******************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第507回配信分2014年01月13日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その5 〜自分が長期間いなくても運営できる組織を作る〜 ******************************************** <はじめに> ●表題の「長期間」とはどれくらいを長期間というかは別にして、一般に中小 企業はその代表者が走り回って、いろいろな業務を一人数役こなし、屋台骨を 支えているというのが現実だろう。あるいは、まだ現役の現場のトップで、い つも作業服を着て現場に頻繁に顔を出して、いろいろと指示するのが普通に なっている。創業期は仕方ないが、会社の体制が少しずつ整い、組織の形が作 られるに従って、そのような時間は減少し、本当の経営者としての仕事に邁進 する時間が増えてきた、そのような形が好ましい。 ●しかし、企業規模が小さいときや創業間もない企業で、そんなに簡単にトッ プが長期間会社を空けるなどということは、現実にはありえない。数年くらい 経過して、ようやく企業の形が少しずつできてきて、ある程度任せられる人材 が育たないと、そういうわけにはいかない。しかし、そこを目指さない限りい つまで経ってもトップが現場で指揮し、現場で声を張り上げ、会議で独演会を 行い、一人怒って、一人悲しんでいる。そのような感情をシェアできるパート ナーもいない。そういう不幸な状況を長い間続けていると、成長のエネルギー が消失する。 ●創業当初数名の仲間たちという形も多いかもしれない。数名のパートナーが 当初から在籍していると、比較的責任が分担できる。しかし、それはそれで逆 に難しい部分もある。任せるようで任せられないし、どこまでの権限を与えて どこまでを責任を持ってもらうのか。おカネの責任をどうするのか。出資の資 金に比例して責任と権限を分解できればいいが、実際の経営の現場ではそのよ うなことにはならない。ことはそう簡単ではない。かくて、出資と責任は比例 しないケースが多い。かえって混乱するケースもある。 <積極的に会社の外に出る> ●まずは創業者が企業としての形を少しずつ形成していく。当初の計画通りで はないことが多いが、それはそれで現実を現実として謙虚に受け止める。そし て現実に真摯に対応していくうちに、いろいろと形が徐々にできてくる。その 段階で見極めて、メンバーを増強するかどうか検討する。検討するということ は、基本的には前向きなので、優秀な人材を発掘しメンバーに加入してもらわ ないといけない。そうなると、徐々に創業者トップの負担が軽くなる。会社に いる時間が短くなり、そのうちに終日空けられるようになる。 ●終日空けられるようになると、業務が飛躍的に進むことが多い。朝一番に顔 を合わさなくても、メールか掲示板に書き込んでおけば、きちんと業務指示が 伝わる。終わりも、何をどこまで報告しておけばいいかが相互理解ができてい るので、あまり大きなストレスを感じない。弊社もだいたいここまではできて いるから、スタッフと数日顔を合わさなくても、なんら支障はない。お互い に、何をどこまでやればいいかが共有されているから、大きな障害は起こらな い。そうなるのに数年かかった。やっとそれができるようになった。 ●3連休も結構あるので、その前後に数日顔を合わさないとなると、延べで1 週間くらいになることも珍しくない。しかし、業務はほとんど停滞しない。そ こまでできるようになって、次第に活動範囲が広がってくる。会社やオフィス に張り付いていなくても、外でいろいろな活動に参加できたり、機会を与えて いただいたときに、対応できる。会社にいないといけないとなると、どうして も外部の環境の動きが分からない。積極的に外の風を感じるためには、トップ が心して社内と違う人たちと接触する機会を増やすことが大切だ。 <偶然の出会いは社内から生まれない> ●出来上がった組織を承継した後継者経営者は、さらに心しないといけない。 承継した時点で自分が存分力量をふるえる環境になるとは決して思えない。先 代から仕えているベテランが結構存在して、まだ権限が委譲されていないケー スが多い。そのような環境で、新しい事業を始めたり、新しい価値観を作ろう と思うと、なかなか思い通りにいかない。腹心的なメンバーを主要な位置に配 置しようと思うと、人材が足りないことに気付く。その布陣を整えるのに、相 当な時間がかかる。 ●やっと自分の思うような配置ができてから、ようやく自分の考えているサイ クルで業務が回るようになる。会議も思うような進行ができ、結果も少しずつ 出てくる。考えてみれば、要所要所に優秀な人材を配置できたからこそ、この ような結果が次第に出てきた。それに比例して、トップが社内に在籍する時間 が減少してきた。その減少に比例して、今までにないビジネスが始まった。偶 然の出会いからの新しいビジネスは、きっかけは社内ではなくて社外でのトッ プの活動から生まれている。決して会議室からではない。 ●出来うる限り社外での活動を多くする。長期間トップが会社を空けられるよ うな体制を目指す。業界団体でもいいが、海外への視察、出張、体験などは非 常に重要だ。異文化に接したり、新しいトレンドを感じたり。海外とまではい かなくても、毎月数日は東京に行った方がいい。京都でのんびりやっているよ り、よほど東京の空気を感じたほうが勉強になる。東京に数日出張できる体制 を社内で早く作ることだ。往復深夜バスなら、あまり時間の無駄もないし、費 用も安くあがる。とにかく首都圏の空気を吸うことは大事だ。 <3年後の会社の形を作るには> ●昨今はどこにいてもインターネットに接続できれば、ほとんど問題はない。 むしろ問題は、そのような環境にいるにも関わらず、そのような環境を積極的 に利用しないトップが多いということだ。3日間東京にいたから、メールや連 絡が取れないというのは、まずい。海外に出張に行っても、いまや全く問題な い。世界中のどこでもメールで連絡が取れるし、反応は瞬時にできる。むし ろ、海外は時差があるから、同時に話すことは難しいが、半日時差があるか ら、意外と双方向の意思疎通はやりやすい。 ●数年後にこのような仕組みで、このような仕事を、このようなメンバーで、 このようにやれれば、会社はもっと成長するだろう。そのようなイメージが、 具体的な文章と数字になったものが事業計画だと思うが、一般的にいう事業計 画ではなく、トップが思い描く会社の形が重要だ。3年後の会社の形、イメー ジ。そこに誰がいて、彼がこのようにやってくれれば、自分は本当の社長業に 専念できる。緊急なことより、重要なことにいま以上に専念できる。それがで きないと、ずっと同じたこつぼに入って、そこから出られない。 ●リスクはある。リスクのない事業などない。パートナーを採用するのも、あ る意味創業間もないと大きなリスクだ。しかし、企業の成長はリスクと表裏一 体なのだ。そのリスクが会社の成長につながるリスクであれば、果敢に取れば いい。それが当初分からない。分からないから足が出ない。そのリスクが本当 に将来の会社の成長につながるのか、どうなのかは、会社の中にいてたのでは 分からないことが多い。可能な限り社外に出て、席を離れる。長期間いなくて も大丈夫な体制を作る。それができると会社が一歩階段を登ることができる。 そうなると、会社が変わる。