******************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第516回配信分2014年03月17日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その14 〜経営革新にチャレンジすることが会社を変える〜 ******************************************** <はじめに> ●またまた、平成25年度の補正予算で決定したものづくり補助金の申請受け付 けが始まった。第一次の締め切りが03月14日で、つい先日締め切られた。次の 募集締め切りは05月14日で、これはまだ2カ月ほどあり、十分に内容を吟味、 検討する時間がある。とにかく、あまねく多くの中小企業に、ものづくりに関 する試作の設備などを導入する際に支給される補助金だ。前回は多くの中小企 業から申請のあった案件に対し、多額の税金が投入された。まだその補助金も 完全に消化されていないのに、またぞろ同じ趣旨の補助金が始まった。 ●このような補助金の内容を記載する欄に、ときどき表示されているのが経営 革新を過去に申請認定を受けた企業であるかどうか、という内容にチェックを 入れる項目が最近多い。今回の補助金もそうだった。過去に経営革新の認定を 採ったか、という質問の欄が設けられている。それくらい経営革新の認定取得 というのは、結構重たい事実として認識されている。以前は、この認定を取得 しても、何に役に立ち、何に価値があるのか、よく分からなかった。しかし、 最近でこそ、いろいろな補助金申請の際に有効であることが分かった。 ●もう10年以上前だが、政府、国の中小企業に対する支援のありかたが劇的に 変わった年があった。確か平成12年ではなかったかと思うが、それまでの国の 中小企業に対する支援策と言うのは、あまねく広く平等にだった。とにかく、 広く、薄くでいいから、できる限り広範囲に行うというものだ。ところが、こ の時点で頑張ろうと手を挙げる企業に手厚く配分するということに変更され た。その象徴的な制度が、この経営革新なのだ。制度は多少変わったが、いま でも多くの企業がチャレンジしている。 <自社独自のビジネスモデルを考える> ●折しも、某業界団体組合から経営革新認定取得をPRする講演を依頼された。 別に補助金の制度、募集が始まったからではない。旧態依然とした体質から、 何とか抜け出して、新たな展望を開くために、おそらく対象として格好のテー マが、この経営革新だった。そして、数回にわたり経営革新とはどういうこと なのか、内容は何が大事になるか。そのような根幹にかかるテーマに関して詳 細に説明する機会を設けて、講演する時間をいただいた。詳しくこの制度の内 容に関して理解が深まった。 ●改善と革新は異なる。革新とは従来の方法、方式から、何らかの新規性、独 自性があり、かつ継続性が担保され、従来と違った方法、方式で何らかの成果 を生むことが可能な方式、方法を取り入れ、結果を出すことだ。新規性、独自 性とは、表現は難しいが、何らかの新しい取り組みがなされることだ。従来の 既成概念から一歩抜け出し、全くでなくてもいいが、今までと異なる切り口で 新しいビジネスモデルを作ることだ。そのような方式、方法が採用されていれ ば、十分経営革新として通用する。 ●あとは、その内容にそって実行する体制、事業計画、数字のシュミレーショ ンなどが必要だが、これは事業計画であり、会社の、企業の、経営者の意思表 明だ。事業計画、特に利益計画は、実際にそのようにいくとは100%やってみ ないと分からない。分からないが、このようにしたい、こうありたいというの が事業計画なのだ。決してその通りできるとは限らないが、少なくとも経営者 の意思を表すものだ。だから、非常に重要なのだ。適当に数字をあてこんで、 はめればいい、というものではない。 <計画は外部環境の変化で常に修正される> ●通常の事業計画は、何らかの目的、意図があって作成される。金融機関に提 出したり、自社の3年ごとの目標を明確にするために作成したり。または、新 しい設備投資、大きな投資をする際に作成したり。もっと現実的には、資金収 支が苦しいので、金融機関からの要請でしぶしぶ作成するということもある。 いずれにしても、一度作って、はい、終わりというものではなく、作成したあ とが大変なのだ。これを、その通り実行し、結果を出し、収益の改善につな げ、事業の立て直しを図らないといけない。 ●経営革新のような前向きの事業計画もあれば、再生目線の立て直しの事業計 画もある。どちらにしても、経営者の意思表明であることには変わりなく、対 外的には非常に重たいものになる。本当に、経営者が、経営陣が、この計画に 沿って努力しないといけない。計画は計画、現実にやっていることと大きな乖 離があってはいけない。多少の微小な誤差は生まれるが、大きな路線で大きく 逸れることはない。大きく逸れる、修正が必要なときは、明確に計画の作成を やり直す。それくらいの大きな変更も、ままあるものだ。 ●3年や5年先の計画は、どうしても外部環境の変化により、修正を施さざる を得ないときが多い。自社の都合より、外部の社会、経済環境が想定外のス ピードで動く。あるいは突発的な出来事で大きく変化する。最近ではリーマン ショックなどは、まさにその典型だ。誰も、あのような形でアメリカ経済がぐ ちゃぐちゃになるとは思っていなかった。一部のエコノミストでは、そのよう な予想もあったらしいが、皆はそうならないで欲しいという、期待と願望が強 かったから、そのような予見をした人は少なかった。 <伝統は革新の連続> ●自社の将来に関して、どのような改善、改革、革新を図るのか。あまり大上 段に構えずに、企業が成長するためには、継続的に改善、改革を実行する仕組 みが重要だ。よく講演で申し上げるのだが、新しいことは10やって、成功する 確率はそんなに高くない。せいだい2割あれば上等だろう。残り8割が全部失 敗というわけではない。完全にダメというのが、また2割くらいあって、真ん 中の6割は結果がいいのか、悪いのか、さらに継続しないと分からない。だい た、ビジネスとは、そんなものだ。そう思った方がいい。 ●となると、経営革新テーマとしてチャレンジする案件を、そこそこ複数常に 持ち歩いていないといけない。テーマのきっかけになるような案件は、意外と 日常周辺に転がっていることも多い。また、実際はこれが一番多いのだが、他 の業種業態、企業や組織でトライされている事例が参考になる。それを探すに は、まず社内より社外で、異業種の人たちと会う機会を増やすことだ。たこつ ぼのように、社内の会議室でいくら会議をしても、世間の空気は分からない。 ときどき東京にも行ってみる。それくらいの投資は必要だ。 ●まずはトップが経営革新に取り組む意思を明確にする。何となく、誰かがや るだろうでは、絶対と言っていいほど、ことは成就しない。まずは、トップが チャレンジ宣言をする。変化を起こし、自社の空気、風土を変える可能性のあ る、挑戦しがいのあるテーマを設定し、特に若手のメンバーなどをピックアッ プして、教育的な観点からも、挑戦する。最終的に、経営革新の認定を得られ なかったとしても、確実に社内の空気、風土は変わるはずだ。「伝統は革新の 連続」とは、某老舗企業のトップの有名な言葉だ。これが真実だ。