□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第432回配信分2012年08月06日発行 金融機関との付き合い方を間違わない 〜適宜の情報開示を欠かさない〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●企業を運営していく上で、金融機関とうまく付き合うことは非常に大事なこ とだ。現在、京都商工会議所で担当させていただいている開催中の連続5回の 事業承継講座でも、参加の経営者の方に同じことを申し上げている。金融機関 の担当者や支店長と非常にうまくお付き合いされている企業と、何か非常に疑 心暗鬼に敵対的に対峙してられる経営者の方もある。全部自己資金で無借金経 営という企業は稀であるし、いつ何時資金というものは必要にならないとも限 らない。 ●必要なときに必要な資金をタイムリーに調達してもらえるのが、本当に真に お付き合いできる金融機関だ。そのためには、相互に信頼関係が築かれていな いといけない。信頼関係の基礎には、相互に信用がないと信頼関係は生まれな い。信用を築くためには、適宜に正確な情報開示がないといけない。具合の悪 いことを隠したり、隠さなくても誤魔化したりして、あとで真実が分かったと きに非常に信用がなくなり、信頼関係にひびが入る。そうなると、いったんで きた溝は簡単に埋まらない。 ●金融機関の方には申し訳ないが、担当者や支店長も、ひとつの支店で多くの 企業や商店、個人とお取引がある。それこそ貸し出しの金額も膨大だ。その貸 出先の企業やお店の状況が、すべてこと細かに分かっているわけがない。わけ がないというと誤解を招くが、持参される書類、決算書、試算表、資金繰り 表、財務の資料などからしか状況は分からない。いちいちその内容の真偽まで を立ち入って、確実に検証することは、ほとんど不可能に近い。そう思ってい たほうが無難だ。 <企業の提出する資料でしか分からない> ●特に事業の中味が、比較的身近で分かりやすいならまだいいが、皆目見当が つかないビジネスや、商品、製品が見えないものを製造や開発している事業の 場合、非常に理解しにくいものだ。製造業で、そこに土地があり、建物があ り、機械があり、材料があり、製品が製造されるなら、見れば多少は分かる が、これがシステム開発だの、研究開発だの、特殊なサービス業などという と、非常につかみ所がない。失礼ながら、金融機関の方はほとんどが文系の方 が多い。余計に分からない。 ●その分からないビジネスの結果を見せていただくのが、試算表であり、決算 書であり、事業報告書であり、資金繰り表なのだ。これを信用して、その企業 の状態を金融機関なりに理解しようとする。決算書は、既に終わった事業年度 の通知簿みたいなものだ。だいたい、決算期末から2ヶ月くらいかかって正式 な決算書ができる。もう事業は新年度になって、3ヶ月近く経過している。第 一四半期はほぼ終わっている。終わった試合のビデオを見ているようなもの だ。半分気が抜けている。 ●しかし、それしか企業の現状は悲しいかな分からない。数字が少々違ってい ても、在庫が少々カウントミスがあっても、自分で確かめた分けではないか ら、信用するしかない。まして税理士さんがきちんと内容を把握し、点検し、 計算しているのだから。しかし、そこに落とし穴があり、多少真実と違う内容 が計上されていると、これは問題になる。問題になるが、中小企業の場合は、 会計監査はないから、特に税金の申告が間違っていない限り、そのままOKにな る。 <事前の説明をもっと積極的に> ●ここに意図的な改竄があると、真実は薮の中になる。社長と税理士さんとの 確信犯の場合もあるだろうし、社長の意図だけの場合もあるだろう。とにか く、決算の内容を良く見せたい一心で、お化粧を施す。それを説明抜きで堂々 と金融機関に提出される。立派に黒字になっているのに、なぜか資金が大きく ショートしている。理由は特に説明がない。しかし、金融機関の担当者は、他 人の作成した書類を見るのはプロだから、意外と早く事実を見透かす。 ●ところが社長の説明は的を得ていない。わざと肩透かしの回答をしている か、逆に質問の意図、中味が分かっていないか、どちらかだ。説明も正しくな く、適当に誤魔化した内容になる。こうなると、決算書自体の信憑性もさるこ とながら、トップの経営管理能力も問われる。当然資料の信頼も落ちるし、今 後何を持っていっても懐疑的になる。一度こうなると修復には時間がかかる。 過去のいろいろなものも、すべておかしいとなる。口頭の説明にも信頼がおけ ない。 ●さらに、金融機関に事前の何の説明もなく、具合の悪いことが起こっても報 告、了解をもらわない。経営者の方からすると、どうしようもないことや、お カネのことで止むをえないこと、都合のわるいこと、優先順位が変わること、 その他事業を営んでいると、本当にいろいろなことが突発的に起こる。事前に 相当な準備期間があればいいが、たいていそういう時間がない中で決断を迫ら れる。時間切れで仕方なく決めることも多い。いちいち事前に説明などできな い。それも分からないでもないが。 <信頼関係には十分な説明を> ●もちろん事前に了解を得ることになれば、当然金融機関として反対という か、同意できない案件もあるだろう。だから黙って実行することになる。しか し、比較的まとまったおカネが動くと、たいてい数ヶ月するとどこかに何らか のひずみが出てきて、特に資金繰りで辻褄の合わないことが発生する。そこ で、これはどうしてそうなるのですか?と聞かれて、いや実は・・・、という 苦しい弁解、説明を後付ですることになる。こうなると、信用、信頼関係は地 に落ちることは確実だ。 ●いったん信用、信頼関係が崩れると修復に時間がかかる。瑣末なものならま だいいが、非常に重要で事業の根幹に関わるようなことも、意外と気が付かず に平気でそういうことをされている場合もある。資金が非常に窮屈なのに、当 面ほとんど役立たない設備投資などを行う、事業性の乏しい大口の資産を購入 する、金融機関に条件変更を実行中にもかかわらず親族の借入金を手元の資金 から返済するなど、外部の人間から見れば、いかがなものかということが平気 で行われる。 ●事情があるのだろうから、説得はできなくても説明は必要だ。ここを勘違い されている方も多い。説得を一生懸命しようとされるが、利害の対立する同士 では説得は難しい。説得はできなくても、丁寧な説明は必要だ。責任ある立場 の者が、懇切丁寧に説明を十分されたという事実が必要なのだ。それをしない で、後になってから、いや実はそうでしたという後付の説明は良くない。とに かく、金融機関との信頼関係の継続は事業を営むのに非常に大切なポイントな のだから。