******************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第514回配信分2014年03月03日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その12 〜ずっと考え、一生懸命発言し、果敢に実行する〜 ******************************************** <はじめに> ●この難しい時代に企業の舵取りをするのは、確かに大変だ。3年先、5年先 のことを考えるとはよく言うが、実際に3年先、5年先のことは分からない不 確定なことが多い。まして、昨今のこの激動の時代だ。そう簡単なことではな いし、なかなか考えてもイメージできない場合も多い。電気自動車の時代がも うすぐにやってくると言われていたが、やはり遅々として進まない。原子力発 電所の将来も、いまだに不透明。為替も国際情勢にとことん振り回される。そ んな不透明な時代環境の中で、3年先、5年先が分かるのか。 ●しかし、分からないから考えないというのは正解ではない。なぜなら、会社 の中で3年先、5年先を考えているのは、社長だけなのだ。もっと大きな企業 になれば、役員が数名しっかりした方がいて、それぞれ役割を分担できるか ら、数名の役員は将来のために知恵を絞っているかもしれない。しかし、ほと んどの中小企業は役員と言えども、プレーヤー。実際の実務を担当し、毎日そ の実務に振り回され、その実務を遂行するのが仕事だ。そうなると、誰も会社 の将来のことを考えていない。社長しか考えていない。 ●その社長、つまりトップも日常のことに振り回される。それはそれで、中小 企業だから仕方ないが、しかし、すべての時間がそれでは、誰が会社の将来に 対して責任を持つのか。誰も考えていないと、非常に不安になる。考えていな いと、すべての判断が行きあたりばったり、その場その場の判断になり、一貫 性に欠ける。あとで振り返ってみれば、ばらばらの投資になり、ばらばらの採 用になり、ばらばらの事業になり、ばらばらの得意先になる。そんなことが数 年続くと企業の形をなさなくなる。空中分解する。 <一人になる時間をつくる> ●24時間ずっと考えているのは難しいが、一日のうちで10%つまり一割くらい の時間は、何も実務をしないで将来のことをぼやっとでいいから考える癖をつ ける。何も、そこでものすごい構想が決まるわけではない。しかし、おおよそ の時間の経過を考え、3年先には誰それが何歳になり、あの機械が古くなり、 あの得意先がこうなり、あの製品の賞味期限が来る、などなど具体的に想定し てみると、非常に恐ろしい怖いことが考えられる。では、その時になって慌て ていても遅いだろう。時間は有限で待ってくれない。 ●10%というのはおおよそ2時間くらいだが、そんなにきっちり2時間という 分けではない。目安としての時間だから、ある日は忙しくてそんな時間はな かったかもしれない。まずは、一人になる時間を作ることだ。移動の時間が最 適なのだが、これが時間帯によるとなかなかやっかいだ。また、車を運転して いていはほとんどものを考えられない。誰か同伴者がいれば、やはり気を遣っ て話しかける。そうなると、とてもじっくり将来のことに想いを馳せるなどと いう芸当はできない。とにかく、一人になる時間を作ることだ。 ●会社の中にいると、なかなかそのような環境にならない。机の上を見ると気 になる書類が置いてある。パソコンのモニターを見ると、どんどんメールが 入ってくる。電話がかかる、携帯にメールが来る。そんなことをしていたら、 あっという間に時間が経つ。その処理をしているだけですぐに一日経過する。 やれやれ今日は忙しかったと、一日が終わる。そんなことをしていたら、一年 間はあっという間に過ぎ去る。消費した時間は、おカネでは戻ってこない。万 人に等しくある時間だが、カネではなかなか買えない。 <社外の誰かに聞いてもらう> ●毎日毎日少しの時間でいいから、将来のことを考える癖をつけると、そのイ メージが自分の脳の中に潜在意識として刷り込まれる。そうなると、何かの折 にふっと考えが固まる、思いつく、イメージできるようになる。これは日常 ずっと考えていないと浮かばない。かの有名なニュートンが、リンゴが木から 落ちるのを見て万有引力の法則を発見したという逸話があるが、まさにそれ だ。ずっと考えていて潜在意識に刷り込まれていると、何か関連したものを見 た時に、ぱっと考えが浮かぶものだ。 ●展示会に行っても、電車の中の吊り広告を見ても、新聞を読んでいても、人 と話しをしていても、講演を聞いていても、とにかくずっと考えていると何か イメージが浮かんでくる。筆者は最近は物忘れの頻度も増えたので、A4の大 判のノートに大事なことはメモするようにした。常にそのノートを持ち歩き、 電車の中や一人になったときに見返す。そうすると、大事なことが浮かんでく る。それを繰り返すと、脳の中の潜在意識が動き出し、活性化する。そうして おくと、何かを見たとき、読んだときに、ああこれだと思いつく。 ●イメージが固まったら、信頼できる周囲の人に、そのイメージを聞いてもら う。3年先、5年先の自社のイメージを聞いてもらう。その人たちがどのよう に受け取るか、イメージできるか、反応があるか。社内の人間より、周辺にい る自社のことを比較的理解できている人がいい。会社の中の人は、どうしても 近くのことに目が行く。その日その日が大事だから、あまり遠い先のことを聞 いても、いまいち反応しない。そんなことより、今月の売上をどうしようか と、一生懸命考えている。その人に3年先のことを聞いても仕方ない。 <考えがまとまったらあとは行動する> ●少し世間を知りもののわかった人に聞いてみる。自分が考えた3年先の会社 のイメージを聞いてもらう。適切な会話のキャッチボールができる人が周辺に いないといけない。会社の中にいるのが理想的だが、なかなかそうはいかな い。かくて、外部にそのような人をリザーブしておく。その人に自分が考えた 3年先、5年先の会社のイメージ、事業の中味、組織の在り方、運営の形態、 人材などを会話する。そうすると、自分が考えたことが意外と受け入れられる ときもあれば、即座に否定されることもある。 ●否定されたから全くダメではない。そうか、そういう考え方もあるんだと、 参考にすればいい。このような会話を重ねることで、だんだんイメージが具体 的になる。求める人物像も見えてくる。話さないと、言葉に出して会話しない と、なかなかイメージが伝わらないし、固まらない。そして、だんだんイメー ジが固まってきたら、最終的には書いたもので残す。それが事業計画の基礎に なる。ここまでいくには相当な時間もかかるし、エネルギーも要る。しかし、 それは社長であるトップの人間しかできないことだ。 ●そして、そこまで固まったらあとは一気果敢に攻める。必要な経営資源を確 保して、一気に攻勢に出る。あとは結果を出すだけだから、比較的気分は楽 だ。将来のことを考えている時間のほうが、実態がないから気分的にはつら い。走り出したら、あとは結果を出せばいい。いろいろなことがあるだろう が、最初にしっかり考えておくと、あとが楽だ。最初にしっかり考えていない と、途中で軸が揺らぐ、ぶれる。そうなると社員が動揺する。そうならないよ うに、最初にしっかり将来のことをイメージする。それが社長のやるべきこと だ。