□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第438回配信分2012年09月17日発行 サバイバルゲームに勝ち残るには 〜増える歯医者、減る患者、目減りする報酬〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●昨日、城陽市の鴻巣球場で500歳野球の秋の公式戦が行われた。わがチーム は12名の参加をえて、福知山OBクラブと一戦を交えたが、あえなく敗退した。 公式戦に参加して5年。まだ公式戦初勝利の美酒を飲んでいない。練習試合で は勝ったことはあるが、公式戦の1勝は非常に遠い。しかし、毎年若い学年か ら数名の参加を得ているので、近いうちに初勝利という歴史的な?1勝の吉報 をお届けできることと思う。敗戦の原因は練習量の不足だとうことは明白だ。 ●ところで、球場に行くまでの1時間ほどの車の中で、乗せてもらった4年下 の学年のO君は、右京区で歯科医をしている。もう開業して30年弱になるそう だが、昨今どこも同じだが経営状態は楽ではないという。4年ほど前に改造改 築して比較的多額の設備投資を行った。それを決断して、思い切って行ったか らこそ、患者数や診療報酬の収入は微増となっている。そう聞いて、設備投資 したのだから微増ではダメじゃないの?と聞いたら、そんな甘いものではない らしい。 ●右京区で立地もあまり恵まれていないが、とにかくそんなに患者さんの数は 増えない。お年寄りが増えたら患者さんの数は増えると思っていたのだが、こ とはそう簡単ではないようだ。お年寄りになると入れ歯が多くなる。全部入れ 歯という方も珍しくない。全部入れ歯になると、年にわずかの調整だけで済む そうだ。そうなると、治療費に多額の費用を使わない。子供は虫歯になる可能 性が高いが、その子供が減ってくる。少子高齢化は歯科医にとって、恐怖なの だ。 <入れ歯の数と医療費の関係> ●O君に言わすと、入れ歯の数と医療費とは極めて明確な相関があるという。 今回、歯医者さんの話題になったのは、成岡が先週号でも書いたが、10年ぶり に詰めた箇所が脱落して、オフィス近くの歯医者さんに行ったのがきっかけ。 10年ぶりなので、どこか他に虫歯があり、治療に通えといわれるのではないか と、ひやひやで行ってみた。まず、全部の歯のチェックが行われる。36本ある 歯の点検だ。実は、そこで虫歯が1本もなかった。驚異的なことだった。 ●そのことをO君に言ったのだが、そのあとのコメントがさっきの会話。特に 年齢が55歳くらいを超えると、入れ歯の数とその個人の医療費とは明確な相関 があるらしい。つまり、入れ歯の数が多い人の医療費は多いということだ。入 れ歯が多いということは、そもそもが不健康な生活習慣を繰り返している可能 性が多い。歯の健康管理ができない人は、身体の健康管理も難しい。歯が悪く なると、食物からの栄養補給が難しくなる。それくらい、歯というのは大事な のだ。 ●診療所以外に往診にも行くという。老人施設などの寝たきりが多い施設の高 齢者に歯の治療を適切に行い、自分で食物が十分噛めるようになると、一定期 間あとで非常に元気になるという。身体の運動能力もあがり、寝たきりが歩け たり、自分でトイレに行けるようになる。それくらい、口から噛んで食物が摂 取できることは、身体のためには非常に大きい。成岡も十二指腸を切って手術 したときに、いかに口からものを食べられることが大事かということが分かっ た。 <歯磨きの誤解> ●なぜ虫歯になるのか。これは、日本の歯磨きという習慣化された行動様式に 間違いがあるという。歯というのは表面がエナメル質なのだ。これはなかなか 表面は虫歯にはならない。特に、表に向いているほうは少々ばい菌がついた り、何か食べ物が残っても、次の食事までに唾液などで洗い流される。表面か ら虫歯になる可能性は小さい。原因の最大は、歯ぐきから腐ってくる歯周病な のだ。植物なら、土からの生え際という微妙な部分にばいきんが付く。そこか ら腐ってくる。 ●歯磨きという表面を磨くより、歯ぐきを磨かないといけない。磨くというよ りブラッシングをしてこする。こすって歯ぐきの周辺のばいきんを取る。ブ ラッシングをしないといけない。ところが、歯磨きを歯ブラシにつけて磨く。 全く無意味ではないが、そんなことは虫歯の予防にはならない。ところが、ポ スターやTVのコマーシャルでも歯の表面を磨くという表現が多い。実は、これ は歯磨きメーカーの作戦と陰謀ではないかと疑いたくなるくらい、事実誤認だ ということがわかった。 ●今回、歯医者さんからブラッシング用の歯ブラシを渡された。というか、買 わされた。250円だった。これで食事のあとに細かくブラッシングするのが長 持ちさす極意だという。しかし、歯医者さんからすれば、成岡のように虫歯が ほとんどない人が増えると商売あがったりになるのだが。適当に虫歯を製造し てくれる患者さんがいないと困るわけだ。医療費を抑えろと厚生労働省が2年 に1回の点数の改訂で、診療報酬点数を下げてくる。必然的に収入は目減りす る。 <これからの歯科医ビジネス> ●少々誤解があって、少子高齢化になると歯科医は繁昌するのかな?と思って いたら、とんでもない。まず、通常の医者と違って、歯医者さんは病院勤務と いう勤務形態が極めて少ない。診療所というのも少ない。一定期間経験を積ん だら、仕事場としては独立するしかない。そうなると、現状のように歯科医の 開業ラッシュになる。駅周辺は歯科医であふれ、数からいうとコンビニより多 い。かくて、場所の取り合い、患者の取り合いになる。生き残りをかけたサバ イバルになる。 ●開業には相当の費用がかかる。設備投資も必要だ。我々のように、事務所と パソコンと通信設備があれば、あとは人材だというビジネスではない。そして 設備投資の回収に時間がかかる。場所も広く必要だ。受付、技工室、レントゲ ンなど周辺機器の場所も要る。これを自分の場所で開業するならまだいいが、 賃貸で借りてやるなら、費用は馬鹿にならない。まして、都心の一等地ならそ の費用は固定費で重くのしかかる。今後は、過剰な歯科医のサバイバルになる という。 ●患者=市場は縮小する。競合は増える。収入の基礎になる点数は目減りす る。派手な広告はできない。マーケティングはクチコミが中心だ。そうなると 新規の患者をめきめき増やす作戦は取りにくい。現在の患者さん、その周辺の 家族、お知り合いへの紹介が中心だ。そうなると、技術の確かさもさることな がら、きめ細かいメンテナンス、コミュニケーションなどが重要だ。今までの ように、高い目線からのもの言いでは難しい。感謝、感動を与えられる治療で ないと継続は難しい。厳しい時代に突入している。