******************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第478回配信分2013年06月23日発行 起業はできるが事業にするのは大変な努力 〜3年できれば5年できる、5年できれば10年できる〜 ******************************************** <はじめに> ・今月のIT経営塾勉強会京都、大阪例会は昨年の07月に起業した女性起業家西 山裕子さんの講演だった。大手外資企業に11年在籍しマーケティングを担当。 そして当時の上司がITベンチャーを創業しトラバーユ。そのベンチャー企業に 10年。その間、結婚し2子を出産。そして、ベンチャー企業をすっぱり退職 し、大枚を叩いて同志社大学社会人大学院に入学。3年間のMBA目指した勉強 中に起業した。働く女性を中心に、女性を元気にするビジネスをやりたいとい う。社名もその名前の通り「マイパワー株式会社」という。 ・成岡が講義をしている講座を履修していただいて、知り合った。とても早口 で元気で、パワーあふれる熱血感動女性だ。起業したと聞いた時にはびっくり したが、よく考えると彼女ならやれるのではないかと、ひそかに応援してい る。今回は、京都、大阪の両方の例会の講師をお願いした。期待以上に素晴ら しく、参加者が大いに元気をもらった例会だった。今後創業のコンセプト、理 念に基づいて会社を大きく育ててほしい。影ながら応援したいと思っている。 ただ、パワーランチというイベントは、女性の参加者に限るという。 ・その西山さんが弊社のオフィスに来られた時に申し上げた言葉が、今週号の テーマの「起業はできるが事業にするには大変な努力が要るよ」という、勇気 づけでもなく、門出の祝いの言葉でもない、格言でもない言葉だ。これは成岡 の10年やった実感。起業すなわち会社を作って立ち上げるのは、極端に言えば 資本金と手続きが間違わなければ、実際は可能だ。思い立ってから3週間もあ れば可能だろう。単に会社を作るだけなら。しかし、そこからいっぱしのビジ ネスにして、事業として展開するとなると、これは相当な覚悟と努力が要る。 <捨てながら反省し学ぶ> ・弊社も来年で創業10年になる。10年間は、あっという間のできごとだった。 まだ回顧するには少々早いが、創業の時のイメージと、現在やっていることの 現状とは、大きな乖離がある。当初のイメージしていた内容で、現在も継続で きているのは3割もなかろうか。残りの70%は創業の時点では、そんなことは 考えてもなかったことだらけだ。実際、考えていたことと、やってみて価値が あり継続していることとの落差は、非常に大きい。それでも、30%くらいが一 致していたら上等ではないかと、最近思うようになった。 ・やはり机上の空論とまでは言わないが、動き出していろいろな場面に遭遇 し、いろいろな人と出会って教えてもらい、また影響を受けて少しずつ軌道修 正をしながら今日までやってこれた。当初の3年は必死に前を向いて走ってい た。とにかく、場があれば出かけて行き、多くの人に会い、多くの出会いを大 事にした。新しいものには飛びつき、チャレンジする対象には、ことごとくト ライした。無駄なお金も、時間も、エネルギーも、膨大に消費し、投資した。 その中から、現在も残っている事業は30%くらいだろうか。残りは全部捨て た。 ・捨てたことは反省はしたが後悔はしていない。自分の未熟な部分や、能力の 不足の部分、軸のぶれた部分、将来への洞察が不足の部分など、原因を究明す れば、それは数多くある。そこから相当高い月謝を払ったから、相当反省し、 勉強した。高い投資になったが、リターンも多かった。金銭ではなく、中小企 業にどう向き合うか、その哲学を勉強したと思う。月謝を全部回収は不可能だ が、その大部分は現在脈々と生きている。それがなかったら、現在もなかった だろう。成功体験をさっさと捨てて、失敗から学ぶことだ。同じミスを繰り返 しては、いけない。 <予期せぬ出来事がある> ・3年くらいやってくると、創業時点で見えなかったものが、段々見えてくる ようになる。そして、次の2年間が正念場だ。当初の3年は勢いとご祝儀で何 とか暮らせる。次の2年間が将来へ向けての大事な2年間だ。幸運にも、その 2年間は会議所の中にあった中小企業再生支援協議会という機関にお世話に なった。常勤ではなく、半常勤のような中途半端な形だったが、それでも必死 に勉強して、再度経営の現場に足を踏み入れて、格闘してきた。その成果は、 すぐには結実しなかったが、やはり現在に脈々と生きている。 ・創業後5年くらい経過すると、少々形になってくる。しかし、別のいろいろ な問題が発生する。時間が足りない、充電ができない、忙しいと新しいことに 取り組めない、人脈が拡がらない、資金が足りない、マンパワーが足りない、 などなどだ。これは、企業経営をされている経営者の方なら、一度ならず何度 も経験されている「踊り場」だ。企業が次の階段を上がるのに、必ず通過しな いといけない成長の節目なのだ。そう言えば恰好はいいが、やはり厳しい局面 に遭遇することにもなる。5年目くらいで、最初の踊り場に来る。 ・そこを何らかの努力で乗り切ると、10年くらいはできそうだ。風がフォロー に吹いてきて、結構煮詰まってきたときに、ひょっと新しい大きなお仕事に声 をかけていただくことが続く。ひとつ大きなプロジェクトが終わったと思った ら、間髪を入れずに次の案件が始まる。金銭抜きで親身にアドバイスを続けて いたら、それが予期せぬ大きな成果となって返ってくる。もう数年前の忘れた ような縁の薄かった方から、ある日突然のお呼び出しがかかる。高校時代の友 人から、相談の案件が舞い込む。すべて、これ予期せぬできごとだ。 <次の10年のグランドデザインが必要> ・創業当初から、当方から営業を仕掛けることはいっさいしなかった。ただ、 この毎週のメールマガジンの配信、2年目から開始した月刊機関誌「NMOオ フィスレター」の発行、毎月開催のIT経営塾勉強会京都、大阪例会の開催。こ の3つだけは、何があっても石にかじりついてでも、継続することに意義があ ると、何とか継続している。不思議なもので、これを継続していると、何か始 まることが多い。特に売上目的ではないから、自然体で継続できる。これをビ ジネスと考えて、ぎらぎらしてやると継続しない。投資には必ずリターンが必 要だから。 ・かといってボランティアでは事業にはならない。やはり、一定の収入が確保 でき、一定の未来への投資が可能な経済環境を作ることは、非常に大切だ。 しっかり収益を確保して、しっかり未来へ投資する。その投資を無駄にしては いけないし、その投資を効果あらしめるように、日ごろから目利きしていない といけない。しかし、全部の投資が成功するとは限らない。無駄に終わる投資 も、必ずある。しかし、それから反省し、次回に向けた教訓を得ればいい。大 事なことは、しっかり反省し今後に活かすことだ。 ・もうすぐ10年を迎えるが、次の10年に向かってグランドデザインを描かない といけない。周囲や他人には、グランドデザイン、グランドデザインと口を 酸っぱくして唱えているのに、自分のところはどうなんだと聞かれると、これ は非常に歯がゆい。出たとこ勝負のような無計画なところも、多少はあるが、 やはり将来のイメージを明確にしておかないといけない。後継問題も、今後は 考えないといけない。3年できたら5年できる、5年できたら10年できる。さ あ、次の10年が勝負かもしれない。しっかりグランドデザインを描く時期に なってきた。