**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第560回配信分2015年01月19日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その58 〜1万時間集中して経営をしてプロを目指す〜 **************************************************** <はじめに> ●マイクロソフトのビル・ゲイツさんの言葉だそうだが、どんな人でもあるこ とを真剣に1万時間練習すればプロになれるそうだ。1万時間とはどれくらい かと考えると、1日に3時間毎日練習して、1年は365日あるから年間で約 1000時間。これを10年続ければいいということに、計算上なる。ただし、条件 は「真剣に」「毎日継続して」という注釈が付く。例えば、バイオリンの練習 を5歳から初めて毎日真剣に3時間集中してやって、それを10年間続けると15 歳くらいで国際コンクールで入賞するレベルになるということだ。 ●確かに、音楽でも芸術でもスポーツでも、当たっているように思える。た だ、問題は「真剣に」「毎日継続して」という点だろう。しかし、これは本人 の自覚次第だ。集中しているか、そこが問題だ。今では笑い話になるが、成岡 も小学校の5年生くらいのときに、ある楽器をしばらく習ったことがある。し かし、幾分強制的にやらされたので、ちっとも上達しなかったし、練習やレッ スンが嫌で嫌で仕方なかった。だから、全然上達しなかった。スポーツ系、ア ウトドアのほうが向いていた。 ●自分で選んで、自分で進んで自らやろうと決めたことと、周囲から半ば強制 的に決められたこととでは、入り口からして本人のモチベーションが全く異な る。誰でも分かる理屈だが、これが経営や会社の仕事、業務になると、意外と この単純な理屈がどこかに飛んでしまう。分かっているけど、現実はその通り 進まない。本人の強い思い入れがないと、「真剣に」「毎日継続して」1万時 間は難しい。ほとんどの場合、途中で投げ出したり、挫折したりする。一度そ うなると、復活は難しい。かくて、ほとんどの人はプロになれない。 <本当に経営をしている時間は少ない> ●会社の経営者の方は、毎日経営を最低8時間くらい、連続して継続して10年 間どころではなく、30年間くらいされている。しかし、どうもうまく会社を経 営できない場合も多い。周囲の環境の変化と言う難問があるからだろうが、 「真剣に」「毎日継続して」「集中して」やっていないのだろうか?いや、そ んなことはないはずだが。やればできるはずだ。しかし、なぜか結果がついて こない。色々と原因を考えても思い当たる節はない。どうして自分のところだ けが、うまくいかないのだろうか? ●成岡の感覚では、経営をされていない。中小企業のトップの経営者の方は、 経営以外にやることが非常に多い。大企業や中堅企業の経営者の方になると、 周囲に優秀な社員やスタッフがいて、色々と雑事や段取りをしてくれる。しか し、人数が限られる中小企業ではそんな贅沢な環境で社長は仕事をしていな い。色々と起こる雑事、作業的な仕事、どこかに出す面倒な書類を自分で作成 したりする。職安に提出する求人票まで、自分で書かないといけない。かく て、本当に経営に集中している時間は少ない。 ●ある週は、ずっと朝から晩まで作業的な仕事をせざるを得ない場合もある。 一作業員的な感じで、早朝から現場で汗をかく。自分しかできない作業や仕事 があると、どうしてもそうなる。時間の経つのは早く、そういう場合はあっと いう間にお昼になる。非常に気分は爽快で、何やら大きな仕事をしたような錯 覚にとらわれる。汗をかくと気持ちがいい。夕方に終ると、自宅に帰って一風 呂浴びて、ビールなど飲んでいると最高の気分になる。しかし、それは経営で はない。だが、本人は至極満足している。 <自分しかできない仕事があると錯覚する> ●自分しか担当できない得意先をかかえている社長も多い。あそこは社長の専 属の得意先だということで、誰も引き継がない。引き継いで何かあったら、何 を言われるか分からないので、みんな手を出さない。かくて、60歳過ぎても社 長担当の得意先がある。先方の企業は40歳代の若手社長にバトンタッチしてい るのに、当方はいまだ60歳を超えた社長が担当している。それでも、結構楽し くやっているので、誰も猫の首に鈴をつけに行かない。いやなことは、なるべ く言うのは避けたい。 ●かくて、社長が社長業をあまりしないまま10年間くらい経過する。毎日8時 間以上会社にいるが、本当に社長としての重要な業務をしている時間は、では どれくらいあるのか。意外とほとんど会社では社長業はしていないケースも多 い。社長の本当にしないといけない仕事とは何か?それは会社の今後の方向付 けをすること。これから、どのような事業領域に自社のビジネスは踏み出すの か?そのために、これから何をしないといけないのか?どんな準備が必要なの か?欠けているものはなにか? ●それを真剣に考え、必死になって準備し、段取りし、環境を整え、おカネ、 人材、情報、設備などを調達する。そのために外部と交渉する。そして、ゲッ トした資源を適正に割り振り、新しいことは自分が先頭に立って結果を出す。 一定の方向性が見えたら、徐々に徐々に手を引く。そして、すぐ次の課題に取 り組む。決して現場で作業服を着て、汗を流すことが社長のミッションではな い。しかし、大半の経営者の方は、ご自分で可能なことは自分でする。それ が、あまりいいことではないという自覚がない。一生懸命やっていると錯覚す る。 <やるべきことを粛々とやる> ●1日3時間10年間やれば経営のプロになれるなら、多くのトップの方が経営 のプロになっているだろう。しかし、現実はそうではない。いかに、重要なこ とに集中していないかわかる。成岡流手帳仕事術のように、翌日の朝一番に必 ず前日にやったことを時系列的に手帳に記述する。いかに、無駄な時間が多 く、ロスが多いことか。改めて愕然となることが多い。それでも30年以上毎 日、毎日前日のやったことを手帳に記述することを続けると、毎日反省してい ることになる。そうなると、やはり毎日が非常にスリムな活動になる。 ●いっとき、会社を立ち上げてそんなに多忙ではない時代は、午前中に全部雑 事をすることにしていた。午後からは、なるべく外に出たり、色々な会議に出 たり、人に会ったり、勉強に行ったり、未来のために時間を使うようにした。 夜は、可能な限り色々な会合に参加し、また自分で主催して多くの勉強会を運 営した。午後からは、ずっと経営の勉強をしているのだと、自分に言い聞かせ ていた。自分自身が、そのことを自覚しない限り、集中することにはならない と考えた。そこから、だいぶ見えるものが変わってきた。 ●1日3時間10年間そのことをやり続けるだけの覚悟が要る。適当に考えた ら、結果も適当になる。妥協すれば、とことん妥協してしまう。まあ、今日は いいか、となる。一度そうなると、なかなか元のギアに戻らない。年齢を経 て、経験を積んで、段々ギアが高速ギアになるようにしないといけないが、な かなかそうはならない。要するに、自分自身がまず思い込んで、「真剣に」 「毎日継続して」「集中して」やれば、出来ることなのだ。自分に甘えるのが 一番いけない。経営者は経営者としてやるべきことを粛々とすることだ。