**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第531回配信分2014年06月30日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その29 〜抽象的な指示やオーダーは極力避け具体的にする〜 **************************************************** <はじめに> ●よく会議に参加したあと、その会議の議事録が送信されてくることがある。 だいたい、WORDの形式でA4で数枚の分量が多い。この会議の議事録で一番重要 なことは、何が決まり何が課題として次回までの宿題になったかだ。この課題 の設定が具体的でないことが非常に多い。期限が明確に切られてなかったり、 誰が実行の責任者であるのかがはっきりしなかったりが多い。また、課題の設 定もあいまいな表現になっていて、数字で明確にゴールが設定されていないこ とが多い。 ●基本は、誰が、いつまでに、何を、の3つを明確に決めることだ。どのよう にして実行するのかは、その担当者に委ねられることが多い。あるいは、その 方法は予算との関係、期限との関係で変わることもある。基本は、担当者か責 任者、実行の主体者が誰なのか。意外とこの誰なのかを明確にしていないこと も多い。みんな自分に火の粉がかぶってくるのがいやだから、敢えて明確にし ないままというのも多い。議事録を作成する本人が実行者の場合、特にその傾 向がある。 ●次に重要な期限。つまり、いつまでにという期限を明確に切らないことが多 い。この期限を設定しないと、どれくらい緊急度が高いのかが分からない。も う、来週のことなのか、来月のことなのか、来期のことなのか。それによって 対応、アクションの仕方が全然変わってくる。もし、来週が期限なら、大慌て で対策を練らないといけない。すぐにメンバーを集めて、指示をして、段取り をして、仕上がりのイメージを共有して、とにかく走り出さないと間に合わな い。だいたい、そんな方法でやった仕事は、ろくな仕上がりにならないが。 <決まったことをその場で全員が共有する> ●何をというのは課題そのもの。ただ、仕上がりの出来具合のイメージを共有 しておくことは重要だ。意外とこれがメンバーの中で、ばらばらに受け止めら れていることが多い。だから、会議の議事録で確認しておく必要がある。しか し、その議事録もあいまいな表現、抽象的な表現で記載されている。改善する とか記述されていることが多いが、改善するとは、何をどのように、どれくら いまで改善するのか。その到達の程度を明確にしないと、チャレンジする対象 が変わる。100%なのか、120%の仕上がりなのか。 ●2時間くらい一生懸命会議をした結果でも、これくらいあいまいになった り、受け止め方が異なったりする。それくらい、多くの人で組織を構成し、企 業や会社を運営していくのは難しい。意外と家族、一族、同族で運営している から、みんな分かっているだろうと思っているのは、甘い。ひとつひとつ、重 要なことはしっかり確認をして、詰めていく。その地道な作業が欠かせない。 それを適当に端折って段取りも何もなく、いい加減にしておくと、あとで非常 に面倒なことになる。入り口できちんとしておくことが大事だ。 ●ひとつの方法は、会議の終了時点で口頭でいいから、社長が会議で決まった 大事なことを確認することだ。なるべく会議室にホワイトボードを持ち込み、 そこに書いて全員でイメージを確認する。あるいは、進んだ企業だとプロジェ クターで誰かがパソコンで記述して、それをスクリーンに映して確認する。や はり、頭で考えていても、文字にしてみんなが見ているところで共有するの は、非常にいい方法だ。そのスクリーンに映したものをそのまま議事録にすれ ばいい。そうすると、みんなの中で結論が共有される。 <納期や期限はより具体的にする> ●指示は極力具体的でないといけない。責任者、担当者も部署だけ決めて個人 名を決めないと、意外と自分ではないと思っている場合もある。どの部署の誰 がこの案件、課題に責任を持つのか。まずは、これを徹底的に拘り、あいまい にしないことだ。明確にすればするほど、組織内ではぎくしゃくすることが多 い。いま忙しいから、他の人に振ってほしいとか、その仕事は自分の部署とは 違うとか、そのような発言、表現が出てくると、これは大企業病の始まりだ。 とにかく難しい課題ほど手が上がらない。そう思っておいたほうがいい。 ●無理やり担当者をその場で決めても、本人が心底納得していないと、課題は 進まない。気が進まない案件ほどいやなものはない。無理に担当者をその場で 決めても、本人がその気にならないと進まない。そのためには、会議の前に事 前に説明したり、説得したり、俗に言う根回しが必要な場合がある。社長が勘 違いしているのは、決めればやってくれるだろうという間違った解釈だ。宮仕 えのメンバーと、初めから社長であった人と、同じ感覚で経営に当たることは あり得ない。自分がそうなら周囲もそうだと、甘く思ってはいけない。 ●期限もより具体的に、明確にする。来週中とかいう表現で言うこともある が、来週中という期限も非常にブロードだ。幅広い。来週とは、日曜日から土 曜日までか。月曜日から金曜日までか。金曜日も週末のぎりぎりになって解決 策が提示されても、全員に共有できる時間がない。よって来週中ではなく、木 曜日の何時までとか、より具体的でないといけない。よく、成岡は木曜日の23 時までという表現で書くことが多い。木曜日の23時までにあれば、金曜日中に 修正して全員に徹底することが可能だからだ。だから時刻まで明記する。 <目標とする企業の真似から始める> ●納期を決めるときも同じだ。より納期は具体的でないといけない。社長が、 トップが、この辺があいまいだと、会社の全員があいまいになる。あいまいに 慣れてしまう。これが非常に恐ろしい。いろいろな企業の会議に参加している と、この辺の運営のうまい、下手で随分結果が異なる。トップがアバウトな性 格だと、会社もおおむねアバウトになる。まあ、だいたいでいいか、となる。 トップが几帳面で、時間や数字にうるさい企業は、出てくる資料もきちんとし ている。日付、作成者、表題などがきちんと書かれている。一目ですぐにわか る。 ●取り組む課題は、なるべく定量的な表現、すなわち数字で仕上がりを表すよ うにする。売上をアップするなどという表現は、絶対に避ける。アップすると はどういうことを言うのか。どれくらい増やすのか。減らさないという意味な のか。意外とこのようなわけの分からない表現で全員がなぜか納得しているこ とが多い。差し出がましいが、そういうときは最近はあまり遠慮をしないで、 部外者の立場で指摘をする。どれくらい増やすのか、指示があいまいだと結果 もあいまいになる。だいたいでいいということに落ち着く。 ●非常に恐ろしいのは、企業の中でこのような雰囲気、空気、風土、文化が出 来上がると、なかなかその文化を変えることが難しい。過去はこのようにやっ てきました。それを変えることは至難の技ということが多い。それをまた内部 にいると気が付かない。自分の家の中しか見ていないと、外部の常識が分から ない。それでいいのだと錯覚する。社長は、経営トップは、できる限り外部の 風を感じるポジションを意識することだ。そして、自分が手本とする企業を見 つけて真似することだ。真似ができるのも、社長の実力だ。