******************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第477回配信分2013年06月17日発行 成長戦略を十分に研究すること 〜この方針に沿って日本が変わる〜 ******************************************** <はじめに> ・先週の木曜日に政府の成長戦略の詳細が発表された。新聞に要旨が掲載され ていたが、要旨だけでも膨大な量だった。いろいろな省庁に関連する政策なの で、これを全部まとめるのは大変な作業だったのだろう。読むのも一苦労だっ たが、これが今後の政府の成長戦略の基本なのだ。この方針に沿っていろいろ な具体的な政策が展開される。これをきちんと読んで、どのような分野を今後 国が力を入れてやっていくのかが、おおよそわかる。自分の会社が、企業が、 この基本方針のどこでビジネスの勝負をかけられるのか。 ●自分の会社は関係ないと思っていたら、それは大間違いだ。現在は直接関係 なくても、間接的には大きな影響があるはずだ。あるいは、今の得意先がこの 成長戦略から弾き飛ばされるなら、その得意先のビジネスは徐々にしぼむはず だ。逆に、得意先の企業がこの成長戦略の真っただ中にいるなら、競争は激化 するが、確実に成長軌道に乗れれば大きく発展、成長するチャンスがある。 レッドオーシャン市場でもあり、競争は激しいが相当な投資が行われるだろ う。それに得意先の企業がついていければ、自社にもビジネスチャンスが広が る。 ●戦略のいくつかのキーワードを揚げてみると、まず「女性の力を最大限に活 用する」ということが大きい。人口が減少する日本であるから、当然労働人口 が減少する。移民でカバーするということもあるだろうが、ここは女性の力を 最大限に活用するという戦略が現実に実行されるはずだ。次に、産業の新陳代 謝を促すというキーワードがある。新陳代謝とは、古いものから新しいものへ と転換、変更、交代が行われる。では、古いものとは何で、新しいものとは何 かということだ。これに対応できるか。以下、いくつかの具体的な項目を見て みる。 <戦略市場創造プランを紐解く> ●国民の健康寿命の延伸というテーマが掲げられている。必要な予防サービス を多様な選択肢から購入できる仕組みをつくる。世界最先端の医療やリハビリ テーションが受けられる社会を目指す。レセプトなどのデータを分析し、加入 者の健康増進のための計画を作成するシステムを作る。一般医薬品のインター ネット販売を認める。医療拠点を増設し、2030年までに5兆円の市場規模の獲 得を目指す。この政策に関連する企業、会社は大きな市場が創造される可能性 がある。大小に関わらず、大きな投資が行われる。 ●次にクリーンで経済的なエネルギー需給の実現というテーマ。環境エネル ギー分野で新しい技術の展開を図り、世界全体で急速に拡大するエネルギー関 連産業を獲得する。高効率火力発電を徹底的に活用する。メタンハイドレード の商業化の実現に向けた技術開発を加速する。民間主導の商業化プロジェクト を開始する。電力システムの改革を実行に移す。蓄電池の市場で2020年に50% の市場を獲得する。2020年代前半に、すべての家庭、事業所にスマートメー ターを設置する。非常に意欲的な課題が並んでいる。 ●地域資源で稼ぐ地域社会の実現というテーマも上がっている。2030年までに 各地の地域資源を活用し、豊かに発展する地域社会を成立させる。農林産業を 成長産業と認識し、10年間で農業、農林全体の所得を倍増する戦略を策定、実 行する。コメの生産費用を4割削減し、法人経営数を現在の4倍の5万法人に 増加させる。農林漁業成長ファンドの活用や、異業種連携による農業の6次産 業化を促進する。6次産業の市場規模を2020年に10倍の10兆円を目標にする。 大きな投資が実行されるはずだ。 <日本産業再興プランとは> ●産業の新陳代謝を図るという。これは非常に重要な提示なのだ。まず、産業 の新陳代謝とはどういうことか。これからの5年間を緊急構造改革期間と位置 付ける。設備投資をリーマンショック以前の水準に戻すという。生産設備の新 陳代謝を促す新しいリースの手法が導入される。減税や設備投資に関する新し いメリットを明確にする。ベンチャー投資の促進や個人保証制度の見直しが行 われる。一定の条件を満たす場合は、経営者の個人保証を求めないという新し い制度が導入される。 ●雇用制度も変革が行われる。64歳までの労働力人口を2020年までに増加す る。従来の雇用を維持する雇用維持型から労働力を移動する政策に転換する。 5年間で失業者の人数を20%減少さす。そのための労働力移動支援助成金の活 用を図る。民間人材ビジネスのマッチング機能を活用し、多様な働き方の実現 できる社会構造に転換する。労働時間や派遣制度の法制度を見直す。特定の職 務に限定した「限定正社員」という新しい働き方を促進する。従来の何でもで きるというゼネラリストから転換する。 ●女性の積極的な活用を促進する。25歳から44歳までの女性の就業率を大幅に 改善し、73%に上昇さす。子供が3歳になるまでは育児休業を選択しやすい職 場環境の整備を促進する。2017年度末までに待機児童のゼロを目指す。そのた めに40万人分の受け皿を作ることが目標になる。横浜市で成功したように、全 国にこのようなシステムの導入普及を図る。新卒の採用活動は毎年08月以降に 開始と、さらに後ろにずらす。そのための大学改革や日本人留学生の数を2倍 の12万人に増加さす。 <自分の会社とはどのような関連があるか> ●あまりに多くて書ききれない内容が多くある。詳細は、またいろいろな広報 物で政府から発表されるから、それを見落とさないことだ。上記のような重点 政策に基づいた補助金の募集などが積極的に行われるはずだ。補助金の申請 も、急に決まって急に行われる。宣伝もしてくれるが、自分で関心を持って ウォッチする必要がある。あるいは得意先がこの方針に基づいて業態転換を積 極的に促進する可能性もある。そのような傾向、行動、動きを見落とさない。 とにかく、自社以外の外部環境に関心を持つことだ。 ●自社の内部ではこのような方針がどのように影響を受けるのかを、しっかり 想像しておく。若手の社員に日常から何を勉強させておけばいいのか。事前の 準備は何が必要か。誰にどのような宿題を出しておけばいいのか。オーダーと アサインは具体的でないといけない。何となく、誰かがやるどうという甘い幻 想を捨てたほうがいい。世間の動きは、あなたの会社のスローテンポを待って くれることはない。速く走る車から振り落とされることのないように、必死に しがみついてついて行くしかない。覚悟が必要だ。 ●新陳代謝とは、古い細胞は死ぬということだ。自社のビジネスモデル、対象 市場がこの政府の成長戦略に合致しているのか。または、全く外れているの か。あるいは、少し関連するが、非常に接点が乏しいのか。もし、古いビジネ スモデルで、対象市場も古い細胞に近いなら、これは相当危険だと認識して、 世間の動きにどう向き合うかを真剣に考えるべきだ。淘汰と選別の時代に入 り、古い価値観に縛られている企業はこれから相当逆風が吹き荒れると覚悟し たほうがいい。経営とは環境の変化に適応する「変化適応業」であるべきだ。 早く行動を起こすことだ。