□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第417回配信分2012年04月23日発行 生産性を上げるとはどういうことか 〜日常の小さな改善から始める〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●経営の合理化、改善を図る企業にとって収益の構造改善は一番の重要な課題 となる。売上が少々あっても、最終的に利益が出ない企業は多い。最近は売上 を伸ばすことが難しいから、どうしても経費や固定費を削減しようとする。そ れはそれで間違いではないが、必要な経費までやみくもに削減すると、企業と しての活力がなくなる。特に、営業的な費用や必要な投資まで削減すると、将 来に大きなマイナスをもたらすことが多い。利益が出ないからといって、何が なんでも経費削減は一考を要する。 ●経費の削減も固定費の節減につながるから大事なことだが、業績の向上には 業務の生産性を上げることが欠かせない。生産性を上げるということは、単位 時間当たりの業務のアウトプットを増やすこと。1時間にできる業務量、仕事 量、生産量を増加さすことだ。単位時間当たりの生産性を上げるには、従来通 りの方法では難しい。なにか新しい方法を考えないとできないのが普通だ。も し、簡単にできたらそれは従来の方法がおかしいということに他ならない。常 に生産性の向上を考えないといけない。 ●製造業の生産性の向上は、単位時間当たりの生産量で表示することが多いか ら、比較的分かりやすい。習熟してくると生産性は向上することが多い。ある いは高度なマシンを導入すると生産性が向上することが多い。回転数が上が る、一度に処理出来る量が増える、速度が上がる、などの単位時間当たりのア ウトプットがマシンの向上により達成できることが多い。そういう設備を導入 すると、投資は必要だが生産性が向上することが多い。これは投資に対するリ ターンで評価できる。 <事務系の仕事の生産性の向上は評価が難しい> ●日本の企業で苦手なのは、製造現場以外の業務での生産性の向上が、なかな か図れないことだ。特に、営業、事務、ITなどの部門での生産性の向上が達成 できないことが多い。製造現場なら、単位時間当たりの製造量で評価できる が、事務系の業務では評価の指標がない。そうなると何をもって比較し、生産 性が向上したかという評価ができない。できないから、誰も何も生産性の向上 に努力しない。特に、サービス業系の企業での生産性の向上は、相当難物だ。 ●顧客満足度を挙げようと思うと、生産性の向上とトレードオフになることが 多い。トレードオフとは利益相反という意味で、あちらを立てればこちらが立 たずということになる。コスト低減と品質の向上改善を同時に達成するという ようなケースだ。何かを犠牲にしないと成り立たないことが多い。品質は向上 改善したが、コストが高くなったということが、まま起こる。それでは収益性 の向上につながらない。コストも削減でき、業務の効率化が図ることができる 革新を行う必要がある。 ●しかし、あまり大きな課題を掲げても、スローガンで終わってしまう。そん な方法より、日常の小さな改善を継続し、小さな成功を積み重ねることを継続 するほうが、より効果的だ。小さな改善、小さな成功の対象は、身近な周辺に ごろごろ転がっている。日頃そういうことを意識して周囲を見ているかどう か、それが一番大きい。改めて、構えてするのではなく、毎日の業務の中で小 さな改善を積み重ね、結果につなげるほうが継続性を保ち、結果を導き出すこ とにつながる。 <ますは周囲の環境を整える> ●今まであまり出来ていないことを、心構えや精神論でやろうとしても、難し い。まずは環境を整備しないといけない。必要なものがわかりやすいところに あって、常にメンテナンスされていないといけない。書類、道具、ファイル、 データ、図面、過去の顧客データ、会議の資料などが整然と整理格納されてい ないといけない。それを探すのに時間がかかる。それで今日は忙しいと錯覚す る。随分仕事をしたような気分になっているが、全く生産性は上がっていな い。それを勘違いする。 ●道具がばらばらにあって、置き場も一定していない。探すのに時間がかか る。非常に無駄な時間だが、誰もそれをおかしいと思わない。製造現場で急に 休む人が出る。突然に電話があって、急な欠員が発生する。それをカバーする のに右往左往する。在庫の数字が不確かなので、画面の数字が信頼できない。 現場に出向いて確認する。在庫の引き当てがきちんとできていない。社長のス ケジュールが把握できていないから、問い合わせがあると確認に手間取る。時 間がかかる。ばたばたする。 ●それを業務の繁忙と勘違いする。段取りが悪いだけだ。現場に持参する道 具、器具、消耗品を忘れる、間違う。取りに戻るのに時間がかかる。その間は 仕事が進まない。段取りが悪いといえばそれまでだが、数名の従業員が手待ち になる。非常にロス、無駄な時間だがそれが到着するまで何も進まない。現場 ではままある事象だが、オフィスや事務所の中でそういうことが、よく起こ る。責任者が会議で不在だから、出張で不在だから、何も決められない。社長 が出張に出ていると、決定が停滞する。 <業務の生産性の向上をとことん追及する> ●出張先にパソコンを持参し、夜の時間帯にメールのやりとりをしてくれれ ば、そんな事態は起こらないはずなのだが、最初からそういうことをやる気が ない。そもそも、会社の中にそのような文化がない。そういう企業が、ITを駆 使して追いかけてくる企業には、あっという間に追い抜かれる。こちらがじっ としているのだから、抜かれるのはいとも容易い。少しでも前に進んでいれば いいが、とてもそんな気は起こらない。トップが動かないから周囲も動かな い。かくて、時間の経過と共にどんどん生産性は悪くなる。 ●日頃から小さな改善を積み重ねることを社是にしないといけない。会議など で現場から意見や小さな提案が出て来る。それを直ちに検討して前向きな案件 なら実行しないといけない。しばし検討しようとなど、悠長なことではなく、 トップが意気込みを見せないといけない。もたもたしていたら生産性はどんど ん悪くなると、日常口を酸っぱくして言わないといけない。もちろん、一番に 自分の生産性を向上させないといけない。部下に指示しているだけでは、こと は動かない。勘違いしてはいけない。 ●小さな改善はそれほどエネルギーを要しないし、取り掛かるのも難しくな い。日本電産があれほどの買収を繰り返しても、何とか対象企業の業績を向上 させるのは、小さな改善の積み重ねだ。工場現場をきれいにする、月曜日の突 然の欠勤をやらない、道具の置き場を統一する、支払伝票を再度一枚一枚見直 す、棚卸をきちんとする、・・・などなど。言われてみれば、そう目新しいこ とではない。それがルーズになり、きちんと出来ていないだけだ。生産性の向 上は、このような当然のことをきちんとすることだ。