**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第545回配信分2014年10月06日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その43 〜自分の感性を信用しアンケート等に頼らない〜 **************************************************** <はじめに> ●アンケートや市場調査というものは、小生はあまり信じない。おおよそ、そ のような傾向があるという認識を得るのは有難いが、それを金科玉条のように 盲目に信じることは滅多にしない。最後の最後は自分で決断するのだから、最 後の結論は自分が自信をもって決められる根拠を持たないといけない。所詮、 アンケートや市場調査の結果は一定のサンプルの代表値でしかない。大づかみ にする傾向はそれでいいが、特に中小企業が対象とする狭い、ニッチな市場の 特性は、そのような通り一遍の調査では分からない。 ●全く役に立たないというものではない。サンプルの数にもよるが、おおよそ の傾向はつかめる。だいたいの数字は把握できる。しかし、各論や詳細は現場 の正味の声を聴かないと分からない。だから、アンケートの結果や市場調査と 言うものを、ほとんど信じていない。調査した側はこの結果が正しいと言うだ ろう。確かに、数字的にはそれが正解かもしれないが、どうも感覚的にはぴん と来ないことが多い。本当にそうだろうか?サンプルの数がこれでそう言える のか。全体を代表した傾向なのか? ●それより中小企業は、狙う市場、マーケット、対象は狭いから、そのほんの 一部ということが多い。だから最大公約数的な結果より、最小公倍数的な対象 を考えたほうがいい。その市場を総取りできるわけもないのだから。二番手企 業の戦略は、これが多い。中小企業でもないが、マグドナルドに対抗するモス バーガーは、マグドナルドと少し異なる市場を狙っている。まともに、大きな 市場で白兵戦を戦うというバカな戦略ではない。少しずれたところで、多少は 少ないが一定の固い支持層のファンがいる。そこをしっかりグリップする。 <単なるアンケートはあまり信用しない> ●まず、アンケートだがどれくらい捲いて、どれくらいの回収率かが問題だ。 あるいは母数がこれくらいで、いつもこれくらいの回収だから信用できる、と いう基本的な数字が抑えられているか。逆に回収率は低くても、定性的な表 現、すなわちお客様の本当の意見が書かれているなら、これは逆に貴重だ。表 面的には母数と回収率と回収数に左右されるが、一番大事なのは少数だが真実 を語っている回答を発見することだ。これは目利きと同じで、少数の正しい意 見を吸い上げる眼力が要る。それが経営者にあるか? ●次に定性的な回答だが、これは好き勝手に書いてある。だから、本音もあれ ば建前もある。たまたまもあれば、恒常的な課題もある。一過性もあれば、定 常的なものもある。それをきちんと見分ける眼力があるか?無視してもいい意 見がどれで、無視できない意見がどれか?この区分けは難しい。だから、某企 業のようにすべての意見を等しく取り上げ、議論する。そして、代表者が決断 し、決済する。そこまでは、すべての意見に対して公平に扱う。色メガネで見 ない。先入観を排除し、すべて初心に帰って対応する。 ●代表者が何かのフィルターをかけて意見を判断するのが一番よくない。いっ たんは謙虚にどうしてそのような意見を書かれたのか、批判をされたのかを真 剣に考える。何も書いてあることが全部真実で、正しいとは限らない。しか し、お客様がそう感じたことは事実だ。某飲食業の代表者のように、毎日午前 中の仕事は前日のお客様からの意見、クレーム、批判などを丁寧に、丹念に読 むことから一日が始まるという。そして、すぐに即決即断で各店舗に指示を発 する。はずれもあるが、ほとんどが正解にたどり着く。 <自分で出かけて判断する> ●市場調査の聞き取り、ヒアリングで怖いのは、その調査に出向いた人の感 性、感覚、常識だ。これは外から見ていたのでは分からない。その人のバイア スがかかったヒアリング報告書になる。そのバイアスをどう判断するのか。A さんの報告書だから、Bさんの報告書だから、という一種の公平性を無視した 判断基準を持たないといけなくなる。AさんやBさんの経験、知識、スキル、能 力が公平かつ均質であれば問題ないが、そうはいかない。どうしてもばらつき がでる。その人のフィルターのかかった判断になる。 ●人間のすることだから、これは致し方ない。致し方ないが、その結果が致命 的なことにならないように、細心の注意を払う。もし、大きな決断のキーポイ ントなら、その材料で果たして正しいジャッジができるのか、よく吟味しない といけない。仮に、何らかの疑問点やもやもやした気分があって、どうしても 決断するに躊躇があるなら、自分自身で確かめることが大事だ。他人を信用し ないということではないが、ここ一番と言うときには自らが乗り出して現場に 出て肌感覚でジャッジする。それくらいの行動力がないといけない。 ●社長だから、トップだから、いつも奥座敷に座っていてはいけない。任して いいときと、任してはいるが最後は自分の感性を信じて判断しないといけない ときがある。そのために、常に日ごろから問題意識を持ち、自分自身の知識の 厚みを持ち、充電し、蓄積しておかないと、いざと言うときに役に立たない。 無駄に終わるかもしれないが、将来必ずどこかで役に立つと信じることだ。成 岡の書棚にも、以前に買って読んでいない書籍がたくさんある。しかし、無駄 な投資をしたとは思わない。その時点では必要だと思ったのだから。 <いつも自分で判断できる材料を> ●難しいのは、顧客が、見込み客が言ったことが全部その通りかと言うと、そ れは違う。例えば、ヒアリングに行って、色々と現在の製品、サービス、ソフ トなどに注文がいっぱいつけられる。それはそれで有難いご意見だが、それを どのように受け止めてどのように解釈してどのようにアクションを取るかは、 当方次第だ。以前の出版社のときの経験で言えば、新しい大型企画の市場調 査。見込み客の専門家に意見を聞くと、本当に好き勝手なことを言われる。ま して、いま考えている企画の内容を説明すると、ほとんど否定される。 ●まだ世の中にないものをこれから企画し、作ろうとしているのだが、人に よっては価値観が分からない場合もある。人によっては、そんなものがあれば 非常に素晴らしいという。コストや価格に対する回答も、ばらばらだ。金銭感 覚が人によって全く違うから、回答からの判断は非常に難しい。だいたいが、 ないものねだりの回答になる。だから、オファーした案に関しては、まず否定 的な見解が多い。しかし、それは市場の声を反映しているかというと、違う。 その発展した判断を誰が、どのようにできるか。ここが一番思案のしどころ だ。 ●勝手な見解を言わせてもらうと、衆知を集め、色々と行動し、ここが潮時を 感じたら、さっと自分自身で自信を持って判断することだ。他人に意見を求め るのはいいが、他人の判断に依存、依頼していはいけない。経営者たるもの、 最後の最後の責任はすべて自分だから、自分が自信と責任を持てない判断は不 可だ。ということは、未来に向かって分からないことを決めないといけない。 そのために必要なのは、日ごろの地道な研鑽だ。いつ、どんな球が飛んで来て も、行先の書いていないバスが来ても、決断できる感性を養うことだ。