******************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第510回配信分2014年02月03日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その8 〜報・連・相の基本はまずトップから声をかける〜 ******************************************** <はじめに> ●うちの会社は報・連・相、つまり報告、連絡、相談が悪いと嘆いている経営 者の方は多くいらっしゃる。成岡の周囲を見ても、日々このテーマで悩み、葛 藤している経営者の方は多い。あるいは、創業後まだ10年以内の若い企業で も、ここ最近メンバーが増えてきて、増えてきた途端に報・連・相が悪くなっ たとグチを言われる。ことほど左様に、企業経営の永遠のテーマである「報・ 連・相」。なぜ、この単純なコミュニケーションの基本が円滑にできないのだ ろうか?不思議でたまらない。しかし、みんな悩んでいる。 ●以前に某社でこのテーマで講演を依頼された。報・連・相の厳密な区別、区 分は特に必要なく、つまりは相互の意思疎通とコミュニケーションをいかに活 性化するかだ。考えればそんなに難しいことではないだろう。この問題を難し く考えると、永遠に難しく考えないといけない。そうではなくて、いかに社員 間、幹部間、役員間で意思疎通をスムースに図るかということが課題なのだ。 これは特に中小企業に特有のことではない。大企業にも、官僚組織にも、そし て中小企業にもある永遠のテーマなのだ。 ●構えて、さあ今から報・連・相をやりましょう、ではない。常時、いつも報 ・連・相を円滑に行うことを考えている。意識せずに考えている。これは一種 の企業の文化であり、企業の風土、慣習なのだ。意識しないでもできるよう に、習慣化するようにしないと、身につかない。自然に身に付くようにするに はどうするか。それは意識しないでもできるようにすることだ。生活習慣の一 部になっていると、特に意識しないでもできるようになる。我々が、食後歯を 磨くようなものだ。特に意識してやっているわけはない。 <上の者から声をかける> ●まず、報・連・相を活発に、円滑に、意識しなくても行うようにするには、 トップから上層部から上から常時声をかけることを忘れない。特に上から下へ は重力の関係で意識しなくても、時間をかけて習慣化すればできるようにな る。まずは、トップからボトムへ社長が率先して、現場に出て現実を見て、そ のうえで意思疎通を図ることだ。答えは常に現場にある。現地、現物、現実を 直視し、その問題から真正面に当たることだ。今回は時間がないから、誤魔化 して、とりあえずの解決を図ろうとしないことだ。 ●そのためには、常に上の階層の者から下の階層の者に声をかけ続ける。いく ら社長室のドアがいつも開いているからといって、下の階層の者が積極的に トップのドアをたたくだろうか?いや、普通でさえドアをたたくのをためらう のに、悪い報告を持って一生懸命報告に来る部下がいるだろうか?そうトップ が思っていたら、それは現実を知らない。始めから経営者の家に育った一族に とっては、そのような宮仕えの者の考えや行動は理解できない。どうしてその ように考えるのだろうかと悩む。しかし、現実はそうなのだ。 ●父親の先代社長が亡くなって、5年前に就任した40歳の後継者社長の悩み も、報・連・相が円滑にいかないことだ。会議で特にもめることもない。幹部 は真剣に一生懸命に聞いてくれる。特にトラブルが起こるのでもない。しか し、指示は徹底しないし、成果は上がらない。一生懸命なのだが、どこか狂っ ている。何か歯車がかみ合わない。どうしてか分からないが、どうも職場がい きいきしない。活性化しないし、従業員の活気がない。どうしてか分からない が、会話が少ない。みんなおとなしい。ものを言わない。 <自ら動くこと> ●ここまで深刻でなくても、似たような慢性疾患にかかっている中小企業は多 い。これは完全に大企業病の症状と兆候なのだが、意外と中小企業の自分の会 社にもこの大企業病が巣食っていたと気が付く経営者の方も多い。どうして管 理職がもっと積極的に発言しないのだろうか?どうして色々な案件に後ろ向き の意見しか出てこないのか。もっとリスクをとって新しいことをやろうとしな いのか。なぜか活発にならない。活性化しない。保守的になる。元気がない。 原因が分からない。自分が決して間違っているとは思えないのだが。 ●誠に申し訳ないが、このような活性化しない組織は、トップの姿勢が端的に 反映される。組織はトップの背中を見ているから、どうしてもそれが反映され る。自分から報・連・相が苦手な組織で、いくらトップが報・連・相といって も、それはなかなか難しい。お父さんがサッカーが苦手な親子で、息子がサッ カーのプロ選手になるというのは、あまり聞かない。突然変異はあるだろう が、実際には起こらない。やはり、上からのDNAが下のDNAまでを支配する。報 ・連・相が弱い組織は上から報・連・相を再度組み立てないといけない。 ●社長室のドアがいくら開いていても、誰もドアをたたかない。それなら、こ ちらから積極的に現場へ出ないといけない。社長室にいても、なかなか現場の ことは分からない。報告を聞いても、ぴんと来ない。現場で聞けばもっと違う のだろうが、どうしても足がそこへ向かない。やはり習慣化して、いつもその ような状態で報告を聞けるような環境でないといけない。それを作るのがトッ プの仕事だし、実践するのもトップの仕事だ。大企業なら分業でもできるが、 中小企業はそうはいかない。自ら動いて、自ら結果を出す。 <トップの行動力が報・連・相の原点> ●報・連・相とはそういうものだ。決して理屈や合理的な判断で行うことでは ない。何かあったら、本能的に、自然に、まずこれは誰に伝えないといけない か。誰にすぐに報告しないといけないか。誰に相談しないといけないか。それ が理屈ではなく、自然に動作でできるようにする。トップはなにかあって、報 告や相談があると、そこで止めずにすぐに行動に移らないといけない。誰と誰 を集めて、すぐに簡単なミーティングを行う。そんなに構えてやる必要はな い、内線電話をかかけてすぐに集める。あるいはこちらから出かける。 ●できれば現場に行った方がいい。社長室に呼びつけて来てもらうより、こち らから現場に出かける。出かけると、意外なものが見えることもある。閉じこ もっていたのでは分からないことも多い。現場の空気に触れるとまた感触が異 なる。そう考えると、トップは腰の軽い人がいい。考えが軽いのは困るが、腰 が軽くフットワークがいいトップがいい。中小企業はそうでないといけない。 鎮座していたのでは、状況は変わらない。報・連・相が少ないと嘆くトップ は、自分からの報・連・相が少ないのだ。そう考えるべきだ。 ●しかし、なかなかそうは思えない。自分が悪いとは誰も思わないから、その ように感じることは少ない。どうしてみんな報告に来ないのだろうかと悩むだ ろうが、それは自分から足を運ばないからだ。大企業のように全部の事業所を 回ると2年間かかうという企業なら別だが、中小企業はある意味簡単だ。席を 立って、足を運んでそこで報・連・相をすればいい。向こうから来てくれるこ とを期待するより、自分が行動すればいい。現地、現物、現場を見れば、また いい知恵が浮かんでくる。トップの行動力が報・連・相の原点だ。