******************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第519回配信分2014年04月07日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その17 〜自分自身の器を限りなく大きく広く深くする〜 ******************************************** <はじめに> ●いきなり失礼な言い方だが、中小企業は社長の「器」以上には絶対に成長し ない。これは、成岡の独断と偏見でもなく、普遍の真理だろう。なぜそうなる かというと、中小企業は人材が乏しい。よって、企業の成長のためには新卒、 中途に関わらず優秀な人材を採用しないといけない。ところが、中途採用は非 常に難しい。中小企業では中途採用の最終面接は最後は社長が行う。中小企業 では人材こそが命だから、いかに優秀な人材を採用できるか、それが企業の今 後の命運を握っている。 ●最終面接は社長が行うのだから、相手にしてみれば社長と面接したら、それ が最後の意思決定になることは、重々承知のはずだ。普通は、事前に複数の役 員で面接し、OKなら最後の儀式として社長面接を行うのが普通だ。だから、最 後の最後、社長が面接するなら、それまでの経過、疑問点、会話の記録などき ちんと担当者からの一定のコメント、予備知識などが整然と備わっていないと いけない。社長が面接するということは、前提としてその人材を企業に迎える ということだ。優秀な人材は社長のレベルを品定めする。 ●そこまでいかなくても、新卒、中途に関わらず優秀な人材は入社してから会 社を、経営者を、社長を見てしまう。そこで将来にモチベーションを持てる か、逆に失望して早々に企業からリタイアするかは、いつに社長の器量にか かっている。中小企業とはそういうものだと、経営者は心得るほうがいい。辞 めた社員が悪い、悪いと言っている間は、まだその企業は成長しない。あるい は、幹部クラスが退職するなら、きちんとその理由が分かっているか。それ も、取り繕った表面的な理由でなく、本当の理由が分かっているか。 <まずは人柄と能力> ●器量とは難しい言葉なので、特に明確な定義があるわけではない。岩波書店 の広辞苑によると、器量とは「その地位、役目にふさわしい才能、人柄」と定 義されている。これは一般的な解釈なので、ビジネスの現場に置き換えて考え てみる。成岡の勝手な解釈を言わしてもらうと、器という字は口という字を4 つ合わさったものだ。おそらく、これには非常に大きな意味があるはずだ。漢 字の起源を紐解くのではなく、ビジネスの、経営の現場にあてはめて、器量と 言う感じを経営と言う切り口で定義してみる。 ●まずは、第1番目は人柄。というか、企業の人材に対して、その人物に対し て興味を持つこと。社員、パート、アルバイト、派遣社員などいろいろと属性 は違えど、とにかく社内にもっと優秀な、もっと能力のある、もっと才能のあ る人材がいないかと、常に一生懸命ウォッチしている。決して部下の報告だけ を鵜呑みにしない。その人物と毎日毎日コミュニケーションをとる。要は、自 分の目で見て確かめる。相手もトップが直接声をかけると違う。将来のビジョ ンを語る。毎日、毎日そうしていれば自然と人柄を理解してもらえる。 ●第2に教養、勉学、知識など。どちらかというとお勉強に近い。企業の経営 には、一定の知識レベルが必要で、全く何もないと言われると、その存続は非 常に厳しい。しかし、特に歴史に造詣が深い企業は、トップが自社の沿革も含 めて、非常によく理解が進んでいる。特に、自ら自社の沿革、歴史、過去から の経営理念などが重要だと思うなら、自分自身の足跡として、また企業経営と いうカテゴリーの中で、実際に自らきちんと理解し、語れることだ。自社の歴 史を一番詳しく語れるのは、社長しかいないのだ。 <マインドと自己管理> ●第3には会社を成長さそうという気持ち。従業員、社員、役員の誰よりも 勝って自分の会社を成長さそうという気持ちの大きさ。給料をもらう人より、 給料を払う側の人が当然持つべきマインド、気持ちの原点だ。とにかく、どん な経緯でトップになったかは別にして、会社を成長さそうという気持ちが誰よ りも、強く、大きい。その強さ、大きさが、外部の人間に大きな影響を与え る。いつも会社のことを24時間、365日考えている。資金、人材、商品、サー ビス、設備、いろいろな経営資源に関して、どうしよう、どうしようと24時間 考える気持ちだ。 ●最後に自己管理力。いくら人柄がよく、能力があり、会社を成長さそうとい う気持ちがあっても、自己管理ができないと何も実現できない。ここでいう自 己管理は、時間、健康、リズム、食事、睡眠、運動、などなどの、一般的な日 常の自己管理だ。意外とこれが疎かになる。おカネがあるといい加減になる。 何となく、まあいいかとなって、今まで厳しくやっていたのが、なぜか会社が 順調で資金が潤沢になると、ルーズになる。会社が立派になるほど、トップが 謙虚にならないといけない。しかし、たいていはそうならない。 ●独断と偏見だが、この4つのどれが欠けても難しい。人柄、能力、マイン ド、自己管理。器と言う字の4つは、この4つで構成されている。量は分量だ から、大きいほど、多いほどいいのだろう。小さいより大きい、少ないより多 いほど、器量が大きい、多いことになる。自分自身が意外と気が付かないが、 外部や他人は結構この相手の器量が分かるものだ。いろいろな局面、場面にお けるその人の発言、態度、行動などを見ていると、その人物、人間の器量と言 うものが、意外とよくわかる。結構、怖いものだ。 <自分磨きの旅を一生続ける> ●特に中小企業は、経営者の器量以上には成長しない。人材も、自分の器量以 上の人材は入ってこない。万が一、そういう人材が入社しても、数か月、数年 すれば社長の器量の底の浅さ、薄さが露呈して、優秀な人材は去っていく。と にかく、自分自身の器量をいかに大きく、広く、深くするかに、最大限の努力 を払わないといけない。そのためには、哲学者ではないが、24時間365日ずっ と、どうすればいいか、どうしようかと考えていることだ。自分で会社を創業 した社長には、このようなマインドをお持ちの方が多い。 ●残念ながら、受け継いだ承継した2代目以降のトップの方に、このようなマ インドが少ない傾向がある。なんでもそうだが、自分で作ったのと、受け継い だのでは、そもそもの気持ちが異なる。むしろ、受け継いだほうは、いかに時 代にマッチするようにその会社の事業を、どんどん変えていかないといけな い。それが、受け継いだままで何とか時代を乗り切ろうとしている。しかし、 世の中はそんな甘いものではない。じっとしていると、世間はどんどん変わっ ていく。社会環境も、経済環境も、国際環境も。待ってはくれない。 ●かなり時間が経過して、はっと気が付いたら自社のビジネスモデルが圧倒的 に陳腐化している場合がよくある。この時間を逆に回して、その遅れを取り戻 そうとしても、そう簡単なことではない。時間を短縮するには、資金が要る。 はやりのM&Aは、実は成長をカネで買うようなものだ。西日本にお店を順番に 作っていくより、JRの運営するお店を500軒いっぺんに買ったほうが早い。そ のような決断ができるのも、経営者の器量以外の何ものでもない。すべては、 そこに凝縮される。自分磨きの旅、それが経営者の務めなのだろう。一生それ から逃げることはできない。