******************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第515回配信分2014年03月10日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その13 〜同じ環境に安住しないで敢えて環境を変える〜 ******************************************** <はじめに> ●少々古い話題で恐縮だが、今年の正月の元旦のNHKTVで伊勢神宮の式年遷宮 と、出雲大社の同じ式年遷宮が20年と50年が重なる珍しい記念の年なので、そ の詳細を放映していた。特に何を見たいと思ってTVをつけていたわけではない が、見れば見るほどこの式年遷宮という儀式がいかにすごいことかが、初めて 理解できた。俗に言う、伝統の技術、技を継承する、維持するための遷宮とい うだけではない、もっと深い歴史的な意味、意義があることだと初めて知っ た。偶然だが、非常に勉強になった。 ●意識的に伊勢神宮では20年に一度、遷宮と言うメインの建物、環境を全く同 じものを横に造営して、ご神体を移す。また、その移す儀式も大層、大変なの だが、20年という年数が非常に意味があって面白い。20年以上でもないし、20 年以下でもない。20年という経営的には完全にひとつの世代、ひとつの歴史が 次の世代に移る。そのための遷宮であり、20年なのだ。これを企業の事業承継 に当てはめると、非常に面白い現象だと、TVを見ながら感じていた。どうして も職業病のように、見るもの、聞くもの、関連づけて考える。 ●敢えて何も傷んではいないが、環境を変えることの重要性を訴えていた。20 年ではまだいろいろなものは十分使える。特に何が、どこが痛んでいるわけで はない。しかし、それを言い出すときりがない。問答無用で、とにかく20年経 過すれば新しいところに移るという憲法がある。それを頑なに守り通してき た。いいとか、悪いとかではなく、決まりは決まりなのだ。憲法とはそのよう なもので、多分に理屈ではない。だから、疑いようのない決まりだから、やる とかやらないの問題ではない。 <現状のままなら楽だから> ●20年と言う非常に微妙な設定の期間だが、だいたい経営者一代で20年から30 年だから、おおむねこの期間と一致する。ざっと企業の一代経営期間が30年と して、まずの10年で承継し、次の10年で新しく改革し、最後の10年で刈取りと 次の世代への承継を行う。そう考えると、30年などあっという間の出来事だ。 この30年間、じっとしていては何も変わらない。変わらないなら、自分で変え ようとしないと変わらない。しかし、ほとんどが自ら動くことは面倒だ。だか ら、現状と同じ環境に安住する。そのほうが楽だから。 ●じっとしているほうが居心地がいいのは、よく理解できる。成岡のように、 3年から5年単位で仕事や生活の環境が、ころころ変わるのは珍しいかもしれ ない。10年間の社会人生活の最初のメーカー勤務でも、途中で3回引っ越した し、職場も転勤と言うか異動した。結構大きな異動だから、あまり以前の経験 は通用しなかった。そして32歳、10年間の社会人生活の節目で大きなトラバー ユ。大企業製造業から40名の中小機業同族会社へ。愛知県から京都への引っ越 し。待ったなしの新しい環境。 ●そして会社の破綻や移籍。50歳での退職。浪人生活。50歳での再就職と3度 目の東京単身赴任。そして52歳での独立。あまりじっとしていた感じがしない くらい、いろいろと異動したり転勤したり、移住したり。動くことにあまり抵 抗感がなくなるくらい、数年間での異動が多かった。そして独立して10年間経 過したが、その間に本拠、事務所を3回移った。結果的にこれが正解だと思っ たのは、ごく最近だ。動く、移動する、新しい環境に変わることが、それがビ ジネスに前向きな影響を与えている。 <変化することで新たに生まれるものが大きい> ●まず、移動するには身軽でないとできない。資産が多くあって、重たいと移 動も大変だ。3年間くらいで移動することを前提に考えると、あまり重たいも のは持たないように考える。事務所、オフィスも最小限の資産にとどめる。以 前に在籍した出版社で大きな固定資産、本社ビルを京都市内のど真ん中に15億 円で購入したことが、最終的には命取りになった。その教訓から、とにかく重 たいものは持たないようにしている。BSで言えば、左側の資産をなるべく軽く するということだ。ビジネスの種類によっては、なかなかそうはいかないが。 ●20年の式年遷宮ではないが、3年くらいで変わることを前提にいろいろなこ とを設定してあると、考え方が柔軟になる。固定概念が小さくなり、とにかく 環境の変化に合わそうとする。どうせ変わるんだから、あまりこだわらない。 大事なことには徹底的にこだわるが、どうでもいいようなことは最小限の資産 で対応できるようにしようと考える。そうなると絶対に重たい資産を持たない 様にして、軽い資産に注力するようにする。敢えてそのような環境に強制的に 身を置くように努める。業種業態によってはそうはいかないが。 ●ということで、敢えて3年間くらいでまた遷宮、すなわちオフィスの移転も 考える。環境を意図的に変え、マンネリに陥らない様にすることが、組織の活 性化を促す。オフィスのレイアウトを変える、組織を変更する、幹部を異動す る、ミッションを変更する、新規の部署を創設する。これらは間違いなく環境 の変化であり、所属のメンバーは新しい環境に適合しようと変化せざるを得な い。新しい仕事を引き受けるのもそうだし、新しいテーマで講演を引き受ける のも同様だ。新しい提携先と新しい仕事に取り組む。とにかくじっとしていな い。 <変化を敢えて起こす勇気が要る> ●変化を受け入れると非常に疲れるし、くたびれる。オフィスの移転も、こと はそう簡単なことではない。準備、段取り、当日、後始末などに相当なエネル ギーが要る。しかも移転後の場所は完全に空っぽにしなくてはいけない。か つ、業務は停滞してはいけない。金曜日の夜に最後の段取りをして、土曜日に 移転し、日曜日にセットアップして、月曜日から平常の業務ができるように段 取りする。簡単ではないが、いかに段取りよく移動し、段取りよく新しい環境 に適応するか。これを繰り替えすと、いかに身を軽くすることが大事なのかわ かる。 ●変わるとくたびれるから、なかなかやりたくない。そうなると、いつも同じ 環境で仕事をしている。新しい発想は出てこないし、新しいチャレンジもなか なかない。新規事業も始まらないし、毎日毎日同じことの繰り返しになる。周 囲の環境が変わらないと、新しい発想は出てこない。社長がいくら新規、新規 と言っても、周囲の環境が同じだと実効は上がらない。そこにどのような石を 投げて、波を立てるか。コップの水をいかにかき混ぜて、ざわざわさすか。 じっとしていると水は確実に淀んでくる。濁ってくる。 ●変化を変化として、事実は事実として意図的に敢えて環境を変える。組織の 下からは絶対に発想しないから、必ずトップの決断で変化を決定する。特に明 確な理由はなくても、意図的に意識して変えようとする。反対も障害もある が、おカネもかかるが、それは活性化への投資と割り切る。いろいろな無駄も 出るが、変化を起こすには少々の無駄も必要だ。それは前向きな投資のための 無駄だから。このような意図的な意思決定をトップがしない限り、誰も変化を 起こさない。敢えて20年で式年遷宮を行う意図を、自分の会社に置き換える。 そして果敢に実行する。