□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第421回配信分2012年05月21日発行 さあやってきた関西節電の夏対策 〜あなたの企業は計画停電に対応できるか〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●いまだに結論が出ない関電大飯原発の稼動問題。連日いろいろな機関、いろ いろな会議などで喧々諤々、ああでもない、こうでもないと議論が激しいが、 なかなか難しく微妙な問題なので、そう簡単に結論が出ない。いや、かなり時 間をかけても結論はでないのではなかろうか。こういう問題は、最終的には誰 かが決断を下さないと、決まらない問題なのだ。しかし、いきなり天の声が出 てくるとややこしいので、そこまで限りなく努力し、時間をかけて納得するま で議論する。 ●しかし、万人が納得するという回答や結論はないから、結局時間をかけて妥 協点を図る。最終的には双方の顔を立て、義理を通し、どちらにも配慮した玉 虫色の回答に落ち着く。地元、関電、産業界、地域、該当県、周辺都道府県な ど、そんなことを言い出したら、周囲全部になる。今のところ、本当の地元は 心配だが稼動してもらわないと困る。おカネも足りなくなるし、地元の雇用を 失う。地域の元気がなくなる。産業が衰退し、さらに過疎化が進む。町長とし ては稼動して欲しい。 ●ところが安全面で不安がある。もし、何か起こったら琵琶湖が汚染される。 関西の水源をもつ滋賀県としては困る。そもそも、原発のある地域が使用する 電力会社と、供給している地域の電力会社が異なっている。何か、そもそも論 で立て付けがおかしい。しかし、ことがここまで進んでしまったからには、も う戻れない。何か答えを出さないといけない。もう、夏は目前に迫っている。 しかし、今回は時間切れはまずい。後世に悔いを残す結果になる。 <15%の節電ができるか> ●昨年の東京地区での計画停電の影響は大きかった。2時間程度の停電でも、 かなり社会は混乱した。信号の消えた交差点で交通事故が起こり、死者まで出 た。そういう状況を関西の人間は傍観者だった。しかし、この夏は当事者にな る。そもそも、全体の電源の3割を原発に依存していた関西地区で、その3割 が止まったのだから、影響は計り知れない。しかし。関西人はしたたかに対策 を考えている。自己防衛している企業もある。しかし、市民生活はそうはいか ない。 ●高層マンションでエレベーターが止まる。コンビニの冷蔵庫が使えない。大 型スーパーでも同様だ。電車ダイヤも間引き運転になる。病院では手術がその 時間帯はできない。高校野球の夏の大会の運営にも影響が出るだろう。高校野 球くらいならまだいいが、こと人の生命に関わる問題はまずい。成岡は10年間 本当の製造メーカーにいたから停電の怖さをいやというほど知っている。そん なにことは簡単ではない。電気が止まれば自家発電に切り替えたらいいという が、うまく切り替えないといけない。 ●数字的には15%の節電と言われている。15%というのは、実はかなりハード ルが高い。現状でも日本の電気コストはかなり他国に比較して高額だ。だか ら、メーカーは必死になって節電、省電力の工夫をしている。現在の技術では ほとんど限界近くまで努力しているはずだ。そうでないと、競争に勝てない。 そこをさらに15%といわれると、昼間に事務所を少し消灯したくらいでは達成 しない。何らかの製造工程の大幅なチェンジが必要だ。かなり難しいだろう。 <中小企業で果たしてできるか> ●大手メーカーなら大型の設備投資をして自家発電装置を導入して、将来的に も恒常的な節電を図ることはできるだろう。しかし、現状の景気の状態で大型 の設備投資は中小企業では難しいのではないだろうか。ここはピンチだが、逆 にチャンスと捕らえて、大幅な工程の改善、プロセスの変更、シフトの組み換 え、製造フローのチェンジなどを実行する。もう、あまり時間はないが、まだ 2ヶ月くらいある。その気になれば何らかの対策は打てる。その気になれるか が勝負だ。 ●社長だけが必死になっても現場がついてこないと意味がない。往々にして、 こういう課題はスローガンと掛け声だけで終わる。自分たちの給料に敏感に跳 ね返るならやるが、どうもうこういうテーマはぴんと来ない。しかし、冗談の けて製造業で昼間に数時間電気が停止する状態など、想像がつかない。そもそ も温度を一定に保つ中でのものづくりが普通だ。 ●その普通を普通にしない方法を考えないといけない。そうなると、過去の方 法などを踏襲していたのではできない。過去のプロセスを一切無視して、全く 抜本的に製造方法を変えることを検討する時期に来ている。急にはできない が、この流れ、雰囲気だと来年も、その次も節電の夏はやってくる。大阪の橋 下市長が夏場だけ原発を動かしたらどうか、という提案をしているが、本来そ ういう稼動は有り得ない。苦肉の策ではあるが、現実的ではないだろう。 <おそらく現実には原発は稼動する> ●どうしても動かしたい関電と政府。地元の産業界からも稼動の合唱が起こ る。おそらく、何らかの条件付での稼動に踏み切るだろう。今年の夏は何とか 妥協しても、今後に不安が残る。日本国のトップが、明確に方針を出さないか らだ。方針を決めることに躊躇がある。決めれば、どこかでは痛みが起こる。 しかし、それを危惧していたのでは最終の決断ができない。選挙で落選しよう が、たたかれようが、いやなことを決めるのがトップの仕事だ。リーダーシッ プが問われる。 ●ぎりぎりまで不安が高まり、最終的にはおそらくだが、原発は稼動する。そ れで何とか今年の夏は凌げる。しかし、長くは続かない。企業は恒常的な節 電、省電力化の方針を決めないといけない。50年後に原発の稼動をゼロにする なら、それはそれでいい。誰かが決めないといけない。50年後までの見通しが あれば、企業も対応ができるだろう。時間をかけてイノベーションが起こる可 能性は高い。そのときに中小企業がどれくらいついていけるかだ。 ●現在、少々社長が高齢の企業は、今から後継者に大きな宿題を出しておかな いといけない。今後時間をかけて原発がなくなり、再生エネルギーに転換して いく。この流れは間違いない。節電の要請も、ずっと続くだろう。今年の夏を 切り抜けられたら、あとは安心ではない。むしろ、ずっと毎年、毎年省エネの 要求は高まる。節電に真剣に取り組む中で、従来の製造方法を見直し、大幅な イノベーションの可能性を探さないといけない。節電は強制的にさされるもの ではなく、それをきっかけに技術革新に取り組むことが重要だ。