**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第554回配信分2014年12月08日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その52 〜円安のリスクに備える〜 **************************************************** <はじめに> ●120円台を突破した為替レートは、どんどん円安が進行している。先日のア メリカの雇用統計の数字が、想定外によかったので、一層のドル高円安が進 み、あっという間に120円を突き抜けた。どこまで円安が進むのかは分からな いが、原油安、ドル高円安、株高という構図になっているという。我々の直接 のビジネスは円安であろうと、円高であろうと関係ないが、輸出輸入を営んで いる企業や、原材料を輸入に依存している企業では、それこそたまったもので はない。毎日が針のむしろだ。 ●自分自身がコントロールできる要素、要因なら、自社の努力で何とかしよう とする。しかし、この為替レートだけは、自分自身ではどうしようもない。ど こでこの為替レートが決まるのか、定かなことは知らないが、非常に消耗する 話しだ。自分のせいで結果が悪いなら納得もするが、こればかりは自分自身の 努力の範囲を超えている。手の届かない神の掌で、決まっているようなもの だ。しかし、これで業績が一喜一憂し、賞与もこの為替レートで決まるとなれ ば、結果が悪いと割り切れない。 ●日本はそもそも資源がない国だ。四方を海に囲まれ、資源を輸入して、それ を加工して、製品商品にして、海外に輸出して貿易立国で成り立っていると、 昔の社会科では教えていた。我々も、そのように理解していた。しかし、今の 実態は違う。原材料は輸入するが、工場は相当海外に移転した。移転したとい うより、新しい工場を海外に建設した。成岡が以前勤務していた化学繊維企業 の工場も、40年以上の操業を終了し、海外に移転した。息子の所属する企業で は、中国の天津、フィリッピンに工場を建設した。 <原燃料高の倒産が増えている> ●あっと驚くサプライズ金融緩和、異次元緩和で株高は一層進んだ。外国人投 資家が、日本株はこれからもまだ高くなると読んで、どんどん買い込んだ。実 態、実力以上の円安、株高だ。果たして恩恵を被るのは誰か。割を食って、貧 乏くじを引くのは誰か。どうも大企業の業績はどんどんよくなり、中小企業の 業績は次第に悪化しているというのが実感だ。この状況での円安は、原材料を 買って加工する中小企業には、非常に厳しい。原材料もさることながら、電気 代、ガス代が高くなる。 ●運送のコストが上がっていたが、最近の原油安で多少は一服感がある。一時 はどこまでガソリンが上がるのか、非常に恐ろしい状態だった。しかし、先日 のOPECの総会で減産をしないことが決定した。その結果、多少の燃料高は止 まった。しかし、運転手不足や過去の燃料高の影響で運賃コストは上がったま まだ。大幅な値上げを言ってきた運送会社もある。以前からは考えられない価 格だ。少々上がるなら目をつぶるが、これほどアップするとこれはもう頼めな い。よって、そこは切ることになる。 ●帝国データバンクさんの倒産情報を見ても、最近は円安原料高のコストアッ プでの運転資金繰りのつかない倒産が増えているという。規模が大きければ、 それだけ影響も大きいとは思うが、小さいと身動きできない。15人のサッカー なら1名退場しても試合はできるが、5人のバスケットで1名退場したら試合 にならない。それくらい、中小企業での原燃料のコストアップは大きい。それ を価格で吸収するのは至難の技という企業がほとんどだろう。今後のことを考 えると、コストダウンコストダウンで努力したが、それが正しいか。 <為替レートに振り回されない企業体質を作る> ●高付加価値なら高価格帯に舵を切る戦略も、間違いではない。小さくてこじ んまり行くなら、絶対に高付加価値でないと成り立たない。こじんまり汎用製 品を下請け的に製造していては、コストが合わない。OEMでクライアント先か らのコストダウンの要望に必死に応えて、何円、何銭を切って頑張っても、原 燃料がコストアップになると、あっという間にコスト削減したのが飛んでい く。それなら、いっそコスト競争のあまりできない価格帯の商品に特化したほ うがいい。言うのは簡単だが、これを社内的に切り替えるのは大変だ。 ●今日言って明日はできない。場合によっては数年かかる。今は黒字の事業で も、構造的な問題を抱えているなら、ばっさり切るべき場合もある。普通は黒 字事業部だから、収益を生んでいるから継続するのだろうが、将来の円安継続 を考えると、果たして現状のままの事業内容で正しいか。そういうことを真剣 に、必死に考えるのが経営者の責務だ。しかし、これは脳みそに汗をかくこと だ。脳みそに汗をかくには、相当訓練とトレーニングと周辺知識と環境整備 と、いろいろな要素が要る。すぐにできない。 ●何年も前から、為替レートのアップダウンに振り回されない体力、体質転換 を念じて、ひたひたとやってきた企業が、いま業績的に開花しているはずだ。 のんびり、風の赴くままに流れていた企業は、この円安ウィルスに相当侵され ている。この病原菌は相当強力だから、免疫力や抵抗力がないと、あっという 間に風邪を通り超えて肺炎になる。体力が弱っている人が肺炎にかかると、結 構深刻だ。特に高齢者で、そもそも傷んでいる企業では、肺炎にかかると死亡 に至るケースもある。他人事ではない。 <円安に強い企業体質に転換する> ●やれ日銀が悪いだの、誰がどうしたの、他人のせいにしていても始まらな い。要するに、円安に強い会社にしないといけないということだ。おそらく適 正なレートに収まるとは思うが、今の状況では分からない。選挙の結果次第で も、大きく動く可能性もある。一段の円安になることも考えられる。中東のき な臭いドンパチ戦争が拡大する可能性もある。イスラエルが何か派手なことを 起こすこともあり得る。北朝鮮では何が起こるか分からない。それくらい外部 環境は、変動要素が多い。いつ、何が起きてもおかしくない。 ●本当の為替レートは神のみぞ知るところだが、企業経営者は必至でその対策 を考えないといけない。ぼやっとしていたら、あっという間に置いていかれ る。置いてきぼりをくらう。そうならないように、毎日毎日を真剣に考え抜く ことだ。逆にリバウンドで急激に円高に振れることも、将来はあり得る。少々 の為替の変動で、びくともしない基礎体力をつける。高付加価値の製品商品を 作り続けていれば、少々逆風が吹いても傾かない。本来、円安、円高に一喜一 憂しない企業体質を作る。それが社長のミッションだ。 ●何をすればいいのか分からない経営者の方も多いだろう。それが真実であ り、現実だ。最後は誰も助けてくれない。金融機関も、取引先も、お客様も、 政府も、日銀も、いろいろとはやってはくれるが、最後の最後は自分の決断で あり、実行力だ。リーダーシップが必要だ。そのためには、為替レートの変動 ではびくともしない強い企業に変身する。そう覚悟を決めることだ。社長の覚 悟があやふやだと、最後の最後になって足下を救われる。まずは、自分自身に 気付くことだ。円安に強い企業体質に転換すると。