******************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第483回配信分2013年07月29日発行 風が吹いてきたと感じたら一気に風に乗る 〜チャンスと感じたら攻める姿勢を鮮明に〜 ******************************************** <はじめに> ●アベノミクス効果が大きかったので、先日の参議院選挙は想定以上に与党が 圧勝した。衆議院選挙は民主党が勝手にこけて、自民党が敵失勝利という形 だったが、この数か月で完全に勝利を自らたぐりよせた。この結果は当然と言 えば当然だろうと思える。反自民の一点に絞って戦ったときはわかりやすかっ たが、いざ自分がトップに座るともろさを露呈した民主党に、世間は正直に鉄 槌を下した。果たして、今後健全野党に生まれ変わることができるのか。全国 民が注目している状態だ。 ●これに反して自民党は、完全にフォローの風に乗って得票を伸ばした。偉い と思うのは、最後の最後まで手を抜くことなく、完全に勝利を目指したこと。 これくらい事前の予想があると、えてして手を抜くものだ。しかし、今回は いっさい手を抜くことなく、完全に勝利を目指した。一度政権から脱落し、野 党という悲哀を味わったからだろうか。やはり、人間も同じだが、一度失敗し たり、こけたりすると反省し、同じ過ちを繰り返さないように学習する。これ が人間と動物の基本的な違いなのだ。学習することは非常に素晴らしい。 ●フォローの風を感じて、一気に手を抜かず攻めた。また、ガードの守りも完 璧だった。その結果が先日の参議院選挙の大勝利につながった。今回のテーマ である「風」を感じたら一気に走るというテーマも、今回の参議院選挙の報道 を見ていて感じたことだ。これくらいのチャンスは、本当に千載一遇のチャン スなのだ。しかし、平生日ごろから走ることのできる環境、準備は必要だ。急 にチャンスだからといって、何もかもが揃っている大企業と異なり、中小企業 はなにか足りない。そこをカバーすることを日ごろから行うことが肝心だ。 <本当の人的ネットワークを作る> ●まず、日ごろから手当てをしておく必要がある。もし、仮に計画にあるこう いう事態に現実になったら、足りないものはなにか。人材なのか、資金なのか を明確にしておく必要がある。全部と言えばそれまでだが、優先順位というも のがある。しかし、風は一気に吹く場合もある。優先順位などという理屈を考 えておかないといけないという余裕もない場合がある。そういうときは、一気 に攻めないといけない。果たして、自社にそれだけのエネルギーとパワーがあ るか。常に自問自答しておく必要がある。 ●中小企業は常に経営資源がぜい弱だから、備えを完璧にしておくわけにはい かない。備蓄の食料や水を多く持つことはできない。常にぎりぎりの状態で経 営を回しているから、そう簡単に経営資源をストックできない。特に、人材は 余裕がないから、数名が浮いている状態を作ることができない。全員がプレー ヤーであり、社長も試合に出て選手で活躍していることも多い。そんなチーム に余裕を持てというほうがおかしい。毎回、毎回ぎりぎりで戦って、ぎりぎり で勝ち残るような経営を続けている。そういう企業がほとんどだ。 ●だから、自社内に余裕を持つことは難しい。しかし、一気に攻めないといけ ないこともある。優先順位などを悠長につけている余裕はない。そのために は、日ごろから人的なネットワークを構築することが必要だ。もし、仮にこう いう状態になったときには、誰をプッシュしてどういう結果を引き出すか。と にかく、誰に何を頼めるかを常に把握し、日常の付き合いを行い、自社以外の 人的なネットワークの維持に努める。人的なネットワークをいっても、単に名 刺をたくさん持っているのではない。本当に信頼できる関係を築くことが重要 だ。 <トップは日常業務に埋没しない> ●社長の仕事は日常のことではない。風が吹いてきたと感じるアンテナを揚げ ることも重要だ。アンテナは常に揚げておかないと、いつなんどき風が吹き出 すかわからない。また、急に大きな風が突然のごとく吹くわけではない。ビジ ネスには必ず伏線というか、症状と兆候というか、なにがしかの前兆というも のがある。日常の通常業務に忙しいと、ついそれにかまけて風を感じるアンテ ナの手入れを怠る。手入れとは、常に新しい人脈を構築したり、新しい体験を 自らしたりすることが必要だ。自分で感じることが一番正しい。 ●そのためには、あまり日常業務を多く抱えないことだ。時間的には最大でも 4割くらいに抑えることだ。午前中は日常業務をしても、午後からは常に今後 のことに想いを巡らせることだ。そのための時間のマネジメントをきちんと行 う。経営資源でも最大は人材だから、いろいろなアンテナを張って、それなり の人材に会いに行く。社内にいては決してそういう機会が転がっているわけは ないので、積極的に外部に活動の重心を移す。そのためには、限られた時間の 中で、どういう風にすればそういうことができるのかを、必死になって考え る。 ●考えないと向こうから来てくれることはまずないと思うことだ。特に人材に 関しては、行動の速さが重要だ。お盆に帰省したら会って話をしようなどと悠 長なことを言わずに、いますぐにでも先方に出かけて行動を起こすことだ。 迷ったらやってみることだ。これを原則にしていると、判断がぶれない。非常 にわかりやすい。理屈をこねると面倒なので、行動で示すことだ。トップの行 動のテンポがいいと、組織全体の動きもよくなる。たいがい行動が重たい企業 は、トップのマインドが消極的だ。 <資金と人材に多少の余裕を持つ> ●ここが一番重要なのだ。風を感じたら、素早く行動ができるには、日ごろか らの備え、準備が必要だ。チャンスだからといって、そこから準備を始めてい たのでは遅い。しかし、すべてを網羅して準備をすることはできないから、特 に人材だけは日ごろから目標を決めて、風に対して準備をしておく。こういう ことが起こりそうなら、どういうアクションを取るのか、シュミレーションを 繰り返し、想定の範囲内に収まる行動計画を立てておく。まず、誰に対してア クションを起こすのか。それがわかっていないと、何も始まらない。 ●その他の経営資源では、やはり資金が重要だ。毎月、毎月綱渡りをしている ようでは、当然ながら資金に多少の余裕もない。月末の繰り越しがやっととい う状態はそう長く維持するのは難しい。多少の余裕がないと、一気に攻めると きにガソリンがない。ガソリンがないと、いや、わずかなら次のガソリンスタ ンドまでしか走れない。それでは、一気に攻めることはできない。どれくらい の資金的な余裕を持てばいいのか。これはビジネスの成り立ちによるから、一 概には言えないが、数か月分の運転資金は必要だ。 ●人材と資金のめどを常に立てておく。それがないと、チャンスに一気にたた みかけて攻めることはできない。自分一人が走り回るのでは、限界がある。社 外のネットワークを構築し、いざ鎌倉というときに、どこのボタンを押せば動 くのか。どのスイッチを入れれば動くのかを、常に頭に入れておく必要があ る。あとは、実行のスピード感だ、意外と中小企業はスピード感に乏しい。大 企業は、生きた死んだという殺戮戦争を常に戦っているから、こういう修羅場 には強い。中小企業は風を感じたら、一気にスパートをかける体制を常に意識 することだ。