******************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第506回配信分2014年01月06日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その4 〜トップのリーダーシップの発揮が会社を変える〜 ******************************************** <はじめに> ●現代は環境の変化が激しいので、しばらく順調な事業もあっという間に環境 の変化に翻弄されるときがある。10年前は順調だったのだが、最近どうもおか しい。従来の得意先からの注文が少しずつ減り、気がつけば5年前の半分に なっている。他の得意先からの受注の内容も、3年前とは様変わりしている。 今まで経験しなかったような動きが、多くの得意先で起きているような予感が する。しかし、どうも確信が持てない。どうしたものかと思案しているうち に、どんどん時間が経って、気がつけば毎年毎年受注が減少していく。 ●今までの得意先から、従来の製品とは違う用途の製品のリクエストもある。 最終の用途はわからない場合もあるが、用途を明確に教えてもらえることもあ る。それが意外なことに、今まで考えられなかったような用途の場合もある。 時代や環境が変化していることを実感する。たとえば、ロボットの部品、太陽 光パネルの架台、風力発電の回転部品、最新の飛行機の一部、新しい車両の台 車の一部などなど。どれも日本の製造業のこれからの進むべきニーズと一致す る。しかしスペックが厳しい。 ●しかし、これらの新しいニーズに対応するには従来の技術では対応できない ことも多い。設備はそのままでもいいが、腕=製造技術が伴わない場合もあ る。技術より設備そのものが対応できていない場合もある。設備は何とかカ バーできても、出来上がりの製品の精度を測る測定器が現在の精度のものでは 条件を満たさない場合もある。もっと深刻な場合は、製造工程そのものを大幅 に変えないとできないこともある。いずれにしても、新しいニーズに対応しよ うと思うと、かなり革新的なことにチャレンジしないと難しい場合が多い。 <最後の最後はトップの決断> ●さて、ここでどう考えるかが問われる場面になる。経験的に判断できること はいいが、未経験だったり分からないことだったり、確率が低そうなことだっ たり、どちらかというとネガティブな条件が多いケースは、非常に迷うことも 多い。社内で相談しても答えは出てこない。同業他社の親しい人には聞きにく い。尊敬する先輩に聞いても、環境や年代が違うからぴたっとした答えは返っ てこない。経営トップとは孤独なもので、最後の最後は自分で答えを出さない といけない。腹心の部下が妥当な解答を持ってきてくれるなどということはな い。 ●とりあえず自分が出した結論に自信がない場合もある。一晩寝て起きたら、 前日の結論を再度疑うこともある。人間経験したことがないことに関しては、 どうしても自信が持てない場合が多い。しかし、ある時点では何らかの結論を 出さないといけない。副社長なら社長に下駄を預けてもいいが、社長となると あとはないから、全部自分で決めないといけない。先代のお父さんの会長もま だ存命だが、昨今の経営環境を全部説明しないとこの案件は理解できない。そ うなると、説明にも時間がかかり億劫になる。 ●会議で結論がでるような案件でもない。そもそもの経営の根幹にかかわる案 件だ。そういう案件は取締役では判断が難しい。経営そのもの、創業家の浮沈 に関わるような案件は、無責任に結論が言えない。かくて、代表取締役社長に お任せとなる。非常に辛い、厳しい状況だが自分が決めるしかない。誰も頼れ ないし、誰も答えを持っていない。しかし、企業経営は連続だから、待ったな しの結論が必要だ。時間はあっても、タイミングは待ってくれない。結論を先 送りにすることはできない。胃潰瘍になりそうな状態が延々と続く。 <精神的に安定しないといい判断はできない> ●この滅茶苦茶緊張感のある環境では、常識的な判断は通用しない。常識的に 考えると、リスクが高いビジネスはリターンも大きなものを想定する。しか し、今の経営状態でこのリスクに対応する体制にはない。しかし、このチャン スを逃すと二度と巡って来ないような予感がする。ここはリスクを取るべき か、はてまた回避して穏便に通過するべきか。何とか現在の状態なら投資でき ないこともない。しかし、投資が失敗したらかなり厳しい環境になる。一か八 かの決断を迫られるような状況に追い込まれると、おちおち安眠もできない。 ●ときに経営者という者は大きな決断を迫られる。非常にわかりやすい設備投 資案件もあれば、人材の採用というすぐに効果が見えない案件もある。広告宣 伝の費用などはわかりやすいが、結果が全く見えない場合が多い。4大紙に全 国版の一面広告を掲載したら、それだけで数千万円。そんな費用をかけて結果 が具体的に数字では把握できない。会議にかけても誰も責任ある回答は出てこ ない。最後は社長に決めていてだいたらいいという、お決まりの結論で会議は 終わる。悶々として夜も寝られない。 ●そんなことを繰り返えしていると、多分にストレスがたまる。何とか解消し ようとするが、日常の業績が思わしくないと、追い打ちをかけてストレスがた まる。つまらない案件で時間がかかったり、運悪くそういうときにトラブルも 発生する。そのトラブルで時間がかかったり、始末が思わしくないと一層スト レスになる。トップのメンタルが安定しないと、妥当な意思決定ができない。 いらいらしたり、気をもんだりしていると、総じて判断は間違う確率が高い。 最後の決定者が判断を間違うと、もう取り返しがつかないことが起こる。 <トップのリーダーシップが企業の命運を握る> ●小さな日常の意思決定はともかく、大きな投資を伴ったりリスクが大きかっ たりする案件は、中小企業では会議などで合理的に議論して判断するケースは 少ない。最後は経営トップの英断、決断にかかることが多い。毎日毎日そうい う大きな案件があるわけではないが、年間に何回かそのような大きな意思決定 が必要な事態が起こる。そこでトップは何らかのリーダーシップを発揮して、 一番その時点で妥当と思われる意思決定をしないといけない。緊急ではない が、今後の会社の方向に関わる重要な判断を迫られる。 ●リーダーシップが伴わないと、このような局面でイニシャチブが取れない。 周囲の意見を聞くのはいいが、周囲の誰かに最後の結論を委ねたい。自分が最 後の最後、決定を下したくない。もし、仮に万が一結論が間違っていて、結果 が思わしくないと自分自身を責めないといけないことになる。そうならないよ うにするには、日ごろから重要な意思決定の手続き、手順、考えや判断の基 軸、ぶれない順番などを決めておかないといけない。また、理念やビジョン、 5年後の会社のあるべき姿に基づくイメージも大事だ。 ●このような要件は急に備わらない。毎日、毎日、そのように心がけ、念じて いれば、もしそのようなチャンス、機会に遭遇してもバタバタしない。一度腹 をくくった結論なら、どんなことがあっても自分で責任が持てる。トップに リーダーシップがない企業は、不幸になる。リーダーシップと独善とは紙一重 かもしれないが、経営の現場においてはリーダーシップと独善とは明確に線引 きができる。それは従業員がトップに寄せる信頼感だ。信頼感がある限り、そ の結論には誰もが納得する。トップのリーダーシップがないと企業経営は迷走 する。日ごろからこころがけるのは、トップのリーダーシップだ。