******************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第525回配信分2014年05月19日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その23 〜行動を早くできるように日ごろから準備する〜 ******************************************** <はじめに> ●経営は時間との戦いだという言い方もできるくらい、時間は貴重な経営資源 だ。また、タイミングと言う非常に都合のいい表現もある。新しい事業や商 品、サービスを適当な時期、タイミングに投入することは、ビジネスの成功、 不成功に非常に大きな要素になる。それくらい、ビジネスの現場では早い、遅 いが優劣を分ける境目になることも多い。実際に毎日戦う我々には、時間との 闘いだという印象も強い。なにせ、その時期、その時点で、結果的に成功して いなければ、その後の成功はあり得ない。それくらい、現場は厳しい。 ●この現場の時間感覚は、どう考えても実際に現場でビジネスをしている者で ないと分からない。社長室と会議室を往復している感覚では、時間感覚はほと んど感じられないだろう。それくらい、現場での感覚は時間との闘いであるこ とが多い。ゴールまでに時間がない、期限が迫っている、準備するのに時間が 足りない、資料を作成するのに時間が不足している、などなど。例を挙げれば きりがないが、いずれにしても時間という貴重な経営資源が知らず知らずの間 に浪費されていることが多い。現場では実感として非常によくわかる。 ●時間との闘いはコストに跳ね返る。時間を節約しようと思えば、費用を惜し まずいろいろなところにコストをかけてリクエストをばらまく。そうすれば、 何らかの気の利いた答えは返ってくる。その答えの中になにがしか、利用価値 の高いものもあるだろう。つまり、費用をかければそれなりのアウトプットが 出ることも多い。やはり、おカネをかけただけのことはあるというケースだ。 当然のことながら、予算は膨らむ。そのようなおカネの人海戦術になるなら、 大企業しか生き残れない。経営資源の多い、少ないがビジネスの結果を左右す るならだ。 <トップは世間を知ること> ●おカネ、経営資源の乏しい中小企業にとって勝ち残るひとつの大きな要素 は、早く始めることだ。大企業や中堅企業は意思決定に時間がかかる。いろい ろな会議、階層を経てようやく最後の役員会にたどり着く。そこで認知されて 初めて投資案件が承認される。場合によれば、1か月や2カ月かかるのは当然 くらいの時間的な感覚だ。大企業なら、もっと時間とエネルギーがかかるだろ う。ところが身軽な中小企業は、経営トップの一言で大きな投資案件も、即座 に決定できる。それくらい意思決定の時間が異なる。 ●その強みを活かしている企業が少ない。同じようにゆっくりゆっくり時間を かけて、意思決定し、投資が決定し、中途採用が決まり、大企業と同じくらい の速度でビジネスのテンポが刻まれる。同じようなスピードなら、大企業に勝 てるわけがない。同じ速度感覚なら、自分の企業より経営資源が勝っている企 業に勝てるわけがない。それくらい時間の感覚は大事なのだが、経営現場的に 言うと、必ずしも多くの案件でそのようにタイムリーに中小企業で意思決定で きているというケースは少ない。では、なぜタイミングよく意思決定できない のか。 ●ひとつには経営トップが社内以外の経営環境を知らない。いま、世間ではこ のようになっている、この業界ではこのような動きがある、他の業界だがその 動向が自分の企業に押し寄せるには、そう長くない、などなど。一例を挙げれ ば、人手不足。いろいろな業界で非正規従業員が集まらないので、お店が営業 できないという事態に追い込まれている業界もある。飲食関係の業界は、その 傾向が強い。有力な外食企業も、非正規従業員が集まらないので、スタッフの 数が揃わないから、実質の閉店に追い込まれた企業もある。 <リスクをとって決める> ●建設関係の業界も同じ傾向にある。いろいろな専門的な業種が必要となる大 型工事案件が、なかなか人手の関係で工期が定まらない。2015年以降は東京五 輪の工事計画も順次煮詰まり、本当に冗談のけて人手不足が深刻になるだろ う。まあ何とかなると悠長な経営者もいらっしゃるが、ことは相当に深刻だ。 だから、早く意思決定して、早く手を打つ。それが大事なのだが、なかなかこ ちらの思うようなテンポで、ことは進まない。進まないくらいなら、まだいい が、場合によっては後方にずれているケースもある。 ●すべてはトップの意思決定の遅さに原因がある。野球で言えばベンチの監督 のサインを出すタイミングが非常にまずいケースだ。時々刻々戦況は変わる。 どうしよう、どうしようと思っている間に戦況は激変し、おっとりサインを出 したときには、とき既に遅いという事態が多い。やはり、ビジネスで必要なの は戦況を読む力なのだ。いま、この時点で何を、どう決断しないといけない か。時間も、メンバーも、資金も、その他の資源も十分にある大企業と異な り、中小企業は条件が厳しい。その厳しい中で果敢に決断しないといけない。 ●決断するには時間をかけていてはいけない。もう少し条件やデータが揃えば 決められるので、少し待とうか、などという結論は多いが、では本当にもう少 しデータが揃えば正確な決定ができるかといえば、それはとんでもない誤解 だ。決定的な条件が不足していれば別だが、ほとんどの条件が出そろって、果 たしてあと少し分からないから決められない、そんなことはあり得ない。全部 が分かれば誰でも決められる。それが不足しているからこそ、トップがリスク をとって決めないといけない。それが最高責任者のミッションなのだ。 <常に備えていればすぐに決めることができる> ●時間がないなかでベターな結論を常に出すには、いつもその課題に対する解 決策を考えていることだ。常に考えていないと、何かが起こった時にすぐにア クションが取れない。すぐにどのスイッチを押せばいいか分からない。すぐに 誰に相談すればいいか、分からない。すぐにどこに行けばいいか分からない。 かくて、従業員全員が右往左往して、その挙句最終的な意思決定を間違う。そ のような粗末な経営判断をしている中小企業が山ほどあるだろう。ひとえに代 表者の、経営トップの日ごろの備えがしていないという理由が大半だ。 ●来客が来てからスーパーに買い出しに行っていたのでは、遅い。時間によれ ば、その時刻ならスーパーは閉まっているかもしれない。そんなずれたタイミ ングでも、日ごろから準備ができていれば何とか対応できるはずだ。幸運は準 備のないところにはやってこない。けだし名言なのだ。それなりの準備が日ご ろからできていて、それなりの結果を出すのは、必ずそれなりの準備ができて いる。備えあれば憂いなし。完璧に準備などできないが、大半をカバーできる 準備ができていれば、早期に決断できるはずだ。 ●すぐに意思決定できないのは、想定外の事態以外には、準備ができていない からだ。準備ができている企業は、すぐに意思決定し、すぐに動き出す。この すぐに動き出せる体制をどう作るかが、経営がうまく回転するかどうかの分岐 点だ。この重要な事実が理解できていない経営者の方々が多い。何事も、早く 意思決定することが、逆に失敗を減らす。相反した表現だが、早く意思決定す れば、修正もできる。遅く意思決定すると、修正をする時間がない。早く決定 すれば逆に失敗が修正できる。経営者の決断は早く行うことだ。