******************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第512回配信分2014年02月17日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その10 〜金融機関とはこまめにつきあい情報交換をする〜 ******************************************** <はじめに> ●まことに失礼ながら、社長が考え、想像しているほど金融機関の担当者は貴 社の仕事の中味、内容をご存じない。ごく一部の消費者に非常にわかりやすい 業態業種の場合は別にして、特に製造業系の企業ではなかなか実際のところの 仕事、業務を金融機関の方々にはわかりにくい。部品加工であったり、機械系 の一部の部品製造であったり、システム開発であったり、測定器の一部の製造 であったり、とにかく外から見ても何を作って、何が特徴なのか非常にわかり にくい企業が結構たくさんある。 ●何か商品を仕入れて、それをほとんどそのまま並べて販売するというような 小売業的な企業や商店なら、まだわかりやすい。また、サービス業でも消費者 が直接触れたりするサービスを提供している、例えば飲食業などは、まだ表か ら見えるから比較的わかりやすい。しかし、小売業もサービス業も、実は裏側 ではものすごいノウハウに基づいて、すごいオペレーションをやっていること も多い。コンビニエンスストアも、我々はお客さんサイドからしかものが見え ないが、実際はバックヤードに回ると、ものすごいオペレーションをしてい る。 ●会社の中味を見るには、数字の資料は試算表と決算書がほとんどだ。例外的 に、企業独自の経営指標の数字の資料や、得意先別のデータなどはお持ちだろ うが、それを全部金融機関に開示することは珍しい。また、中小企業では残念 ながら、かなり突っ込んだ管理会計の資料や経営資料を作成されていることは 珍しい。飲食店などでは、店舗ごとの収益管理はされているが、共通管理費の 配賦など細かいことになると現場の状況を知らないと分からない。ことほどさ ように、企業の実態を数字の資料で理解するのは難しい。 <金融機関は異動が多い> ●まして、事務所と工場が離れていたり、そう簡単に現場を見せてもらうこと が難しい企業も多い。危険な職場もあるし、食品製造などはそう簡単には現場 には入れない。また、たいていの企業では事務所の中にもそう簡単には入れな い。たいがい面談するのは応接間、会議室、社長室、ロビーなどになる。そう なると、実際の日常の業務の様子はうかがい知るすべもない。見てない、見て いないなので、想像の域を出ない。そのような状態で、試算表と決算書で会社 の実態をつかめといっても、非常に難しい。 ●小職もこのような仕事をさせていただいているので、企業の実態を詳細につ かむことが本業だが、本当の中味を理解するのには数年かかると感じている。 もっとも、表面的な部分ではそんなに時間はかからないが、過去の経過、沿 革、できごと、事件、トラブル、イベント、事業承継の経過などを、こと細か く理解するには相当な時間がかかる。まして、本当にたまにしか顔を合わさな い金融機関の方にとっては、ほとんどのことがブラックボックスになる。ま た、担当者の抱えている企業数も多い。 ●そんな中で、業績の報告や大きな案件の進捗状況も、細かくフォローしてい ないと分からない。また、幸か不幸か、金融機関の方は転勤、異動が多い。た いがい、数年で異動がある。そして辞令が出たら、2週間くらいで異動しない といけない。あまり異動までに時間があると、よくないそうだ。よって、後任 への引き継ぎもそんなに詳細にできているとは思えない。5年くらい経過する と、支店長も、次長も、担当者も全部異動したというケースもある。誰もその 企業の融資の過去からの経過も分からない。しかし、返済は継続している。 <決算書も全部正しいとは限らない> ●彼らが見ている資料も相当過去の計画書である場合が多い。3年ほど以前に 作成し、提出した当時の事業計画書などをベースにその企業を見ても、事態は はどんどん変化している。変化している内容を詳細に把握していないから、連 続していない。また、以前の状態から詳細に経過を説明して、ようやく現在の 状態にたどり着く。金融機関は未来へ向けた話しより、過去の実績を検証しよ うとする。確かにそれは大事だが、企業がいま走っているレール、今後走ろう とする未来に向けたイメージを共有することは少ない。 ●過去の実績も以前に提出した計画書との対比でしか理解しない。3年前の計 画書から、現在までにどのように変化し、修正し、変更点があり、改訂された のか。その都度細かく報告しているわけでもないから、成功も失敗も、見込み 違いも、大口の失注も、逆に大きな案件の成約も、それはそれは、いろいろな 出来事がある。それが全部凝縮しての試算表であり、決算書なのだ。しかも、 前提は数字が正しいという前提だ。しかし、中小企業の決算書はどこか微妙に 修正されていることも多い。会計監査を受けないから、それで通るのだ。 ●決算報告を金融機関に行うのは、当然決算が確定し、決算書が完成した時期 以降だから、決算時点から最低2か月、いや3か月くらい経過して持参するこ とになる。速報値はわかっていても、実際の確定となるとそれくらいかかる。 決算が09月末なら報告に行くのが12月になってからというケースも珍しくな い。そうなると、決算書も賞味期限が切れかかっていて、現実には決算後3か 月くらい経過しているから、社長の頭の中は、もう当期の業績のことでいっぱ いだ。過去の済んだことは、もうどうでもよくなる。 <こまめな情報交換が大事> ●そんな状態で金融機関に企業の実態を理解してもらうのは非常に難しい。金 融機関が一方的に悪いわけでもない。企業側も本当に理解してもらいたいな ら、こと細かに現状を定期的に報告することが大事だ。そのような日常の報・ 連・相をしないと、本当の現実は分からない。理解しないと文句を言う前に、 企業も情報開示、情報提供の努力をしないといけない。そのような日常のこま めな努力なしに、1年に1回くらいの面談と簡単な報告で理解せよというの も、少々厳しいかなと感じることも多い。 ●日本と韓国もまだもめている。中国との関係もぎくしゃくしたままだ。結 局、日常的なコミュニケーションがないから、ちょっとしたボタンのかけ違い でいろいろな摩擦が生じたり、誤解を生んだりする。企業と金融機関も同じ だ。用事がなければ、ほったらかし。そして情報の提供もなされない。ひどい 企業になると、試算表の提出などもこまめにしていない企業も多い。また、試 算表が出てこない企業もある。そんなことをしていて、金融機関に融資を依頼 するときだけ、お願いに行っても難しい。日ごろのお付き合いが肝心だ。 ●そんなに頻度高く行く必要もないと思うが、最低四半期に一度はトップが金 融機関を訪問して、15分くらいでいいから業況の説明をする。特記事項を報告 する。設備投資した内容と期待効果の実績を報告する。現在進行形の大きな案 件の今後の可能性に関して報告する。そのような報告を社長がきちんとされた ら、金融機関は安心する。もちろん業績の浮き沈みは当然ある。あっても構わ ない。そのような状態をきちんと把握している、そして情報開示をしている企 業の姿勢を金融機関は見ている。やはり、こまめになることだ。それが一番 だ。