□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第434回配信分2012年08月20日発行 五輪の勝者にも試練のときがあった 〜一度は試練を味わい挫折を経験している〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●ロンドン五輪は非常に最後に盛り上がりを見せて終幕した。次回は2016年に ブラジルで開催される。南米で初の五輪ということだが、ことはそう簡単では ないようだ。今から開催に対し、施設の建設などで多額の費用がかかる。果た してこの莫大な経費を捻出できるのか?スペインも五輪開催のあと、経済が沈 滞し現在はご存知のように経済危機の局面に瀕している。宴の後始末には多額 の費用がかかり、国のエネルギーは消耗する。果たして2020年の東京五輪はや るのだろうか。 ●今回は金メダルは目標に届かなかったが、メダルの総数では史上最高になっ た。金メダルを期待された競技では、特に柔道が槍玉にあがったが、銀メダル が多かったということは今後に大きな期待を抱かせる。それも、下馬評に上が らない競技での健闘の結果の銀メダルなので、これは非常に値打ちがある。特 に、バドミントン、卓球、フェンシングなど比較的マイナーな競技での活躍は 賞賛に値する。世間の注目を浴びたわけでもないが、立派な結果だ。 ●ここ一週間くらい朝のTVのニュースやワイドショーでメダリストが続々と登 場して、印象や感想を語っている。NHKなどは優等生的な会話しかないから、 聞いてきても面白くないが、民放ではときに本音が出るから面白い。やはり4 年に1回のオリンピックで結果を出すのは大変なことだと、つくづく、しみじ み思える逸話が満載なのだ。それとまともな新聞記事の連載に非常にドラマ チックな経過が記載されていることが多い。それを読むとほとんどのケース で、挫折や失敗の連続なのだ。 <競技を継続できる環境に恵まれている人は少ない> ●まず環境で苦労しているアスリートが多いことがわかった。所属する企業で の廃部。それからの浪人生活。自費での競技を続けることの限界。ラーメン屋 でのアルバイト代が一瞬にしてなくなる中でのおカネの心配。合宿、強化練 習、海外遠征などの費用がかかる。ユニフォーム、靴、用具、練習場所の確 保、練習パートナーの手配など、競技を一定レベルで続けていくには、本当に 並大抵の努力では難しい。大きな企業に所属して環境が確保されていればいい が。 ●午前中だけ仕事して、午後から練習に専念できるなどという極めて恵まれた 環境にいる人は、ごく一握り。そしてコーチも会社の所属なので、報酬の心配 もしないでもいい。合宿は公務だから給料も出る。遠征の費用も会社負担。強 化合宿で仕事を離れても、さしたる支障はない。そんな恵まれた環境で競技を 続けられるのは、ごく一握りだ。たいていは、おカネの心配をしながら、競技 のレベルを維持しないといけない。練習や記録に集中できる環境ではない。 ●特に最近企業業績の悪化から、抱えているスポーツを切り離す企業が多い。 批難するのは簡単だが、スポーツチームをそのままにして、従業員や社員のリ ストラ、希望退職を募るのは有り得ないから、業績が悪化すると、まず一番に スポーツ部門の閉鎖を行う。背に腹は代えられないから、所属しているメン バーは浪人になるか、他の企業に移籍する。しかし、必ずしも次の企業、職場 が簡単には見つからない。かくて、非常に不安な中での競技生活継続となる。 <敢えてコーチから離れる> ●コーチや練習場の確保も大変だ。特に水泳やマラソンなど有名、著名なコー チには多くの競技者がその扉をたたく。競技者としてはさしたる結果を残せな かっても、人を教えるほうに才能がある人はいる。その独特の練習理論などが あり、大きく結果を出したり、記録を伸ばしたりすることが多い。全面的に信 頼し、その練習メニューやガイダンスにより、以前にも増して記録が大きく伸 びたり、団体競技では従来勝てなかった相手に勝ったという結果もある。 ●特に最近では、映像やコンピュータを利用、活用した練習メニューが開発さ れている。フォームを多角的に映像で診断すると、いろいろな欠点がよく分か り、改造のきっかけ、ヒントがある。これも一人だとなかなか難しい。そして 機材のコストも過大な負担だ。どこかの大学の研究室などとの共同研究まで行 けば別格だが、そう簡単なことではない。コーチや練習場所を求めて、地方か ら東京に出てくることになるケースも多い。生活費の負担も大変だ。 ●しかし、逆に北島のようにコーチにおんぶにだっこでやっていると主体性が なくなる。言われているメニューをこなすことが日課となる。果たしてそれで いいのか。そういう素朴な疑問を感じて、彼は単身アメリカでの練習環境を選 択した。アメリカでは一般的だが、コーチはあれこれ言わない。悩んだときに アドバイスを求めるくらいで、日常は見守っているだけだ。北島はその方式が 合っていた。年齢が高くなってからの転身は勇気が要る。しかし、見事にそれ をやってみせた。 <そして1回は挫折を味わっている> ●すべてが順風満帆で、メダルまで一気に駆け上がったなどという選手は稀 だ。あの卓球の福原も、途中で合宿を抜け出した。そして、何がきっかけに なったかは分からないが、自分自身に打ち勝ってマインドをチェンジした。そ こから彼女の人間的な成長が刻まれた。そして、結果もついてきた。中国のプ ロリーグに単身渡って切磋琢磨する環境を選択した。一人で中国国内を転戦す るプロリーグに飛び込んだ。しかし、大きな結果は難しかった。 ●ケガもつきものだ。ケガのあとのリハビリが非常に辛い。他のライバルはど んどん記録を出しているのに、自分は病院や施設通いの毎日だ。気力も続かな くなることがある。ずっとテンション高く維持することは非常に難しい。ケガ がもとで現役を引退という人もある。最終選考にコンディションが合わなく て、結果が出せなかった人もいる。悲喜こもごものドラマがあるが、一度落ち 込んでもまた這い上がるそのモチベーションは非常に素晴らしい。こけても、 また立ち上がる。 ●そして立ち上がり、以前より強くなる。人間的に一回り成長している。アス リートも所詮人間だから、最後は人間力の戦いだ。どれくらい弱気の自分に勝 てるか。これくらい練習したのだから、という確たる自信。しかし、それでも 結果が出ないこともある。しかし、つまづいても、こけても結果を出す人は、 そこからまた歩き出す。その勇気を持つことが大事だ。今回のメダリストの経 歴を見て、ほとんどの人は数回の挫折を経験している。だから、本番で結果を 出せるのだろう。非常に勉強になった。