□■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第463回配信分2013年03月11日発行 整理とは捨てること 〜整頓とは探さなくてもものが出てくること〜 □■□■□■□■□■□■□■□■□■□■ <はじめに> ●03月から某企業で社内研修の講座を依頼された。その企業は従来から整理整 頓が行き届き、製造業でありながら非常に現場が素晴らしく奇麗なことで知ら れている企業なのだ。その企業で社内研修の講師を仰せつかった。これくらい 立派な企業なら、自分のところで十分対応可能と思えるが、社長に面談すると そうではなかった。社内でもずっと研修や教育をやってきたが、社外からの従 来と異なる視点での教育を期待されている。非常に光栄であるがプレッシャー もかかる。 ●本当にこの企業の現場は整理整頓が行き届いている。その素晴らしさを見聞 されて、工場見学の依頼がひきも切らない。そしてその見学に来られた方々が 賞賛の声を寄せられる。それが将来の営業につながるとの信念から、徹底的に 現場では整理整頓を重んじている。製造業で、しかも比較的重たい製造業でこ れほど徹底して現場でそのイズムが浸透している企業は知らない。とにかく、 トップ以下が真面目に愚直に取り組んでいる。その姿勢には心を打たれるもの がある。 ●徹底して流れている思想は、整理整頓。今回は、この整理整頓を取り上げ て、どうやったらこれが現場で実践できるか。成岡が日頃心がけている整理整 頓とは何か。現実に実行に移すときの秘訣は何か。継続してやりきるにはどう いう方法が必要なのか。そういうノウハウ的な部分を実践の中から解説してみ ようと思う。特に製造業の方で、自社ではこのように工夫と努力をして改善、 改革を行ったという事例を豊富にお持ちの企業は、ぜひ勉強のためにご教示願 いたい。 <不要の判断基準は時間> ●まず、整理とは「不要なものを捨てること」だと定義されている。ここで重 要なことは「不要なもの」はどうやって判断するか、ということだろう。不要 なものを捨てればいいということは、誰も異存がない。しかし、現実的には不 要なものという判断が、人により異なる。よって、いろいろなものが不要であ るのか、不要でないのか分からなくなる。従って捨てれない。よって、ものが どんどんたまる。在庫が増える。古い原材料がそのまま残る。要らない資料が 山のごとくたまる。 ●不要か不要でないかという判断の基準を決めないといけない。成岡オフィス では、過去1年間で見なかった、触らなかった、開けなかった資料類はすべて 不要な資料と判断することにしている。よって、基準は時間としている。1年 間なので、相当長い期間かもしれないが、紙の資料は一番最近使ったものを一 番上部、手元に置くようにしている。そして、いつもそれを自動的に更新す る。そうすると最新に見た、使った資料が一番上に置くことになる。見ない資 料はどんどん下になる。 ●これで半年、1年経過すると自動的に見ていない資料が下になっていく。時 間的に一番最近見た資料が上に来る。この簡単な法則を崩さないで、ずっと継 続していると自動的に要らない資料が選別される。現実的には1年間は長いか ら、だいたい4ヶ月くらい、つまり年末年始、5月の連休、お盆休みの3回に 手元の資料の棚卸をすることにしている。そして、不要な資料は捨てられない ものと、捨てていいものとに分類し、処理し、処分される。これを20年くらい 続けている。 <探す時間は仕事ではない> ●整頓とは「探さないでもものが見つかること」だ。このものを探すという行 為にかける時間は、実は結構膨大だ。倉庫から該当の商品を探す、共有フォル ダーから該当のファイルを探す、住所録から必要な人物のデータを探す・・ ・、などなど日常そのような場面で時間がかかることが多い。特に、古い資料 やデータ、顧客のファイルなどを検索し、探し出すのに非常に手間と時間がか かる。その時間は正直無駄な時間だ。しかし、それが仕事だと錯覚している人 も多い。 ●探す時間は仕事ではない。これを企業で、会社で、組織で、明確に定義する ことだ。よって、これが出来ていない人、出来ていない組織、グループは失格 である。しかし、現実には平気でそういうことは無視されている。道具を探す 時間は製造業にとっては鬼門である。禁句であるとしないといけない。その探 している時間は、手が止まる、人が待つ、作業が進まない。時間が無作為に流 れる。手待ちの時間ほど無駄な時間はない。時間=コストという意識を徹底し て植え付けないといけない。 ●大学を卒業して最初に就職した製造業での、時間管理は徹底していた。作業 員は、4組三交代だったが、該当の当番グループの各自に作業時間のスケ ジュール表が配られる。その細かい時間の設定には正直当初驚いた。作業の段 取り時間、実際の作業時間、後始末の時間、次の工程への移動時間、そして次 の工程での準備時間などが、寸分の狂いなく設定されている。そして、その通 りいかないと作業責任者などがヘルプに入る仕組みになっている。ものを探す 時間など設定されていない。 <愚直に改善し継続する> ●現実にはいろいろなことが起こるから、絵に描いたようにはいかない。いか ないときにどうするかということも、取り決めがあった。大事なことはその ルールを愚直に全員が改善しながら、継続して進化させていることだ。一度決 めたルールが未来永劫にできればいいが、どんな企業でもそうはいかない。毎 日、毎日、どうやって改善、改革しようかと全員が知恵を絞る。現場は改善の 宝庫だから、とにかく我々も時間があったら現場を歩いた。工務室にいたら怒 られた。現場を歩いて来いと。 ●ヘルメットに安全靴、手袋にトランシーバー(当時はそうだった)。保護 ゴーグルを着用して現場を歩いた。そして小さなメモ帳と筆記用具。これが現 場を歩くときの必需品なのだ。そして気が付いたことを仔細にメモする。つま らないこともあったが、現場を歩くと山ほどいろいろなことに気づきがある。 問題意識、整理整頓の意識を持って現場を歩くと、山ほどいろいろなことが見 つかる。あら捜しではなく、気が付かないことが多いのだ。それくらい、日々 に新たな発見がある。 ●トップはもっと現場に出て、紙の資料や会議室でのデータを現場の実態に置 き換えることだ。会議室でいくら議論しても、現場で現物を見ないとことは分 からない。全部の事象を現場で確認することは不可能だが、これは大事か、大 事でないかを判断する能力が必要だ。そのためには、日頃から整理整頓を心が ける。不要なものを捨てる判断能力。探さないでもものが見つかるようにして おく能力が必要だ。そして、何よりも大事なことは、その意識、行動を継続す ることだ。