******************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第513回配信分2014年02月24日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その11 〜追いかけるものとついてくるものを間違えない〜 ******************************************** <はじめに> ●先日の某所の講演の最後で、今回のテーマの「追いかけるものとついてくる もの」という最後の締めくくりを行ったら、これがどうも意外に受けたよう だ。なので、今週のメールマガジンのテーマに取り上げることとした。その講 演の最後のときは、追いかけるものは「ビジョンやこうありたいと思う姿」で あり、ついてくるものは、その結果の売上であり利益ではないかと申し上げ た。どうも、これが参加者には相当響いたようで、最近では講演の最後によく 使わせていただいている。自分ながら、このフレーズには納得している。 ●また、別の講演の際には、「売上を追いかけない」と、よくお話ししてい る。素人のヘボ将棋のようなもので、素人の将棋はどうしても「王手」「王 手」で王将を追いかける。王将を詰ますのが将棋だから、それは間違いではな いが、無暗に追いかけると王将はどんどん逃げる。挙句の果てには、相手の陣 地に入ってしまう。これを将棋の世界では「入玉」といって、こうなると相手 の陣地にまで王将が逃げたことになり、こうなるとほとんどが万事休すだ。ま ずは、その将棋は勝ち目がない。追いかけすぎた結果だ。 ●ことほどさように、追いかけるとどんどん逃げるものがある。どうも、ビジ ネスの売上もそのようなものに入るようだ。売上が結果であり、利益も結果で あるなら、ビジネスでは何を追いかければいいのか。それはここで提示してい るように、自社が求める姿、それが経営者が描く未来のビジョンであり、こう ありたい、こうなりたいと願う会社の、企業の、組織の姿ではなかろうか。そ の求める形、姿を思い描いて、それをとことん全員で追いかける。どんどん逃 げるかもしれないが、ひたすらどこまでも追いかける。これは、どんどん追い かけないといけない。 <若手経営者の悩みも深い> ●今日も、午後から若手の経営者の方々数名と事業承継後の悩みをいろいろと 伺う機会があった。比較的若くして、30代に先代父親社長から事業承継を受け て社長に就任。しかし、お父さんの前社長、現会長もそのまま社内に代表権を 持ったまま在籍されており、なかなかやりにくい。しかし、社長を受け継いだ からには、何か自分で責任を持ちたいし、以前の会社からどんどん変えていき たい。しかし、実際はトップの経験も少ないし、カリスマ性などは一朝一夕に できるものではない。ジレンマがある。 ●自分の世代になったからには、やはり新しい会社が求めるビジョンも打ち出 したい。3年先から5年先くらいを見て、こういう会社にしたいというビジョ ンを打ち出したい。しかし、この社会環境、世の中の変化の速さには、全くイ メージがついていかない。どうしていいか分からないうちに、時間はどんどん 経過する。そんな将来のことを語っても、今日の、明日のメシは食えないか ら、どうしても足元の業績のことへと集中でざるを得ない。そうなると、毎日 の緊急なことに関心が行って、将来のことを考える重要なことにテンションが 向かない。 ●一度、このスパイラルに陥ると、これから脱出するには相当大変だ。緊急な ことは毎日連続して起こるから、これから重要なことに軸足を移すには、相当 余裕がないといけない。しかし、多少の余裕ができると、それまで毎日毎日テ ンション高くずっと緊張して過ごしていると、少しはゆっくりしたい。かく て、マラソンでの途中休憩のようになり、一度足を止めるとなかなか次に立ち 上がれない。他の選手にどんどんと抜かれて、あっという間に後方集団に置い て行かれる。それくらい、一度止まると厳しい。 <誰かが未来のことを考えないといけない> ●本当は、せめて一月に一度は半日くらいゆっくりものを考える時間が欲し い。会社から少し距離を置いて、今後をゆっくりした時間、空間で考えたい。 かくて、一人でどこかに行きたい。隔離、隔絶された空間で、3年先、5年先 に思いを馳せて、どのような会社にすればみんな頑張ってくれるだろうか、 ずっと会社にいてくれるだろうか、待遇をよくして満足してくれるだろうか、 お客さんが喜んでくれるだろうか、などの大事なことを真剣に考えたい。それ が必ずビジョンになるはずだ。 ●なかなかそのような時間と空間をつくるのは困難だが、ずっと平生考えてい ると、何かの折に、きっかけがあり、ふっと具体的になるものだ。日ごろから 考えておかないと、その可能性は皆無といっていい。考え、考えていると、何 かのきっかけ、たまたまの出会い、アクシデントようなものでも、そのヒント になるものだ。その悩みが将来の会社のビジョンを生む原点になる。追いかけ るものは、実はこのビジョンであって、決して売上や利益ではない。もっと も、事業計画では当然、売上や利益の数字目標はきちんとかかげるが。 ●きれいごとだという人も多いかもしれないが、10年間経営を実際にやってき て、売上とは追いかけるものではないというのは、確かに実感だ。ついてくる ものだというのも、実感として理解できる。それくらいの精神的な余裕や経営 者としての器量がないと、どうしても目先目先のことだけを追いかけることに なる。我々なら、目先のことだけに集中して、将来に対する投資、充電、勉 強、ストックなどができないまま、その場その場の対応になる。今日の試合を 勝ちにいくのみで、明日の試合のことを誰も考えていない。 <追いかけるものは将来のビジョン> ●3年先、5年先のことを考えているのは、会社では社長しか考えていない。 しかし、考えていなくても今日の仕事、明日の受注、今月の資金は回る。それ で、ずっと時間が経過すると、本当に誰も会社の将来を考えないまま、3年が あっという間に過ぎてしまう。しかし、そう簡単に会社の将来のビジョンが見 えてくるはずもない。悩んで悩んで、いろいろなところで勉強し、情報を集 め、先達に話しを聞き、それでもよく分からないから、色々な講演を聞き、書 籍を読み、情報を調べ、誰かに聞く。でも、まだ、よく分からない。 ●分からないなら、分からないなりに、分からないままで悩んでいれば、いつ か答えの一端は見えてくるだろう。潜在意識に刷り込まれていれば、どこかで ヒントが見えた時に、さっとイメージが湧くはずだ。日ごろから考えていない とイメージはわかない。追いかけるものがビジョンであり、ついてくるものが 売上だと分かっていれば、いつかは見えてくるものがあるはずだ。これが逆に なると、見えるものが、周囲の景色が全く異なるはずだ。そうなると、見える 景色がまるで違うから、行く方向が逆になる。なかなか気が付かない。 ●そして、追いかけるものが具体的に見えてくるようになったら、次は「必要 なもの」を考える。その追いかけるものを追いかけるには、何が「必要」なの か。これは、追いかけるものが見えてくると具体的には浮かんでくるだろう。 これが浮かばないなら、ある意味経営者失格だ。この「追いかけるもの」が見 えた時、「必要なもの」が分かる経営者の方は多い。だから、余計に「追いか けるもの」を具体的にするのは重要だ。しかし、それが経営者の最大のミッ ション、仕事だ。そのために高い報酬をもらっていると思うことだ。