**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第544回配信分2014年09月29日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その42 〜自ら連続的に変わることが経営者の責務〜 **************************************************** <はじめに> ●時代が変わり、過去のパターンや経験、常識が通用せずに、戸惑っている比 較的年配の経営者の方が多い。昭和40年代後半に創業され、高度経済成長時代 を駆け抜けて、非常に立派な業績を残された。しかし、平成になり、バブルが はじけ、さらにリーマンショックが起こり、時代がどんどん変わる。ヒット商 品の賞味期限も非常に短い。あっという間に陳腐化し、どんどん新商品、新製 品、新しい得意先を開拓しないといけない。業績の浮き沈みも激しく、少し ゆっくりやっていると、急激に業績に陰りが起こる。ほっこりしている暇がな い。 ●しかし、急に感覚は変わらない。以前として付き合いは過去の人脈に限られ る。若い世代の経営者とは常識、言葉、感覚が合わないから、どうしても昔の 友人知人と付き合う。同世代なら心地よいから、あまりストレスは感じない。 しかし、確実に経営者の世代は後継者の世代に移っている。ITしかり、システ ムしかり、商品開発しかり、販売戦略しかり。どうも、最近では社長としての 座布団のすわり心地が悪い。会議をしても言葉が通じない。ストレスがたま り、いらいらすることも多い。経営感覚のズレを感じることが多くなった。 ●会社に行っても何をしたらいいのか、よく分からなくなった。現場に出て も、以前と空気、雰囲気がどうも違う。やっていることが、ぴんとこない。会 議では相変わらず、参加者から積極的な発言が出ない。社長が演説を始める と、みんな黙ってしまう。早く終わらないかと言う顔がありありと分かる。以 前はこんなことはなかった。終業後、居酒屋に飲みに誘っても、誰もついてこ ない。ますます、幹部社員との距離が遠くなったように感じられる。何かを変 えないといけないと思いながら、有効な手立てが見つからない。業績も徐々に 下降線をたどる。 <最近は居心地が悪いと感じる> ●過去の仕事の仕方を変えないといけないと思いながら、有効な方法が分から ない。見当たらない。どうも周囲の同年代の経営者も、同じような感想を漏ら す。さて、どうしたらいいのだろうか? 特に何をしなくても、会社の業務は 回っている。確かに、業績の浮き沈みはあるが、融資は金融機関に頼めば何と かなるだろう。いよいよとなれば、自分の資金を少し投入すればいい。何とか 凌いでいるうちに、また世間の景気が良くなるだろう。消費税が上がるのが心 配だが、まあ、今まで何とかやってこれた。 ●もう神風は吹かないだろうが、微風ぐらいは吹くだろう。そんな安易な気持 ちでやっている間に、実は会社の価値、体力、資金、エネルギーは徐々に徐々 に毀損する。徐々に毀損するから、意外と気が付かない。毎日、毎日顔を合わ せていると、意外と病変に気が付かないのと同じ。たまに会うと、その顔色の 悪さに気が付くのだが。周囲から厳しいことを言ってくれる師匠や、ナンバー ツーの幹部もいないから、裸の王様になってしまう。思い切って会社の体質を 変えないといけないが、どうも方法が分からない。 ●販売している商品も、最近では新商品が生まれない。過去に売れた商品で何 とかつないではいるが、このままでは数年先が心配だ。後継者の長男も、まだ どうもいまいち頼りない。しかし、いつかは事業承継しないといけないが、明 確に期限を設定できない。自分の連帯保証も、会長になったから外してくれる とは思えない。長男が社長になっても、おカネのことは当分手放せない。自分 の自宅も担保に入れているから、下手なことをしてくれると非常にリスクがあ る。いつまでも、堂々巡りで決断できない。 <自らが変わらない限り会社は変わらない> ●非常によくある事例だろうが、これは架空の企業のたとえ話。しかし、これ に似た光景は、随所に見ることができる。全部が該当しないが、かなりの部分 が当てはまる。このような現状を打破、打開するには、企業文化を変えるしか ない。その第一歩は、自らの生活習慣、行動様式を変えることが一番だ。自分 が毎日同じようにしている限り、会社も同じようにしかならない。自らが率先 して変化しない限り、会社は変わらない。幹部や長男、部下に変われ、変われ と言っていても、自分が変わらないと周囲は変わらない。 ●まずは生活習慣を変える。就寝時間を1時間早くして、起床時間を1時間早 くする。6時起床を5時起床に変える。その早まった1時間を、目先のことで はなくて将来を考えることの時間に充てる。あるいは、以前に読んで参考に なった書籍を再度ゆっくり読む時間に充てる。早朝の勉強会に参加する。決し てゴルフの練習時間に充ててはいけない。ずべて、自分の会社の将来を考える ために時間に100%使う決心をする。あるいは、今まで読んでいない経営雑誌 を年間購読して熟読する。とにかく自分から、まず変わる。 ●座禅もいいかもしれない。静かに自分を見つめる、自分を振り返る、自分の 足下を確認する時間に充てる。過去の会議の資料を読み返す。講演会で聞いた 資料を、もう一度読み返す。とにかく、現状を変えるヒントを探したり、きっ かけを自ら作らないといけない。同じ年代の友人より、12歳一回り若い経営者 と食事をする、飲みに誘う、歓談してみる。一回り違うと、価値観や生活習慣 も全然異なる。異質なものに触れないと、変わらない。今までと同じような価 値観の人と会話しても、刺激がない。 <異質なところに一歩踏み出す> ●以前に経営者の会合で親しくなった友人も、同じような悩みがあるだろう。 しかし、そういう人と飲みに行っても、同じということで安心して、慰められ るが、何もことは変わらない。それより、異業種、若手、外国人、女性、息子 さんと同年代の若い人、今まで疎遠で行かなかった会合など、精神的に多少は 窮屈だが、少なくとも何か異質なものがある可能性が高いところへ、一歩踏み 出す。会社の会議室と、社長室、現場をうろうろしても、同じ人、同じ従業員 だから、発言が変わらない。そういえば、最近中途の採用もしていないことに 気が付く。 ●新しい風を入れるには、今までと違う人材が入らないと変わらない。自らが 変わるのは、非常に労力、エネルギーが必要だ。そういうときには、窓を開け て外の新鮮な空気を積極的に入れる。冬は外の風も冷たいが、それを承知で寒 い風を入れる。新しい人材を投入するには、コストがかかる。リスクも高い が、敢えてその高いリスクにチャレンジしないと変わらない。気持ちが保守的 に、守りに入ると、どうしても安全な方法を採用する。危険があるかもしれな い未知の世界に足を踏み入れない。社長がそうなると、会社も圧倒的にそうな る。 ●大事なことは、変化するには時間がかかるということだ。早く変わらないと いけないのだろうが、企業、会社、組織と言うものは、一朝一夕にはそう簡単 に変わらない。だから、常時、いつも、変わろう、変わろうとしておかない と、ある日突然ダイナミックに変わることは難しい。激変緩和措置が必要とな る。昨日まで常識でやっていたことを、明日から全面否定すると混乱し、一層 業績の悪化に結びつく。社長業とは辛いもので、自ら連続的に変わらないとい けないのだ。それが嫌な人は、早く後継者にバトンタッチしたほうがいい。