□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第425回配信分2012年06月18日発行 中小企業金融円滑化法期限切れ対応準備その3 〜実現可能性の高い抜本的な経営改善計画〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●中小企業金融円滑化法の内容のひとつの大きなポイントに「実現可能性が高 い」「抜本的な」経営改善計画を作成すること、というフレーズがある。これ を簡単にして、「実抜計画」と省略して表現する方もあり、初めて聞いた人は なんのことかよく分からなくて、混乱することがある。中小企業の社長さんな どは、金融機関の担当者と会話している中で、こういう専門的な?言葉を聞く と、それだけで身構えてしまう。ITの専門家が英語3文字の専門用語を使っ て、煙に巻くのと同じことだ。 ●なにか自分に知識がないという錯覚に陥り、それだけで気後れする。銀行の 応接まで、担当者や支店長と相対していても、どうも居心地が悪い。なにやら うまくしゃべれない。早くこの場から帰りたい。そんな気持ちにさせてしまう 魔法のようなプレッシャーのかかる言葉だ。特にどうこう言うことはないのだ が、慣れていないと非常に気分が悪い。英語の不得手な人が、外国人の会話の 中にほりこまれ、全員が笑っているのに自分一人が分からなくて、笑えないと いう状況に似ている。 ●ばつが悪いという感覚になり、それ以降頭が真っ白になり、浮ついてしま う。慣れない場所で、慣れない環境で、慣れないことばに混乱してしまう。自 社の経営状態をうまく説明できない。今までは借りるほうだから、金融機関か らはお客様だ。しかし、返済停止となると立場は逆転する。返さないほうが悪 くて、返済停止を飲んだほうが偉くなる。立場が逆になり、言われなくてもい いことも言われないといけない。そんなことまで聞きたくないということも、 言われる。気分が悪い。 <停止すると運転資金の借入ができなくなる> ●これが一番怖いことだ。今まで、返しては借り、また返しては借りていた。 何とか返しておけば、また幾分かは借りれた。返済を停止すると、新たな運転 資金が必要になったときに、借りられない。それが一番の恐怖なのだ。メイン バンクがダメと言ったら、まずサブバンクでは難しい。よほど条件が整うか、 新しい担保物権を差し出すか、何か環境が緩和されることをしないと難しい。 新しい担保物権など、とうの昔に全部出したから、あるはずもない。 ●1,000千円返済して、枠が少しできたら、今度は不足分に少し足して1,500千 円を借りる。また後日、1,500千円を返済して、2,000千円を借りる。これを繰 り返すうちに、借入金の総額はどんどん増加していく。気が付けば、かなりの 金額が増えている。麻薬のようなもので、もう戻れない。従って、こういう企 業は一時停止するのが非常に恐ろしい。今まで足りないときに、何とか融通し てもらうことに慣れているので、どうも水道の蛇口が閉まるように思えて、不 安でならない。 ●よって一時停止はしないで、何とかしのごうとする。それが良くない結果を 生む。だましだまし歯痛を我慢しているようなものだ。いつかは痛みが頂点に 達して、歯医者に駆け込む。かなり手遅れなので、抜くしかない。もう少し早 く来診していたら、抜くまでは至らなかったというケースは多い。日頃の運転 資金の欠乏は、日常の経常収支が合っていないのだから、そのこと事態が異常 である。しかし、金融機関は企業が突然死をしたら困るから、何とか延命治療 する。悪循環になる。 <いったん止めた間に抜本的な計画を考える> ●成岡はまずは止めることをお奨めする。一時停止をかけて、最低半年、長け れば1年以上にわたり返済を停止する。停止して当面の資金繰りを少しでも安 定させ、経営者の意識を返済資金の確保から、本業の建て直しに集中さす。半 年ではなかなか難しいが、とにかく停止したという事態になれば、経営改善計 画を考えざるを得なくなる。まずはそういう状態、精神状態になっていただく ことが大事だ。これは非常事態になったと、明確に意識をしたいただく。 ●半年、1年の間に「実現可能性が高い」計画の策定に着手する。「実現可能 性が高い」という意味は、成岡の勝手な解釈では「売上の楽観的な増加をあて にしない、という風に解釈している。売上の増加を前提にすると、計画の検討 は簡単だ。明確な根拠のある売上の増加はまだいいが、頑張りますの増加は排 除する。スローガンだけでは不可能だ。また、。売上を伸ばそうとすると、先 に資金が必要だ。企業が成長するときには、先行してカネが必要だ。そこを理 解していない。 ●「抜本的な」とは、これも成岡の個人的な現場的な解釈だが、従来手をつけ ていない項目、分野、場所などに英断してメスを入れることだ。抜本的とは従 来の既成概念にとらわれないということだ。永年の懸案事項を、ここで解決す る。今まで出来なかった難しい項目に取り組む。それをやらないと企業の存続 価値を問われる。資産の処分や赤字の事業の縮小撤退などは、これに属する。 従来からやらないといけない、いけないと言われていて、実行できなかった懸 案事項だ。 <縮小オンリーではダメ増益の可能性を求める> ●一時停止をして、その間に思い切ってウミを出す。本当に思い切って出さな いといけない。中途半端ではいけない。当然、大きな痛みを伴う。麻酔なしで 切開手術するようなものだ。当然痛いはずだ。しかし、この痛みを我慢してこ そ、次世代に希望の持てる企業へ変身するための過程だ。ここまで内容が痛ん でいると、少々の治療では難しい。麻酔をかける体力もないときは、麻酔なし で切開する。患者も医者も真剣勝負だ。しかし、これができれば次世代に希望 が持てる。 ●何でもかんでも切開して取り去るというのは、間違い。臓器と同じで、心臓 や肝臓を取れば生きていけない。しかし、腎臓や肺はふたつあるから、片方切 除しても何とか生きられるし、社会復帰も大いに可能性ある。頑張ってリハビ リすれば大丈夫だ。縮小、縮小と、縮んでばかりではダメ。今後に希望の持て る事業に積極的に投資する。投資とは、何も設備だけではない。人材、時間、 経営陣の関心、社員全員のエネルギーを、ここで勝負する事業に集中する。そ して結果を出す。 ●これくらい方針を明確にして、集中と選択を行い、掛け声だけでなく、実行 に移す。それも時間をあまりかけられない。可及的速やかに実行し、小さな成 功を積み重ねる。小さな成功を積み重ねると、みんな自信になる。こういう方 向で間違いないと確信する。そうなると、軸がぶれない。ぶれないと集中も もっと高まる。縮小も大事だが、将来に向けた前向きの投資を同時平行に行 う。なかなか難しい作業だが、これが出来れば一皮脱皮した企業に生まれ変わ る。それを信じて行う。