******************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第522回配信分2014年04月28日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その20 〜経営者は直観を大事にするために日々努力する〜 ******************************************** <はじめに> ●経営者の経営課題に対する直観、なかんずく閃き、勘のような感覚は非常に 重要だと思っている。確かに、いろいろな数字の資料、判断材料、データなど で最終的には意思決定を行う。それはそれで、正しいが人間の判断する事柄だ から、すべて合理的に数字の多い少ないで判断できるものではない。意外と数 字で証明したのと、逆の結論が結果的によかったということも、しばしば起こ る。それくらい、現実の経営の現場では、数字の理屈で通らない、証明できな い出来事も多く発生する。いや、その方が多いかもしれない。 ●まず、意見を聞いたときには大胆な意見はほとんど出ない。無難な、誰もが 考えそうな意見やアイデアしか出ないのが普通だ。あまりに突拍子もないこと は、従業員や社員の口からは、なかなか出てこない。経営者は期待しているか もしれないが、社員の立場でそんな突然びっくりするようなアイデアが飛び出 すことは珍しい。仮に、経営者がそれを期待してるなら、日常そのような意見 やアイデアが出る環境を整備しておかないといけない。18時以降はオフィスで アルコールを飲んでもいいとか、勤務時間は自由にするとか。 ●従来の環境をそのままにしておいて、アイデアだけ斬新なものを出せと言う のは、経営者の傲慢に近い考え方だ。やはり、農業と同じで「土」を作るとこ ろから企業体質の転換を図らないといけない。今まで作っていた作物から、違 う作物を作るわけだから、本来土台になる「土」から作り直すことが必要にな るだろう。特に、トップの経営者が意識して環境を変えることをしないと、い つも今まで通りの同じ環境では、同じような意見、アイデアしか出てこない。 ご不満かもしれないが、現実はそうなのだ。 <数字やデータで判断すると間違う> ●問題は、斬新な意見が出た時に経営者がどのように判断するか。本人は斬新 な意見を求めていると言いながら、いざ現実となると意外と革新的な意見には 尻込みすることが多いかもしれない。最終的な判断は、数字やロジック、理屈 ではなく、経営者その人の直観に基づくことが多いのが現実だ。感覚的な判断 だとダメという人も多いだろうが、実は現実の経営の現場では、そのような一 見非合理、不合理的なジャッジに基づいて現実の経営が行われていることが多 い。正直、本当に数字で何もかも決められればいいが、ことはそうはいかな い。 ●ということは、経営者は日ごろから、経営的な課題に対する直観を養ってお かないといけない。一番よく現象的に現れるのがメールへの返信だろう。直観 が研ぎ澄まされて、課題に対する意見が頭の中にイメージされていると、例え ばメールへの返信でも、短時間でその場で書ける。それが、全然考えていない と、返信の数行書くのに時間がかかる。返信の早い人は、いつもその課題に対 するイメージができている。だから、そのイメージに対して同意できるか、同 意できないか。その原点が確立していると、返事もすぐにできる。 ●ところが、なかなか返事ができない人が多い。簡単なことでも数日かかる。 合理的に資料を集めて判断することではないのに、それでも相当な時間がかか る。それで返信された内容を見ると、どうしてこの返事をするのに数日もかか るのだろうかと、理解に苦しむことも多い。それくらい経営者は日ごろから重 要な課題に対して感覚的な直観力を養っておかないといけない。いざというと きに、一番大事なのは、この経営者の研ぎ澄まされた感覚が重要だ。これがな いとおそらくだが、相当経営的には違ったジャッジをすることになる。 <いつも考えていると直観力が養われる> ●では、どうすればこのように直観力が養われるのか。独断と偏見で申し上げ れば、いかに日常的に経営課題に対して考えているか、だろう。月並みで平凡 な答えだが、実際のところそうだと思う。日ごろから、その経営課題に関し て、悩み、苦しみ、もがいていると、段々ことの本質が見えてくる。それが、 他人事であったり、優秀な部下のスタッフが考えてくれたり、準備段取りをぬ かりなくやってくれたりすると、自分の直観力が研ぎ澄まされない。段々、 鈍ってきて、最後は自分ではどうしようもない事態に陥る。 ●当事者である意識が希薄なのだ。ことは、すべて会社の中で起こっているこ とは、全部が全部社長の責任ではある。だから、あらゆることに興味、関心を 持てば、自ずと見えるものが変わってくる。先日も、あるお目にかかった方 が、このメールマガジンのことを褒めていただいた。この長い、たっぷりの文 章を毎週、毎週よく書けますね、と。しかし、本人にしてみたら簡単なこと だ。書かないといけないのだから、とにかく何でもネタになりそうなことは収 集している。突然、急に書くことはできない。やはり日ごろからの準備が必要 だ。 ●経営課題の意思決定も同じだろう。急に言われても、なかなか答えは出しに くい。しかし、常にその課題を考えていると直観力は研ぎ澄まされる。食事を していても、TVを見ていても、新聞や雑誌を読んでいても、移動中の電車の中 でも、とにかくずっとその課題を考え続けていると、いつかぱっと見えるもの が変わってくる。経営のジャッジとは、そのような煮詰まったところの、ほん の一瞬の判断の神経に、何かが触れたときにぴんと来るものだ。そうか、これ がこういうことだったんだと、後で納得するような場面があるものだ。 <準備がないところに幸運は訪れない> ●今までそのような経験、体験がないと、直観力が研ぎ澄まされていない。と にかく理屈ではないので、体験的に、経験的に、場数を踏むことだ。回数を重 ねるごとに成長し、直観力が養われる。外部に意見を求めるのも、非常にいい ことだ。知恵の出る、見識のある人が言う一言は、非常に重みがある。その一 言で、ぱっと霧が晴れることもある。いつも考えていると、ヒントを言ってく れたときに、ああこれなんだと妙に納得がいく。それくらい、経営とは非合理 的な部分も要素としては多く持っている。だから、面白い。 ●すべてがロジック、理屈と数字で決まるなら、データで全部をジャッジすれ ばいい。ところが経営課題の解決には、そのような合理的な判断だけでことは 決まらない。むしろ非合理的な結論ほど、リスクは高いがリターンも大きい。 そのようなリスクの高いジャッジは、なかなか急にはできない。しかし、日ご ろからその課題に真摯に向き合い、何とか最善ではないが、最良の答えを探し ていると、意外とどこかに回答のヒントがあるものだ。先日も、某社の会議に 出ているときに永年の懸案の課題の一応の解答が見えてきた。やっと、ほっと した。 ●時間をかければ合理的な判断ができるかというと、そうではない。理屈では 推し量れないところに、リスクもあるが大きな果実が眠っていることが多い。 それを探すのには、経営者の直観力が欠かせない。常に意識を高く持ち、自分 が答えを探すのだという自覚を持ち、周囲に高いアンテナを張り巡らせている と、必ずといっていいほど、どこかで答えが見つかるものだ。ラッキーや幸運 は、日ごろの準備ができている人には訪れるが、準備ができていないところに はやってこない。意外と、神様はそのことをよく見ている。