******************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第503回配信分2013年12月16日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その1 〜売上をひとつの企業にあまり集中させない〜 ******************************************** <はじめに> ●売上が比較的順調に推移している企業でも、常に注意しておかないといけな いのは、その売上の内容だ。得意先別、製品商品別、営業担当者別、地域別、 支店別などいくつかの切り口で実績を常にチェックしておかないといけない。 自社にとって売上の中味をどのような切り口で分析し、実績のデータを常に注 意しているかは、非常に重要なことだ。営業担当者は自分の受け持ち、自分の 計画と予算などで頭がいっぱいだから、会社全体のことは経営トップが常に ウォッチしていないといけない。緊急ではないが非常に重要なことだ。 ●おおよそどんな企業でも、得意先別の売上というのは常時把握されているは ずだ。これが分からないと商売にはならない。どのような得意先にいくらの売 上が計上されているのかは、会社にとって最も重要な事柄だ。しかし、今月の 数字はともかく、過去5年間くらいの推移をきちんと把握しているかという と、これが意外ときちんと捕まえていないケースが多い。過去5年間、できれ ば月次ごとにどの得意先にいくらの売上が計上されているのかが、一覧表で一 目でわかるようにしておきたい。それがないと戦略が立たない。 ●A社は5年前はランキング10位にも入っていなかった。しかし、営業担当者 の涙ぐましい努力で、ここ数年じりじりと業績がよくなり、最近ではベスト3 の常連になっている得意先もあるだろう。逆に3年前までは常連だった企業、 得意先が最近では全く影も形も見えないケースも、ままある。つまり、年度ご との変化をトレースして追いかけることが大事なのだ。数字の表をまず作成 し、できれば折れ線グラフで見える化する。図にすると非常に理解が容易にな る。ビジュアルに訴えると非常にわかりやすい。共通認識を得るには必要だ。 <最大でも2割以下には抑えたい> ●さて、そうやって5年間くらいの得意先別の業績を並べてみると、果たして どのような結果になるだろうか。ある企業では、年間の売上の3割近くが1社 に集中している現象がここ数年、ずっと連続している。業績としては安定する が、あまり1社に売上が集中すると、かえってよくない。もし、その企業が業 績不振に陥ると、たちまち自社に大きな影響を及ぼす。わかってはいるが、な かなか是正し辛いものだが、そこはトップの決断で何とか2割以下には抑えた い。そのために、ではどうするか。 ●まずは、経営トップが覚悟を決めること。1社に売上が偏在していると、あ る意味楽だが、人間楽を覚えるとろくなことがない。その企業のお守をきちん とやっていれば、数字を作るのは簡単だ。しかし、そのような安易な状態が未 来永劫に続くとは思えない。いくらトップ同士が仲が良く、人間関係もできて いるかもしれないが、それでも何かことが起こるとそんな悠長なことは言って いられない。ビジネスライクにアクションが取られれば、一気に売上の減少が 始まる。あれよあれよと言う間に、あっという間に赤字に転落する可能性があ る。 ●以前に成岡が在籍していた印刷会社でも、1社に売上の4割近くが集中して いたことがあった。担当者は大変だっただろうが、しかし売上の40%以上ある と、仕事量も半端ではない。担当者は目先の、今月の売上に集中しているか ら、全社的にはそれがまずいと言っても、所詮人の子だから、そう簡単に対策 が取られることはない。それはむしろ経営トップの専管事項だ。とりあえず、 40%ある企業とうまく付き合いながら、今のうちに次に育てる企業を育てない といけない。そんな得意先を作るには数年はかかる。 <宣言してアクションプランを考える> ●相対的に売上の比重を変え、1社集中型を変更するには、全体のパイを大き くするか、他の企業のウエートを高めるしか方法はない。あるいは売上が少々 減少していも、利益を別のところから持ってくる。あるいは、全く異なるチャ ネルを開発開拓する。いろいろと方法は考えられるが、現在の自社の置かれて いる環境からすると、何が最善で、何が障害になっているのか。とにかく現在 順調であればあるほど、すぐに次のアクションを起こさないといけない。その ようなことは誰一人考えていない。経営トップしか考えない。それが中小企業 のアキレス腱なのだ。 ●毎回書いていると思うが、これは緊急ではないが重要なことだ。重要なこと は社長が行う。そこで一定のルール、ガイドラインを決めておく。たとえば、 1社に集中する比率を30%は絶対に超えないと決める。現状追認で、まあいい か、まあいいかとやっていると、いつの間にか全体の3割以上になっている場 合もある。そのときは勇気をもって、その事態をいつまでに解消する宣言を出 さないといけない。もちろん急にはできないから、一定期間の猶予、移行期間 は必要だ。しかし、あまり長い時間妥協してはいけない。 ●どうしても売上に目が行って、業績を落としたくない、悪化させたくない、 増収トレンドを維持したい。金融機関にも、増収になっているというと非常に 見栄えがいい。支店長もほめてくれる。だから、1社に集中してようが、分散 してようが、とにかく売上の数字を落としたくない。しかし、英断を持ってこ れ以上A社に売上が集中するのを避ける宣言を出す。全社員に向かって、これ 以上A社に売上が集中するのを避ける覚悟をする。そして、それを宣言する。 そして、次にしからばどうするか。アクションプランを考える。 <今からでもすぐに手を打つ> ●先方の企業も、おおよその状態はわかるから、それくらい大きなボリューム の売上になると、1社で独占している仕入を分散することも考えているだろ う。あるいは担当者が転勤で変わったときとは、新しく着任した責任者が取引 先を変えるケースも多い。やはり何か目新しことをしないと存在価値がないよ うに勘違いする。そこで意外と大胆に、従来からの取引先に無理難題を押し付 けて、出て行け宣言が発表される。そこまで事態が深刻になると、もう手遅れ だ。気が付いたときには、結論が出ている。日ごろの意思疎通が非常に重要 だ。 ●大きなウエートを占めている得意先の数字が減少すると、挽回するのに時間 がかかる。そんな大きな数字をいきなり作れるわけがない。かくて、数年は減 収になり、最悪赤字の決算になる。しかし、どこかで下げ止まればいいが、 ずっと減収が続くようだと非常にまずい。赤字だから運転資金が枯渇してく る。枯渇してから金を借りようと思っても、2期、3期連続の赤字になると金 融機関も、融資をしぶる。赤字決算がまずいとわかって、決算書の一部に意図 的に数字の操作が入る。法的にはOKでも会計的には正しくない。 ●そんな姑息なことをしても、所詮数字は現実を表すから、どこかで辻褄が合 わなくなる。そうなってからでは遅い。今から、売上が1社に集中しているな ら、早急に分散することを検討する。分散すると色々な面で、手間とコストが かかる。事務処理も、原材料も、配送費用も、分散すれば分散するほどコスト はかかる。小さな細かい売上の得意先が増えると、管理も大変だ。しかし、売 上が集中している得意先に、安穏としていてはいつかはリスクが到来する。そ うなってからでは遅い。今から、すぐにも手を打つべきだ。