**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第557回配信分2014年12月29日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その55 〜外部環境の変化への対応はまずそれを認めることから始める〜 **************************************************** <はじめに> ●リーマンショックでどん底に落ち込んで、なんとか少しは立ち直ったかと思 えば、またまた東日本大震災で大きなダメージを受けた企業も多いはずだ。そ して、またしても何とか挽回しつつあるときに、超円高の影響をもろに受けて 失速。またまた、何とか業績を挽回したと思ったら、今度は逆に円安で原材料 が高騰。僅かに積み上げた利益も、原価がアップして粗利が減少し、ほとんど 利益が出なくなった。先週号で、代表者は愚痴を言わないと書いたが、こうま でマイナスの材料が続くと、心底いやになる。 ●やってもやってもなかなか利益が思うように出ない。これだけ努力し、苦労 し、汗をかき、時間を惜しんで仕事に精を出しているのに、ちっとも業績が芳 しくない。12月の賞与も、本当はもっと出したいのだが、この状況では先行き が不安で、あまり出せなかった。申し訳ないと思いつつ、これが現状では、 いっぱいいっぱいかと、自分で自分を慰めている。ことほど左様に、経営環境 は厳しく、ちっとも資金繰りも楽にはならない。もう年末で、本来は先週末で 終わりだが、この月曜日も会社に出て最後の頑張りをかけている。 ●来年こそは業績を少しでも良くしたいと思いつつも、さてどのようにすれば いいのかあまりよく分からない。何となく、何となく、時間はあっという間に 過ぎていき、気が付いたら03月末の年度末になっている。このような企業は、 製造業であれ、サービス業であれ、中小企業では非常に多いはずだ。選挙で自 民党が圧勝したが、その恩恵、余波が末端の中小企業に及ぶには、さらにさら に時間がかかる。いや、昔と違って、あまねく多くの中小企業に恩恵が及ぶこ とは、もうないかもしれない。そう思わないといけないのかもしれない。 <まずは変化をきちんと受け止める> ●確かに、昔に比較して環境の変化が激しいことも、ひとつの要因だ。激しい というか、変化の速度が速すぎる。昔は、経営環境の変化と言っても、少しは じわっと変わっていったものだ。それが、20年前の阪神大震災くらいから、ど んどん変化の速度が速くなったように感じるのは、成岡だけではないだろう。 20年前というと1994年、平成06年だからちょうどWindows95が世の中にリリー スされたときと一致する。あの頃から、どんどん世の中が変化を遂げるスピー ドが速くなった。新しいことも、あっという間に陳腐化する。 ●新製品の賞味期限が非常に短くなった。もちろん、いくつかのお化けのよう なロングセラーの商品もあるが、それはどちらかと言えば例外に属する。消費 者の選択肢が増えた、購買の方法も多様化した、少子高齢化がどんどん進ん だ、などいろいろな複雑な要因が重なって、原因を究明し対策を打とうとして も、よく原因が分からないうちに、次の波がどーんと押し寄せる。そして、 ビッグネームであった一流企業が、あっという間にその波に飲み込まれる。昨 日まで隆盛を誇っていた企業が、どんどん没落する。 ●綺羅星のごとく、優秀な社員がごまんといる一流企業ですらそうなのだか ら、失礼ながら中小企業が木の葉のごとく、揺すぶられるのは当然と言えば当 然だ。なので、変化に愚痴を言ったり、文句を言っていても仕方ない。まず は、その環境変化、消費者の嗜好の変化、得意先の変化などの変化をまずきち んと認識するところから始まる。いやいや、そのうちなんとかなるさ、と安直 に構えていては手遅れになることが多い。特に、少々お年を召した経営者の方 は、この変化を認めようとしない。 <変化の兆しに敏感になる> ●自分たちが起業し、成功してきた原体験が強いと余計に認めたくないし、認 めようとしない。同業者の集まりでも、そんな会話が横行し、ああ他社も同じ でそうなんだと妙に安心される方もある。やっぱりみんな苦戦しているんだ と、同業相憐れむみたいに、ほっと安心する。そうなると、変化や革新を起こ そうという気力が湧いてこない。このままでは、そのうち大変なことになる。 後継者の息子にバトンタッチするまでに、何とか業績を建て直し、借入金をせ めて半分にしたいと思っても、そうは簡単にいかない。 ●まず、外部で何が起こっているのか、どんな環境の変化が顕著なのか、今後 どのようになるのかを、真剣にいろいろと勉強し、偵察し、外部から情報を集 め、知恵者を集めて分析する。知恵者がいなければ、自分で考えるか、知恵者 を探さないといけいない。まず、外部で起こっていることはすべて事実だと認 めることだ。認めたくないと思っても、実際に数字が物語っているし、消費者 の行動は正しい。まず、いやかもしれないが、ぐっと我慢して、そのことが事 実だと認めることから始まる。これがないと次に行かない。 ●感覚ではなく客観的な事実や、数字のデータをきちんと集めることだ。勝手 に自分に都合のいいように解釈してはいけない。ときとして、社長や代表者の 方は、非常に手前勝手に自分に都合のいい数字だけに注目して、解釈される。 それは非常に危険だ。アラートが上がって、アラームの警報がなっているの に、無視する。まだ、ひとつのアラームのうちなら何とかなるが、二つも三つ も鳴り出すとこれは大変だ。症状と兆候が完全に出ているのに、大丈夫、大丈 夫とのんびり構えている。ことは急激に進んでいるのに。 <まずは自分自身に原因があると思う> ●異業種からの新規の参入もある。びっくりするような企業が、新しい事業領 域にどんどんと入ってくる。聞いたこともない企業が、全く新しいコンセプト で参入してくる。あるいは、合従連衡でライバル同士が一気に手を組む。中小 企業のいいところは、機敏に動けることだ。そのためには、外部で起こってい ることを、まず受け入れる。自分の都合のいいように解釈しない。まず、逆風 をきちんと認識する。そこから対抗措置は始まる。この入口を間違えると、と んでもないところに会社は行ってしまう。 ●意外と違う方向に球を打って、気が付かないことが多い。横から見ていると よく分かるが、当の自分ではなかなか分からない。アドレスが完全に右を向い ているのに、自分では気づかない。打ってみてから初めて分かるのは、非常に まずい。まずは、逆風の環境から逃げない。それが事実だときちんと認識す る。売上が徐々に徐々に低下しているのは、逆風が吹いているのだと認める。 他人が悪い、政治が悪い、従業員が悪い、最後は顧客が悪いという結論に落ち 着く。それが一番怖い。 ●世の中に起こっていることは、すべて必然のなせる業なのだ。人のせい、外 部のせい、為替のせい、天候のせい、従業員のせいなどと言っていると、こと の本質を見落とす。本当の原因は、実は外部環境ではなく、社内にある。それ を正直に認めようとしない、風土、文化、空気。トップが勝手に判断すれば、 それがまことしやかにまかり通る。違う意見を受け入れない。現実を都合のい い解釈で認めない。そうこうしているうちに、大きく企業体質は蝕まれる。そ こに気が付いてからでは、遅い。まずは自分の心の問題から片づける。