**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第558回配信分2015年01月05日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その56 〜機会あるごとに従業員にわかりやすいメッセージを発信する〜 **************************************************** <はじめに> ●今年は、ほとんどの企業がこの05日(月)から仕事が始まるはずだ。今年の カレンダーでは、どう考えてもこの05日の月曜日から年始の仕事が始まる日程 しか選択の余地がない。珍しいくらいにわかりやすかった。新年は会社によっ て、仕事始めの日程が異なるのが普通だが、今年は官公庁、民間共にこの05日 の月曜日からとなった。よって、全国的に故郷や実家からのリターンは04日の 日曜日に集中した。珍しいことだ。人によっては、04日は混雑がピークになる から、03日の夜に移動した方も多い。 ●経営トップが新年に年頭の所感を初日に挨拶されるのは、よくある光景だ。 今年は05日の初日に従業員を前にして、新年の挨拶と同時に、年頭所感や年頭 決意を述べられた方も多かっただろう。それくらい、日本人には新年の初日と いうのは、相当に大きな意味がある区切の日なのだ。最近では、官公庁の年度 に合わせて、04月からが新年度のはじめと考える企業も多い。その方が、何か と分かりやすく、自社の事業年度と国や都道府県の事業年度が一致するから だ。しかし、日本人は年頭となると、また違う感慨を持つものだ。 ●さて、年頭の所感となると意外とこれが難しい。成岡の母方の祖父も相当大 きな企業の代表を永年務めていたので、幼少のころよく正月に祖父が初出勤の ときに表明する年頭のあいさつを苦労して考えている姿を見ていた。小学生か ら中学生くらいの、多少は世の中のことが分かりかけていた年頃だったので、 結構大変なんだと妙に感心していたことを覚えている。聞いているほうは一瞬 だが、考えてしゃべるほうは何日も前から相当悩んでいる。ユニクロの柳井さ んのように全社員に長文のメールを発信される方もある。 <機会あるごとに話すのが仕事> ●代表者は機会あるごとに、トップからのメッセージを常に発信し続けないと いけない。代表者が何を感じているか、考えているか、それを従業員に伝える のが仕事だ。寡黙をよしとする企業文化もあるかもしれないが、それは反対。 特に中小企業では、代表者、トップのメッセージの効力、効果は非常に大き い。何もないときに、いきなり集めて話すのは何となくおかしいから、正月明 けの初日、年度初め、決算の終了後、月初の会議など、機会は考えれば山ほど ある。毎回、毎回同じでもいい。繰り返し同じことを言うことに意味がある。 ●都度都度、真新しい珍しいことを言おうと思うと、くたびれる。重荷に感じ る。ゆっくりでもいい、朴訥でもいいから、同じことを多少は表現を変えて繰 り返し、繰り返し、表明する。そのうちに、従業員は、そうか、親父は本気 だ、と感じるはずだ。毎回、毎回、目新しいことを表明するより、表現は異な れど、大事なことを繰り返し、繰り返し表明することだ。終始一貫しているこ とが大事だ。奇をてらうより、朴訥に徹底する。徹底するからこそ、日常の行 動に身に付く。違うことを言うより、終始一貫しているほうがいい。 ●いつも、機会あるごとに何をどのように言おうか、言おうか、と考え続け る。それが仕事だと思えばいい。それで報酬の半分をもらっているのだと、割 り切ればいい。そう思えば、たった10分くらいの意思表明に、数十時間をかけ て準備をするはずだ。直前になって、さあどうしようかと考えだすのは、遅き に失している。それくらい、トップの意思表明にはエネルギーをかける。そう いつも、いつも、しょっちゅうあるわけではないので、なるべく機会を逃さな い。短い時間に言葉を凝縮し、詰まった表現に工夫を凝らす。 <分かりやすくシンプルに> ●流暢に話す必要はない。流暢にやろうと思うと、かえって力んでうまくいか ない。スポーツと同じだが、力を入れればボールは飛ぶかといえば、そんなこ とはない。力はインパクトの一瞬に力が入ればいい。しかし、そんなプロみた いなことは、なかなかできない。できなければ、少しでも近づくように努力を すればいい。その努力の跡が分かればいい。そして、話しが終わってから、数 名に聞いてみる。どうや、中味は分かりやすかったかと。そこで本音を言って くれる正直な従業員が大事だ。おべんちゃらを言ってくれても仕方ない。 ●年間に数回あるかないかの、貴重な機会を逃さない。4回とすれば3か月に 1回くらいの頻度だ。3か月と言えば四半期。四半期ごとに会社の業績を振り 返り、計画対比、昨年対比で経営のレビュー、振り返りを行い、今後の方向を 表明する。そのための努力の方向を提示する。世間の環境変化で感じているこ とを表現する。思い付きより、ずっと考えていたことを凝縮して短い、分かり やすいフレーズで表現する。結構慣れないと難しいかもしれないが、それが自 分の仕事だと割り切る。逃げるより、ぶつかるほうがすっきりする。 ●どうせ立場上逃れられないのだから、まともにチャレンジするほうがいい。 特に、後継者が社内にいらっしゃる場合は、必ず代表者の発言、表現、行動は 見ているはずだ。行動で承継のポイントを示せる絶好のチャンスだと、割り切 ればいい。なるべく簡単に、短いフレーズで凝縮したキーワードで示すこと だ。できれば、キャッチフレーズやスローガンで示せるといい。その方が、難 しい理屈をこねまわすより、よほど従業員の心や頭の中にすっと入る。語呂合 わせあり、数字あり、イメージ優先だ。それも、日ごろから考えておかないと 出てこない。 <トップの言葉は最大の経営資源> ●立ったままの朝礼的な年頭所感なら、せいだい10分が限度だ。10分と言うと 長いようだが、前座が長いと結構短い。前座の入りは短い方がいい。だいた い、人の話しを黙って聞くのは非常に辛いものだ。そういう発想から入ると、 短くするのが最大の効果がある。短く、かつ、分かりやすく。難しいようだ が、それがトップの務めと割り切る。言葉で従業員を引っ張って、リーダー シップを発揮できるようになれば、これは本物に近づいている。政治家はでき もしない嘘を平気で言えば選挙は通るが、経営者はそうはいかない。 ●折角の機会を逃さない。今までやっていないなら、ぜひ初めてでもいいか ら、やってみるべき。チャンスはまた巡ってくるのに、時間がかかる。準備す れば可能だ。分かりやすいスローガン、数字が入りイメージしやすいフレー ズ。これはそう簡単には思いつかない。ずっと、ずっと考えて、考えて、やっ とその境地にたどりつく。それくらい、トップの発言は重たい。重たいなら、 とことん考えて最大限利用、活用するべきだ。黙っていいのは、昔のビールの 広告の「男は黙って・・・ビール」という有名なキャッチだけでいい。 ●従業員の立場になってみると、年頭に社長が元気のいい挨拶をした。いや、 してくれた。それだけで元気になる。ただでさえ、中小企業の景況感は不安定 だ。売上がいい月度もあれば、理由が分からずに落ち込む月度もある。賞与も 多くは出せなかった。そんな企業に勤めている従業員は、不安を抱えている。 そういうときにトップが年頭に元気の出る、勇気がある、希望の持てる、夢が 抱ける年頭の挨拶をしてくれただけでも、この企業で頑張ろうと思うものだ。 難しく考えなくていい。言葉は最大の経営資源だ。機会を逃さない。