******************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第521回配信分2014年04月21日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その19 〜業績好調のときに緩まず次の一手を打つ〜 ******************************************** <はじめに> ●とかく業績が好調なときは脇が甘くなるものだ。それまで非常に苦しい経営 状態で、何とかしのいできた企業が、何かの理由で浮上のきっかけをつかみ、 少し業績が良くなることも多い。資金繰りも多少楽になり、それまで必死に走 り回っていたのが、少々落ち着く。そうなると、どうしても人間だから、ほっ こりするのはやむを得ない。しかし、トップが緩むと組織全体はもっと緩む。 緩んだから、どこが急にどうなるわけでもないが、一度緩むとなかなか緊張感 がもとに戻らない。やはりトップの気の緩みが全体に与える影響は大きい。 ●緩むなら社外で緩んだらいい。社内で緩むことはご法度だ。代表者が昨今の 業績好調をいいことに、少々甘く緩んだことを発言すると、組織の末端までそ のような風が吹き抜ける。かといって、いつも難しい顔をして、業績が悪い、 悪いと言っていれば、士気は低下し、モチベーションは下がり、最終的には従 業員社員の元気がなくなる。緩んでも難しいし、緊張感を常に維持すること も、非常に難しい。この、緩急のコントロールができるようになるのが、経営 者として一人前になるということだろう。しかし、なかなかその域に達しな い。 ●経営者と従業員、社員との気持ちの持ちようは、基本的に真逆になる。経営 者は、好調な時に非常に緊張感を持って、次の3年間、5年間を考える。緊急 ではないが、将来のことを考えるという経営者として非常に重要なことをミッ ションとしないといけない。緊急なこと、つまり、今日明日のことは従業員、 社員が何とかする。また、何とかしてくれないといけない。しかし、従業員の 大半は、今日の明日の仕事に追いまくられている。誰も、3年後5年後のこと は考えていない。それはそれで当然のことだ。 <みんなは昨日と同じがいいものだと悟る> ●何とか今日明日の業績が維持できている間に、次の世代のことを考え、手を 打たないといけない。かなり追いつめられてからでは、重要なことは考えにく い。今月の資金繰りが大変な企業の経営者は、3年後など考える余裕もない。 今月をどうやってしのごうか、何とか資金をつなげる手段はないか、どうやっ て20日の手形の決済、25日の社員の給与支払い、月末の買掛けの決済をどうす るか、それで頭がいっぱいだ。とても、3年後、5年後の自社のビジョン、あ るべき姿を考えるなど、とんでもない。 ●業績が好調なら、多少資金繰りにも余裕があるはずだ。毎月、毎月20日にな ると胃が痛くなるということはないはずだ。やっとそのような緊張感から解放 され、週末もほっとする時間が持てる。そこで、人間は悲しいかな、緊張感が 緩む。緩んだ緊張感、テンションの高さは、一度緩むとなかなか戻ってこな い。だから、常にハイテンションで、緊張感を持続、維持するためにどうする かを経営者は自らの胸に手を当てて考えないといけない。まずは、自分自身が 緩まないためにどうするかを考えないといけない。 ●そのために、緊張感を維持するには、自分自身に課題を課すことだ。大きな 課題を自らに課さないと、誰も安易な方向に流れることが多い。いや、人間と は基本的に楽な方向にシフトしようとするものだ。昨日よりは今日、今日より は明日が同じ方が楽なのだ。昨日と同じように暮していれば、勝手知ったるな んとやらで、気分的に精神的に非常に楽になる。慣性の法則とは、摩擦がなけ れば完全球体は、そのままずっと転がり続ける。そのように人間はできてい る。そのことを承知の上で会社の経営に当たらないといけない。 <緩むと脇が甘くなる> ●特に業績が好調なときに、次のアクションを起こすべく、手を打たないとい けない。ところが、これがなかなか難しい。人間、誰もが楽をしたいと思うの は、これは致し方ない。しかし、それに敢然と立ち向かって、その甘い感覚を 打破する。これは相当トップの覚悟がないとできない業なのだ。まず、従業 員、社員、幹部から嫌われる。どうして今業績が好調なのに、固定費の節減、 削減に取り組まないといけないのか。これは自然とそのように感じるのは当然 なのだ。経営者は社員が逆のことを感じていることを理解しないといけない。 ●業績が比較的好調なら、給料も多少は上がるだろうという期待を持つのは当 然だ。しかし、ここをぐっとこらえて、将来の企業のためにむしろ資金を設備 投資に回す場合もある。いま、ここでこの投資を行えば、近い将来必ずこの投 資は意味を持つ。果敢に決断し、投資を実行する。しかも、投資は全額金融機 関からの借入で行う。非常にリスキーではあるが、しかし、いまここで投資す るチャンスが巡ってきたなら、果敢に決断すべきかもしれない。ことほど左様 に、従業員、社員との意識の断絶は大きい。 ●過去に何回も、この業績が比較的好調なときに、いろいろなところが緩ん で、あとで修正、修復するのに大変なエネルギーをかけた経験、記憶がある。 まず緩むのは、非常につまらないことだが、自分自身の足下だ。いままで自転 車で行っていたところに行くのにタクシーになる。新幹線の東京行が、今まで は始発電車だったのが、09時ころに大名出張になる。タクシーのチケットが復 活する。事務所の掃除を自分たちでやっていたのが、外部業者に委託しようと する。すべてが気の緩み以外の、何物でもない。 <業績が好調ないまだから3年後に備える> ●経費の節減、改善はやるとして、事業の次世代に向けた構想を具体化するこ とに着手しないといけない。3年後、5年後、この企業を取り巻く社会環境、 経済環境、市場動向などはどうなっているだろうか?誰にも正確なことは分か らないが、しかし仮説を立てることはできる。その仮説を外部に聞いてもらっ て、今後どのようにすればいいかを模索する。それくらいなら、費用もかから ないし、簡単ではないが、しかし次の世代に向けた大きな転換点になる。その ような重要なことは、経営者自らが動かないといけない。 ●5年後は難しくても、3年後なら、まだ何となく想定できそうだ。次の一手 はどこに打つか。それは経営資源的には、資金であるのか、人財であるのか、 またはそれ以外の経営資源であるのか。つい最近も、社外役員をしている某社 の依頼をうけて、幹部人材の採用に走り始めている。いろいろなところに声を かけ、いろいろな人と接触し、いろいろな人に依頼をしている。その際に自分 が求めている人物像が、当初はぼんやりしていたのが、かなり尖ってくる。や はり経営者自身が動くと、いろいろと局面が動き出す。それをやらないとダメ だ。 ●売上を伸ばそうと思えば、資金が必要だ。原材料の買い込みから始まり、製 造従業員の補充、補填も必要となる。これをジャッジして、然るべく次の一手 を打つのが、経営者のミッションであり、経営者の責務なのだ。緩んでも戻ら ないから、好調なときほどテンションを高く掲げ、いまだいまだと連呼する。 経営者が折に触れて、同じかもしれないが従業員、社員に次の一手はこれだと 明示する。具体的に説明する。そのように連続的に行えば、未来が見えて、間 違いなく業績は向上する。なにせ、中小企業は経営者の姿勢が鏡のように映 るからだ。