□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第413回配信分2012年03月26日発行 業績建て直しの特効薬はない 〜まず大事なのは社長の危機感〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●業績改善、いや危機からの脱出という重たい課題の案件が多いが、脱出に特 効薬はない。粛々とそれまでの業績の内容を振り返り、不振になった原因を探 り、周囲の環境変化とのミスマッチを真因を探る。後悔はしないでもいいが、 反省はしっかりする。しっかりした上で、今後の対策を検討する。それも、時 間が永くかかる対策は難しい。1年後くらいには何らかの結果が出て、少しは 業績の改善に寄与し、経常収支が黒字化する見通しが立つようなプランが考え られないといけない。 ●しかし、ほとんどの企業の窮境の原因はもっと根深いところにある。ほとん どは環境の変化に対応できる企業体質になかったことだ。世の中確かに大変な 経済状態だが、業界の中でも頑張って業績を成長させている企業も、少なから ずある。全部の業界内の企業が総崩れということは、実はほとんどない。和装 業界でも、金属加工業界でも、半導体部品業界でも、何らかの企業は生き残り をかけて粛々と業態の改善を行い、社内の改革を行い、何らかの対策を打っ て、立派に業績を伸ばしている。 ●仕事柄、業績の悪化した企業との業務が多いが、その企業の経営者の方々の ほとんどは同じ業界の業績を成長させている企業との自社との違い、決定的な 差などを真剣に検討されたことがないようだ。意外と周囲の近くにある企業だ し、ライバルだから見たくないのかもしれないが、ほとんど競争企業がどんな ことをしているのか、研究されたこともない。見たくないのかもしれないが、 そこに決定的な要因があるはずなのだが。意外とよく知っているという先入観 が障害になっているのだろう。 <過去の成功体験の亡霊にとらわれる> ●いまだに業績が急降下で悪くなっているのに、危機感が乏しい企業の経営者 の方が多い。手元の現預金がどんどん減っているのに、意外と脳天気で、まだ 大丈夫、大丈夫と言われる社長さんもいらっしゃる。こちらが、ひやひやし て、金融機関の方々も真剣に心配しているのだが、本人はあまり危機感がない のか、脳天気なのか、あまり深刻に感じていらっしゃらない。本当にこのまま では、早晩大ピンチになると思うのだが、そのうちに発注元からのオーダーが ありますよと、一向に意に介さない。 ●もし、受注が回復すればご同慶の至りだが、それはその企業の努力でできる ものではない。先方発注企業も、いろいろな都合があるだろう。先方企業の売 り先の企業の在庫がだぶついていたら、発注が従来の水準に戻るには時間がか かる。それを知ってか知らずか、そのうちに売上が戻る、あるいは戻ることを 祈っているという、あなた任せの予測になる。本当に戻るか、戻らないか、そ れは神のみぞ知ることになる。戻ればラッキーだが、戻らないかもしれない。 自分の意思では決められない。 ●過去には何回も業績のアップダウンはあったそうだ。それはそうだろう。企 業経営をしていると、10%どころか、20%以上の業績のアップダウンは必ずあ る。いいときもあるが、悪化して時の落ち込み速度のほうが速い。ゆっくり回 復し、急激に減少する。企業経営とはそういうものだ。それに対応できる企業 体質になっていない企業が、実は圧倒的に多い。重たい病気になりかかってか ら、日常生活のまずさを嘆いても遅い。成岡の父のように、左半身付随の脳梗 塞を発症する。それは手遅れだ。 <新商品の開発には時間がかかる> ●いい時代があったことも事実だ。高度成長期、昭和の終わりからバブル崩壊 前などは、どんどん日本が成長している実感があった。バブルの前は少々成長 とは異なると思うが。過去にはいい時代があった。しかし、今は様変わりし た。周囲を見れば、高齢者の住宅ばかり。環境の変化は早い。しかし、スー パーの品揃えは従来と同じ。来店のお客さんの層が代わっているのに、業態は 従来どおり。大きな重たいペットボトルがたくさん並んでいる。高齢者の人は 2リットルのペットボトルは重たくて持てない。 ●先日のTVで放映していたが、名古屋の某鋳物メーカーが3年かけて開発した 「鋳物鍋」。東京のデパートでは行列ができるくらいの人気商品。1個20,000 円以上なのだが、結婚の祝い贈答品とか、自分で使うとか、とにかく限定でよ く売れる。これを製造しているのは、名古屋市内の小さな鋳物製品製造業。従 来は、大手企業からの下請けでずっとやってきた。若手の兄弟社長に代替わり してから、3年以上かかったそうだが、何とか鋳物の新しい鍋の開発に成功し た。じっくり野菜などを加熱すると、非常に甘みのある味に仕上がる。 ●この売り物にできる商品の開発に3年を要し、テストで製造した鍋は数千個 を越える。開発に要した投資金額は分からないが、人件費も加えるとかなりの 金額を投資したことになるだろう。それくらい、努力と研究を重ねてやっと商 品化にこぎつけた。今度は中国市場を狙って、いまテストマーケティング中だ そうだ。若い兄弟の経営者は、苦労はあるだろうがきっと成功するだろう。な にせ、軸が全くぶれていない。借金もあるだろうが、表情は非常に明るい。3 K職場だが社内も明るい。悲壮感がない。 <決断が大事> ●かなり大ピンチの局面で、では今から3年かかって新商品の開発などとのん きなことを言っている場合ではない。まずは、足元のできることからすぐに始 める。手元の資金と今後の見通しを勘案して、どれくらい、いつまでくらいに これくらい費用を下げないといけないかを検討する。そして、それを十分周囲 に説明して、可及的速やかにアクションを取る。ところが、なかなか重たいお 尻が上がらない。足が一歩前に出ない。いやなことだろうが、それをやらない と企業存亡の危機になる。どうもそういう意識がない。 ●患者に生活改善の意識がないと、慢性疾患は治らない。成人病は治らない。 それくらい日常生活からの改善をしないと難しい。対症療法で少し薬を飲んだ りしても、傷口に絆創膏を張っても、基本的には治らない。それくらい病巣、 病根は根深い。しかし、根治手術をするには体力がない。ここはひとまず手術 できる体力をつけてもらう。それから手術をする。相当大きな手術になって、 時間もかかり、麻酔も深く、術後のケアも心配だが、この手術をやらないと、 おそらくご臨終を迎えるかもしれない。 ●そういう意識になってもらうには、非常に苦労する。何回も、何度も説明し ても難しい。説得はできない。もともとそういう痛みを伴うことをしたくない からだ。確かに、腕や足を切り落とす手術を事前に患者さんに説明したら、ほ とんどの患者さんは拒否するだろう。承諾されるのは、もう待ったなしの緊急 患者のときだろう。それくらい、自分の足を切り落とすのはしのびない。それ は分かるが、しかし、もうそこまで追い詰められているなら、決断しないとい けない。時間ばかりかかっても、ムダになる。