□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第424回配信分2012年06月11日発行 中小企業金融円滑化法期限切れ対応準備その2 〜改善の一歩を踏み出していないといけない〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●先週号ではぎりぎりになってばたばたしていはいけないと書いた。期限切れ 間際になってから新しいことを始めても、とても間に合わない。間に合わない どころか、慌ててするとたいてい結果は良くない。今までなかなか出来ていな かったことを新しく始めるのだから、相当時間をかけて、慎重にかつ大胆にや らないといけない。改革には時間がかかると思われるが、とにかく前に一歩踏 み出すことだ。何もせずにじっと以前と同じでいることは、座して死を待つこ とになる。 ●しかし、過去にはできていなかったことを改革して実行するのだから、何か 新しいことが始まらないと出来ない。業績の改善をするには手ぶらではできな い。先行投資というものが必要になる。そのためには資金が必要だ。だから、 窮屈な財政事情では投資する資金がないから、現在の返済を一時停止して資金 をため、その資金で今後の業績の改革を図る。金融円滑化法はそういう主旨の 法律であったはずだ。そして金融機関にも不良債権としないとした。 ●その条件として、一歩踏み出して今後の業績の改革につながる対策、行動が とられていないといけない。一時停止しても、まだずっと経常収支が赤字で資 金がたまるどころか、まだ流出が止まらないというなら、これは非常に対応が 難しい。まず、支出より入ってくる収入の増加を図る。しかし、収入の増加が 急には見込めないなら、思い切って支出をばっさり減少さすことが必須だ。そ れも、早く思い切ってばっさりやらないといけない。あまり悠長に構えている 余裕はない。 <企業の従来の悪しき習慣を変えるチャンス> ●賢いスタッフにこういう改革の案件をぶつけると、非常に理路整然と出来な い理由をいっぱい並べてくる。なぜそのような支出の削減、廃止ができないの か。万が一、こういう事態になったら非常に大きな問題が起こると。取り返し がつかないと脅かされることもある。しかし、現実に返済停止をしても、なお かつ資金の流出が止まらない企業は、なんとしても収支の赤字を黒字に転換し ないといけない。できないのではなく、やらないといけないのだ。それがまだ 分かっていない。 ●従来の慣習で、何も考えずずっと続けている無駄な費用というものは、実は たくさんある。一度、社長は毎月の外部に支払っている伝票をこと細かに仔細 に点検してみるとよい。今まで気が付かなかったような無駄な費用が、実は いっぱい見つかるはずだ。なぜずっとこの業者に昔と同じ値段で発注している のか?この運賃はずっと変わっていないが、他の運送会社ではもっと安いので は?この業務は果たして本当に必要か?この出張は二人で行かなくても一人で いいのでは? ●細かいことだが、こういう仔細なことは実は社内では一杯あるはずだ。営業 もそうだ。もう少し準備段取りが良ければ、もっと多くの顧客を訪問できたは ずだ。本社とのつまらない連絡や携帯の会話で時間がとられ、本来の営業活動 ができていない。スマホやITモバイル機器をもっと活用すれば、さらに効率が 上がったはずだ。社長が依然としてIT音痴だから、連絡は無駄な電話が多い。 考えて見れば、会社の体質を変えるいいチャンスなのだ。 <トップの不退転の決意が必要> ●変えるときは少々軋轢が起こったり、トラブルが発生したり、社内でぎく しゃくすることが発生する。しかし、それを怖がってはいけない。恐れてはい けない。従来の方法ややり方を変えると、必ず何か支障が起こる。文句のひと つも出る。しかし、そこで歩みを止めてはいけない。勇気を持って改革を進め ないといけない。小さな成功でいいから、この方向で間違いないと社員が自信 を持てる方向に一歩踏み出すことだ。それには、ある程度の結果が出るまで不 退転の決意で進める。 ●とにかく従来のままでは業績も上がらないし、このままでは業績は埋没す る。環境の変化にそう簡単にはついていけない。時間もかかる。そのうちに競 合との競争に負ける。受注が取れない。ジリ貧になり、従業員のモチベーショ ンは上がらないし、次第に生産性は悪化し、品質も悪化。顧客も離れて、売上 も減少してくる。そうなる前に一歩踏み出して改革を行わないといけない。こ の円滑化法が活きている期間がチャンスなのだ。とにかく資金の流出を止めて 新しいことに一歩踏み出す。 ●結果が出るのに少々時間がかかるから、ゆっくりやっていてはいけない。こ れと焦点を定めて、会社の持っている経営資源を集中的に投下する。一番投下 しないといけないのは、社長の思いとエネルギーだ。会議で報告を聞いている だけでは、ことは進まない。自分自身に溢れるエネルギーがないと会社の改革 など進まない。幹部にやってもらうのはいいが、最後の意思決定と責任を取る のは自分だから、その不退転の覚悟がないと成功しない。 <期限切れまでに方向性を決める> ●来年3月まであまり時間の余裕はないが、とにかく改革の一歩を踏み出すこ とだ。会議室の会議もいいが、責任転嫁の会議ではことは決まらないし、進ま ない。衆知を集めて意思決定したら、基本的な方向が決まれば、とにかく進む ことだ。新しいことを開始すると、とにかく想定外のこともいろいろと発生す る。苦労の連続になる。いろいろやってもうまく結果が出ないことのほうが多 い。しかし、何か改革の方向性を決めないといけない。従来のままでは埋没す る。 ●今年から3年後くらいまでの期間をイメージして、出来る限りこれからの成 長分野に近い領域で勝負する。あるいは、大きな成長は難しいが確実にニーズ のある分野で、ニッチトップを目指す。今までの技術にさらに磨きをかけて、 新しい価値を付加する。ひとつだけの機能を、さらにもうひとつ付加する。6 時間でできたものが、4時間で終わるようにできる。収率が90%だったもの が、これを使えば95%にまで高められることが可能になる。若年対象だったの が、中高年も対象になる。 ●中小企業は、人材も、資金も、経営資源も大企業、中堅企業に比較すると非 常に乏しい。乏しいことを恨んでも、悔やんでも仕方ない。この与えられた、 限られた条件の下で、どれくらい改革が出来るのか。期限切れの期限があると いうことは、逆にかえっていいことなのだ。期限がないとやらないものだ。夏 休みの宿題は提出期限が決まっているから、取り組むのだ。いつまでもいいと 言われると、ほとんどの人は後回しになる。今回が改革の一歩を踏み出す、い いチャンスなのだ。