらかというと被害者意識のほうが強かった。 非常に心残りで、後ろ髪を引かれる思いで異動したことのほうが多かった。そ う感じていると、異動した部署に配属されたときに、どうも初めはしっくりい かない。どうしても前のことを思い出したり、比較したりして、あまりメンタ ル状態は良くない。かなりの時間、尾を引く。 ●そして新しい仕事に慣れたり、覚えたりするのに、あまり前向きに最初なれ ないときがある。教えてくれるほうには申し訳ないが、どうも気分的にしっく り来ない。そうなると、つい身が入らないから、いい加減に聞いている。そう するといつまで経っても、身につかない。そういう異動を何回も経験した。そ して、とうとう達観した。また異動して戻ることはないと割り切って、今の部 署でいちから頑張ろうと。そう割り切れた瞬間から、相当気分がよくなり、前 向きになった。若いうちはそうだった。 <どんな仕事も前向きにならないとダメ> ●特に花形の部門から、多少マイナーな部門に異動したときの落差は結構大き かった。また、数回転職を経験しているから、大企業から中小企業に移籍した ときの落差も大きかった。中小企業で初めて出勤して、しばらくやってみて、 驚いたことが山ほどあった。これは大変なところに来たものだと、内心非常に 驚くと同時に相当落胆した経験もある。なにせ、一部上場の数千人の大手大企 業から、40人くらいの中小企業に転籍したときの感慨は、今でも忘れられな い。 ●そして、最初に実習で配属されたのが物流センター。物流センターと言えば 聞こえはいいが、要するに出荷の倉庫。400坪の土地に2階建ての簡単な建物 の中に、山ほどのラックがありおびただしい商品が置いてある。その商品を ピッキングしてセットして出庫して、配送するのだが、どこに何が置いてある のか見当もつかない。ベテランの社員は、いとも簡単に商品を探してくるが、 こちらはひとつ探すのに四苦八苦する。慌てて頭をぶつけたり、階段でつまづ いたり、ろくなことはない。 ●商品の出荷も、商品の形態がいろいろと違うので、意外とこれが難しい。同 じ大きさのものが揃っていれば簡単だが、それぞれ形状、重さ、大きさ、容量 が異なり、複雑この上ない。そこそこ器用なほうだが、やはりベテランの人に はかなわない。別に勝ち負けではないが、それでももたもたしていると格好悪 い。成岡の作業だけが遅れると、全体が遅れる。ずっとこの仕事をするんじゃ ないと思うと、余計にどうでもよくなる。真剣に学ぶ気持ちがなくなると、ま た作業にミスが出る。 <どんな仕事でも学ぶことは多い> ●次に実習で異動したのは、営業部門。営業部門でもいろいろな営業スタイル があり、これは相当長期間実習でお世話になった。教えてくれる先輩社員が、 実は年齢が下の人だったが、特定の県で長期間営業活動をして、その県のすみ ずみまで営業車で営業活動をした。おかげで非常にその県については詳しく なった。駅前のビジネスホテル周辺の飲み屋は、ことごとく制覇したことも あった。しかし、今になって思えば非常にいい経験になった。しかし、日常の 仕事は全部新しいことで、ひやひやの連続だったが。 ●その次は、大型専門企画書の直販営業の実習。実習ではあったが、メンバー の一員で戦力にカウントされた。実習ではあったが数字の割り当てもあり、市 場も一部もらってそこで計画の数字を達成しないといけないという、結構プ レッシャーのかかる部署だった。その次は、いきなり人事関係の業務。それを しながら平行して、東京支社150名、5箇所に分かれていた事務所を一箇所に 統合する移転プロジェクト。それが一段落したら、今度は全社初の新卒大卒定 期採用の業務。次から次へと、大忙し。 ●極めつけは、面接し入社させた新卒社員をいったん全員営業部門に配属し て、新大型企画の営業部門の責任者。まさかそうなるとは夢にも思っていな かったのだが、こういう人事はあっという間の出来事で決まってしまう。好き 嫌い、否応なく、辞令が発令されて既成事実となる。内示を言われたのは、ま さに直前だ。もうどしようもない。そんな異動が山ほどあったが、振り返って みればどんな部署、どんな仕事でも結果論だが、全部これ勉強になったし、血 となり肉となった。非常にいい経験をさせてもらった。 <人生これすべて師> ●経理の仕事も、人事の仕事も、営業の仕事も、企画開発の仕事も、市場調査 の仕事も、新商品の全国発売の仕事も、考えてみれば全部経験させてもらっ て、いまその経験とノウハウが非常に役に立っている。一番最初からたどれ ば、大手メーカーの製造業の10年間の工場製造現場、開発現場の経験など、非 常に得がたいものだ。なかなかそういう経験をした人は少ないだろう。ヘル メット、皮手袋、安全靴を履いて、トランシーバーを持って製造現場を走り 回っていた。大停電も経験した。発火事故もあった。 ●出版社が残念ながら力及ばず破綻したが、300名100億円企業の破綻というの も、得がたい経験だった。非常にダメージは大きかったが、これは本当に貴重 な経験だった。経験からしか学べなかったのは痛恨の極みだが、しかし乗って いた車は大破し、運転していた自分も大怪我をしたが、幸い一命はとりとめ た。これが勉強にならずして、何になるだろうか。そこから学んだものは、 失ったものも非常に大きかったが、得がたい貴重な経験をした。その経験は現 在大きな力となっている。 ●何によらず、不遇、不本意な異動や転籍ということはあるものだ。恨んでも 仕方ない。それよりそこで一発逆転の起死回生となる成果を挙げればいい。慣 れない業務、初めての経験、勉強したことがない分野。とまどいと失敗の連続 だが、それが後で非常に活きて来る。順調に順風満帆で行くより、多少波風が 立つほうがノウハウの習得には欠かせない。すべて、会う人が全部これ師だと 思えば、とにかく何でも学ぶ材料には事欠かない。企業も同じだ。乗り越えら れない試練はない。高い月謝かもしれないが、あとできちんと回収すればい い。