******************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第504回配信分2013年12月23日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その2 〜組織に常に適度な「ゆらぎ」を与え続ける〜 ******************************************** <はじめに> ●業績が順調なときほど、現状のままでいたいというのが経営者の偽らざる心 境だ。特に、売上の調子がいいときはあまり大きくアクションを取りたくな い。このままでずっと行かないかと、心の中では祈る思いというのが本音だろ う。いつまで続くかわからないが、とにかくこの好調な売上が何とか、少しで も長く継続して欲しいというのが切なる願望だ。しかし、世間はそう甘くな い。景気というのは、「気」のものだから必ず山谷、高低がある。上昇のあと には下降がある。だから好調なときは、なるべくいろいろ違うことをしたくな い。じっとそのままでいたい。 ●そもそも人間は変化を嫌う動物だ。変化が起こると、興奮より疲労感が多 い。昨日と違うことが起こると、何か疲れる。摩擦のない完全に抵抗のない面 を球体が転がると、ずっと転がり続けるが、社会一般は摩擦だらけだから、必 ず何か抵抗が起こり変化が発生する。そうなると転がり続けるのは難しい。現 実には、何か抵抗があり変化があるから、どうしても変わらざるを得ない。そ うなると、非常にストレスを感じて、エネルギーを消耗する。よって、毎日変 化がないことが有難い。ほとんどの人はそのはずだ。 ●現場の作業も、営業の仕事も、もっと言えば社長の仕事も、毎日毎月同じよ うなリズム、同じような内容で過ごすとストレスはあまりたまらない。ところ が、どっこい、世の中はそんなに甘くない。大震災や大災害は滅多やたらと起 こるものではないが、多少の変化は毎日それこそ随所に発生する。自分が好き であろうが、嫌いであろうが、世間が許さない。WindowsXPからのOSの切り替 えなどは、まさにその典型だ。いやでも対応しないといけない。早く切り替え られることをお勧めする。当初は、結構戸惑うから。実感として。 <自社の組織で変化に対応できるか> ●そもそも人間は変化を嫌う動物なのだが、変化がないと毎日がマンネリに陥 る。そうでない人もあるだろうが、それは例外中の例外だ。やはり、仕事は慣 れた環境、慣れた内容、慣れた相手、慣れた機器、慣れた組織などで囲まれて やるほうが、心地よい。これは、末端からトップの社長まで、全部共通の意識 だ。まずは、トップが変わることだ。変化を好まないのではなく、自ら変化し ないといけない。組織の下の者に、変われ変われと言う以前に、自分が自ら変 化することが大事だ。下の者は必ず上を見ている。 ●複数の人間の組織となると、もっとやっかいだ。上下左右に色々な人間関係 が発生する。入社の年次、年齢、経験、能力、役割など様々な要素があって、 現在の組織ができている。いろいろと欠陥もあるだろうが、何とか現在の組織 で日常の業務は、まがりなりにもこなしている。特に、中小企業は人数が少な いから、9人で野球をやっているようなもので、ベンチにメンバーの余裕がな い。監督も場合によっては試合に出ている。ベンチでサインを出す人もいな い。全員が試合に出ているから、動かすことができない。 ●中小企業は、まさに9人で野球をやっているのにふさわしい。人員の余裕が ない。新しいことを受け持つ人がいない。現状で、何か違うことが起こると対 処する人間がいない。総力戦で、何とか乗り切っても、次から次へと新しいこ と、変化が起こると、どこかでほころびが出てくる。そのうちに対応が追い付 かなくなり、他の企業との競争に敗れる。短期決戦ならいざ知らず、永遠の リーグ戦を戦うのだから、それなりのメンバーの余裕が欲しい。しかし、業績 がぎりぎりだとそんな余裕はない。かくて、変化に対応できない。 <常に少しでも揺らぎを与え続ける> ●変化に対応するには、常に組織に変化を与え続けて、その変化に対応できる 体力、免疫を植え付けておかないといけない。人数が限られているなら、限ら れているなりに、体力や免疫をつけておく。そのためには、いつも平時から組 織を少しずつ揺さぶって、変化に対する抵抗力をつけておかないといけない。 変化が起こってから慌てていたのでは遅い。しかし、しょっちゅう組織をなぶ ると、これは混乱が起こる。ただでさえ、少ない人数でやっている業務に、支 障が起こるとカバーするのに時間がかかる。その辺の程度が難しい。 ●それで恐れて何も動かさないというのは、最悪だ。社長はリスクを覚悟で、 周到に準備を行い、人事異動を発令する。どのような人事異動であるのかは別 にして、どんな異動でもそう簡単ではない。昇進昇格、部門の異動、転勤、部 署替え、配置換え、新しいポストの新設、中途採用者の処遇など、考えるとス トレスがたまるばかりだ。いきなり中途採用をした人を、大抜擢などなかなか 難しい。特に、社長がリクルーティングして入れた人材などを厚遇すると、途 端に軋轢が起こる。社内で大ブーイングが発生する。 ●そんなことに遠慮をしていたら、何も新しいことは起こらない。対処もでき ない。しかし、現実はそう簡単ではない。コップの中に入っている水を、常に うまくコップを揺らしながら、水が淀まないように揺らし続ける。揺らすほう もエネルギーが要るし、揺らされるほうも酔わないように日ごろからの準備や 備えが必要だ。あまり急激に揺らすと、中の水が外にこぼれる。あまりゆっく りだと、水は淀んでしまう。その辺の、兼ね合いと言うか、具合が非常に難し い。どこの経営の教科書にも書いていない。しかし、現実のマネジメントは、 この壁にぶつかる。 <毎日の積み重ね> ●過去には色々と組織を動かし、なぶって、失敗も多くした。変えたが結果が いまいちなので、3か月も経たないうちに、また元に戻したこともある。中途 採用で抜擢した人が、期待外れの空振りに終わったこともある。管理職がなぜ かモチベーションが下がり、極端に生産性が下がったこともある。本当に、経 営を真剣にしていると、組織で悩むことおびただしい。毎日、毎日、その格闘 の連続だ。しかし、適度な揺らぎを与え続けるのは、トップの使命だ。これ が、最大で唯一のトップのミッションだ。常に悩まないといけない。 ●あまり思いつき、その日の気分でころころと変えてはいけない。熟慮し、周 知を集め、周囲の雰囲気や環境を推し量り、しかし決断は果敢に行って、断行 する。あまり、迷ってはいけない。最後の責任は全部社長自身が取るのだか ら、異動や組織変更を最後は自分の意志で決める。決して最後の決断を他人に 押し付けてはいけない。採用も、異動も、昇進昇格も、部署の新設変更も、す べてはこれ全部自分の責任だと割り切る。実際の案は、部下が作成しても、最 後の署名をするのは、全部自分だ。他の誰でもない。 ●そう思うと、かえって開き直れる。そして、定期的に異動や組織の変更を行 う。環境の変化に適宜対応するには、この変化変更が欠かせない。毎月毎日こ ろころとなぶるものではないが、年に1回は定期的に組織を見直す。特に、新 年度の経営が始まる4月や10月などは、組織変更のチャンスだ。昇進昇格、部 署の異動も円滑に行える。もし、4月に組織を変更するなら、今から熟慮し情 報を集め、自ら現場に赴き、自分の目でいろいろなことを確かめ、ヒアリング を行う。毎日、毎日の積み重ねが大切だ。