**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第534回配信分2014年07月21日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その32 〜反対が多くてもやらないといけないときは断固実行する〜 **************************************************** <はじめに> ●経営者という立場は非常に難しい、微妙な立場なのだ。特に中所企業ではど うしようもないくらい、圧倒的に力のある立場なのだ。代表権があるとか、株 式の過半を持っているとか、あまりそういうことは日常関係ない。日常の業務 においては、代表権も株数もほとんど用をなさない。絶対的な問題は、社内に おいてものごとを決める決定権があるか、ないか。極端にいうとそれだけが従 業員と違うのだ。最後の最後は、代表者がものごと決める。いや、決めないと いけないのだ。どうも、そこを勘違いされている方がある。 ●社長の仕事はものごとを決めることだ。しかし、これには注釈がつく。あく までも、会社の将来を考えて正しくものごとを判断し、正しくものごとを決め ることだ。ほとんどの中小企業は、何らかの分業制で機能的組織が多いだろう から、各機能の代表者の方が集まって検討する、議論する、賛成反対を言う。 そして、最後の最後は代表者、たいていこれは社長と言われる人だが、その人 が最終の判断を行い、最終の決定をする。誰かが最後決めないとものごとは進 まない。そのために社長と言う立場の人が存在する。 ●企業によっては代表権のない社長と言う方も、中には珍しいし稀だがいらっ しゃる。その場合は代表取締役会長と言う立場の方が最高意思決定権者という ケースが多い。あるいは、グループ企業が複数あって、それぞれの企業には代 表取締役社長がいらっしゃるが、グループの最高意思決定権者、すなわちこれ をCEOと呼ぶのだが、これは会長職の方がされている場合もある。しかし、そ のケースは比較的少ない。たいていは、代表取締役が社長であり、最高の意思 決定は社長が行う。 <意思決定の先延ばしはご法度> ●企業は組織で動くから、個人個人が好き勝手に活動しているのではない。そ れは個人商店だ。会社は全体で決まったことを、全体で推進遂行する。その最 後を決定するのは、代表権のある社長という存在なのだ。この社長が決める、 決断することが非常に重要で難しい時代になっている。なぜなら、以前では非 常に将来、未来を創造、推定するのが分かりやすかった。誰もが同じように感 じ、同じようなことを考えていた。成長率も相当な数字で見当をつけていた。 事業計画も考えるのは簡単だった。 ●それがバブルがはじけてから、非常に見通しが難しい時代になった。ITバブ ルやリーマンショックなどいろいろとあったが、とにかく不確実な時代になっ た。こういう時代になると、未来を考えて将来に向かって投資をするのが非常 に難しくなる。経営者の方の足が一歩前に出なくなる。他の周辺の同業者の様 子を見て、模様眺めになる。自分からリスクを取ろうとしなくなる。法律が改 正されても、みんなが守らないから、堂々と違法が社会の常識になる。護送船 団方式で、みんなが渡れば赤信号でも怖くない。 ●つい、そのような方向に流れて、安易な決定、先延ばしの決定、現状維持の 決定をしてしまう。もう少し待つ、様子を見る、資料を集める、データを確認 するなどの、もっともらしい理由をつけて、しばらく結論を先延ばしする。そ うなると、3年間くらいは事態は変わらない。他社の一部はそれでもリスクを 取ろうと動いている。そうなると、3年間の意思決定の先延ばしは、非常に大 きな乖離、齟齬、有意差を生む。気が付いた時には、相当な差がつくことにな る。もうそこまで離されると追いつけない。 <現状を変えるのは現場からの抵抗がある> ●そこで、リスクのあること、いやなこと、皆が反対することなどを不確定な 未来に向かって決断しないといけない。少し先取りをしないといけない。現状 の一部を否定し、現場が嫌がることを決めないといけない。例えば、事務系の 仕事をやっている担当者の一部を営業の分野へ投入する。複数の担当者のレベ ルがばらばらだといけないので、全員が同じレベルになるようにする。複数の 部門の仕事をできるようにする。部署を統合する、支店を一緒にする、余剰の 人員を新規事業に振り向ける。 ●いずれにしても、現状を何らか変えることになるので、現場でそう簡単に受 け入れられない。現場の担当責任者は、とにかく自分の部門を守ろうとする し、変えることに抵抗がある。まして、自分の部門の優秀な人材を、他に部署 に転籍さすなどもってのほかになる。女性の管理職を新しく作るとなると、一 斉にブーイングが起こる。海外からの技能実習生を入れようとすると、現場は 反対する。お店で新しい商品を開発しようとすると、新しい努力をしないとい けないので、なかなか重たい腰が上がらない。号令をかけるが、現場は動かな い。 ●そこで、現状を変えようと思うと相当に思い切った施策を打たないといけな い。人事異動が一番有効なのだが、人数の少ない中小企業では、なかなか勇敢 に人事異動ができない。だから、その部署の生え抜きが多くできる。そうなる と、なかなか他の部署との異動が難しい。営業は営業、製造は製造、配送は配 送、事務は事務と、機能的に分化して他との異動の壁が高くなる。Aさんを異 動させ、Bさんを他部署から新しく受け入れると、二重に苦労を背負うことに なる。マイナスがダブルイメージが強い。 <変える意思決定はトップしかできない> ●これを解消するには、代表者がまずそのような変化を抵抗なく日常受け入れ る行動をしているかにかかっている。トップがしていないこと、トップが嫌 がっていることを、組織のメンバー、部門の管理職がするわけがない。代表者 がITに弱い、苦手な企業で、組織にITを普及活用させるには、相当な努力が必 要だ。まず、社長の名刺を縦書きから横書きに変えて、ご自分独自のメールア ドレスを名刺に記載する。いつまでも代表者のアドレスを、会社の代表アドレ スにしていてはいけない。まず、トップがそれを果敢に変える。 ●また、今後の方針に関して、幹部の多くが反対していても、それが将来に向 かい自社の未来を拓く可能性が高いことなら、果敢に決断することが必要だ。 海外進出、設備投資、組織変更、幹部採用、出店計画、商品開発、新規プロ ジェクト、などなど、一瞬たりとも足は止められない。その一瞬の停滞が大き な差をつけられる原因になる。分からないことも多いから、とにかく色々な人 に会って自分の抱えている課題認識や問題点を投げかける。答えを期待できな い人に投げてはいけない。それは愚痴を聞いてもらうだけになる。 ●同業者は、ゆめゆめ答えを期待してはいけない。まず本音で語ることは少な い。それより、自分よりもっと世間のことを知っている人、学識のある人、先 輩経営者、あるいは若い人で見識の高い人。そのようなネットワークを普段か ら心して作っておく。そして、ここ一番で悩んだら、そのようなネットワーク を活用する。そうなると、ほとんどは現状を果敢に改革するという意見、アド バイスが出てくる。そして、熟慮して自分が答えを出したら、一生懸命説明す る。そして最後は自分が未来に責任もって決断する。それが社長のミッション なのだ。そのための日ごろから準備を怠らない。