******************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第511回配信分2014年02月10日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その9 〜社長は元気で留守がいい〜 ******************************************** <はじめに> ●基本的に経営トップは明るい性格が好ましい。やはり、何かと前向き、何か と積極的、何かと陽気な傾向が好ましい。陰気くさい社長だと、気分的に後ろ 向きになる。全員がそうだとは難しいが、なるべくならトップ前向き、陽気、 元気が好ましい。組織全体の雰囲気、気分がそのように染まってしまう。自分 では気が付かないが、どうしても組織はトップの雰囲気に馴染んでしまう。 トップが消極的だと、どうしてもその下の組織はもっと後ろ向きになる。組織 とはそういうものだ。陰気な組織から陽気な部下は育たない。 ●ところが現実はそうではない。非常に素晴らしいトップの君臨する組織で も、やはりどうしても末端になるとリスクのある部門には行きたくない、リス クの高いビジネスには手が出ない、足が一歩出ない。それは、至極当然だ。サ ラリーマンの世界で、誰が好んでリスクの高い部署を希望し、リスクを自ら背 負い、ジャングルに掻き分けて入っていくか。それはトップが勘違いしてい る。こういうチャレンジ精神の高い新事業は、みんながこぞってやりたがるだ ろうと。ところが、公募してみると全く様相が異なる。誰も手を挙げない。 ●そこでトップは愕然となる。どうしていまいまの若者は勇気がないのだろう かと。もっとチャレンジして、リスクの高い事業に飛び込んで欲しいと。しか し、それは宮仕えをしたことのない中小企業のトップの嘆きだ。実際に給料を もらっている立場としては、修羅場は踏みたくない、リスクは取りたくない、 危険は避けたい。それが本音だ。特に最近成果主義などと言われると、どうし てもリスクの高いビジネスに打って出ようとする若い人材は育たない。トップ も腹をくくって、その人材に任せようとしない。相当な覚悟が要る。 <社長は常に前向きが好ましい> ●しかし、オーナー家の後継者ならいざ知らず、相当なリスクを背負う新規事 業に手を挙げる人材は皆無と言っても過言ではない。それくらい新規の未知の 事業に対する警戒感がある。いくらトップが抜擢しても、昨今は自分から断 る。そんな辺境の地に行って、生きるか死ぬかの体験をして、それがどうなる のか。どうなるのかと言われると非常に辛いが、それは必ず将来役に立つ。ま た、役に立たないほうがおかしい。それくらい、チャレンジする意味、意義が あるのが、新規事業のメリットだった。 ●しかし、現実はそう甘くない。社長が新事業をぶち上げたのはいいが、事業 の継続を考えると、非常に厳しい条件がごろごろしている。まず、資金。次に 人材。最後に将来ビジョン。これのどこか欠けても難しい。それはわかってい るのだだが、現実はそう簡単には動かない。かくて、スローガンをぶち上げた のはいいが、現実はことは動かない。そうなると、にっちもっちもいかなく なって、二階に上がって梯子が外される。かくて、そのプロジェクトは失敗に 終わり、社長の威厳は地に落ちる。 ●そこで、社長は常に前向きが好ましい。また、基本的に陽気でないと務まら ない。社長が陰気だと組織全体が陰気くさくなる。そのような組織で前向きに 経営改善できたためしがない。経営改善はコストカットもさることながら、実 は前向きに前向きに進むことが大事なのだ。そうでないと、組織が自ら脱皮し て新しい価値観で進むことはあり得ない。今まで日本が大きく変革した明治維 新、太平洋戦争などは好例だ。ほとんどの企業が、このパラダイムシフト、構 造改善に失敗している。 <常に新鮮な情報が入る環境を作る> ●そのような中で厳しい環境にも関わらず、業績を成長させている中小企業は 少なからず存在する。そのような企業を詳細に観察すると、ほとんどの企業の トップが陽気で、根明かで、ストレスに強い。とくに対外的な人脈が豊富で、 ほとんど会社にいらっしゃらないことが多いほど、将来に対する可能性が高く なる。昔から、俗に言う「亭主元気で留守がいい」、というフレーズに凝縮さ れている。腰が軽いというのは少々マイナスのイメージかもしれないが、やは りフットワークの良さは企業の売りになる。 ●なるべく面倒な案件や事務的に処理しないといけない雑事を午前中に済ませ て、午後からは人に会ったり外に出たり。ときには東京に出張に行く。業界団 体の会合に出席するのに東京に行くだけではつまらない。業界団体の会合など は、ボランティアの集まりなので、本音の会話はまずない。そんな会合に出て いても世間のことは皆目分からない。さっさと切り上げて、六本木や赤坂、神 保町や御茶ノ水、新宿や渋谷を歩いたほうがよほど世間がよく分かる。自分の 会社の業態にもよるが、世間の風を感じないといけない。 ●とにかく多くのものを見て、多くの人と会うことだ。しかし、多少は選択を 考えないといけない。どのような人物に会うか。どのようなものを見てくる か。この選択眼がないと非常に無駄な時間、無駄な労力を費やすことになる。 そこで、自分で分からない時は周囲に気軽にものを聞ける物知りを配置する。 常時そばにいる必要はないが、いつも気楽に質問ができ、いつも気軽にものを 教えてくれる。そんなスタッフを周囲に数名いると非常に心強い。また、常に 新鮮な情報が入ってくる。そういう環境を作らないといけない。 <自分の足で自分の目で> ●トップが元気で留守が多い組織は活気がある。社長室にこもって、かまぼこ のようにデスクに張り付いていては、何も現実は分からない。そんな時間があ るなら、もっと現場を歩けばいい。もっと市場を自分の目で見に行けばいい。 もっと自分でお客さんと対話すればいい。そうすれば、何か真実に近いものが 見えてくるはずだ。どこかの社長さんは自社の新製品が売り出された初日、一 日中ずっと販売店の片隅でどのような人が、どのように行動して自社の新製品 を買っていくのかをつぶさに終日観察していた。 ●部下の報告が全部違うとは思えないが、やはり自分の目で見て確かめるの も、ひとつの方法だ。そんな面倒なことをやってられないという方もあるかも しれないが、大事なときは自分が出ていく。また、出て行けるような体制、仕 事の進め方、段取り、環境を作るのは自分の責任だ。何も手を打たないで、自 分が会社の中にいる時間を敢えて長く作ってしまう。なるべく、会社の外に出 られる時間を長く作る。そして移動中に大事なことを考える。考えたら、大事 なノートに要点だけでいいから記述しておく。 ●話題のスポット、繁盛している飲食店、新規開店のお店、などなど百聞は一 見にしかずで、必ず世間で話題になった場所や店舗、売り場などは必ず一度は 見ておく。書店にもときどき足を運ぶ。コンビニもときどきのぞいてみる。TV や新聞で話題になった商品が必ず置いてある。コンビニなどはいまやIT機器の 塊のような様相を呈している。じっとしていては何も見えてこない。新聞を読 んで雑誌を読んで、これはと思った話題には自ら足を運んで体験し、実際の感 触を得てくる。それを繰り返していると必ず世間が見えてくる。