**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第561回配信分2015年01月26日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その59 〜常に会社を取り巻く環境に神経をとがらす〜 **************************************************** <はじめに> ●先週は本当に多くの経営者の方々にお目にかかる機会が、たまたま偶然だが たくさんあった。公的機関の講演、研修会、調査事業など毎日毎日多くの経営 者の方とお目にかかる機会があって、大変当方も勉強になった。老舗で永く経 営をされてきた70歳代の経営者の方。そのような企業の経営を事業承継した40 代の若手経営者の方。家業に近い規模だが地域にしっかり根を下ろして兄弟で 頑張っている若手の経営者の方。また、昨年秋に友人知人とベンチャー企業を 立ち上げた新進気鋭の経営者の方。 ●どの経営者の方々も立派で、熱心で、やる気満々で、非常に元気をいただい た。その共通して言えることは、常に環境の変化に敏感で、これから3年後、 5年後のことを一生懸命考えて、考えていらっしゃる。メンバーと喧々諤々毎 日、毎日議論したり、金融機関や出資者とのディスカッションを活発に行った り、将来の方向をどうすべきか、毎日毎日真剣に、かつ深く検討されている。 今の時代は少しほっとすると、環境の変化速度が速いから、あっという間に置 いて行かれる。それを必死にカバーしようと努力している。 ●20年くらい前なら、少々出遅れてもすぐに挽回できた。世の中が右肩上がり だったから、多少の出遅れは挽回、カバーできた。少々の修正は待ったが効い た。しかし、今はいったん出遅れると非常に挽回が難しい。かつ、また、世の 中の変化のスピードが速い。この技術は特許があるから、当面大丈夫とたかを くくっていたら、あっという間に陳腐化して、技術やビジネスモデルの賞味期 限が非常に短い。なので、常にブラッシュアップして、更新して更新して、よ うやく何とか遅れを取らない様にしているのが、いっぱいいっぱいだ。 <過去の成功体験が邪魔になる> ●新興株式市場に上場したからといって、あぐらをかいていたらとんでもない ことになる。一昔前は上場がひとつのゴールだった。ゲームの「あがり」だっ た。しかし、現代は飛んでもないことだ。一瞬気を抜くと、非常にリスクが高 い。危険因子が充満している。そんな環境で、これからも順調に成長を遂げよ うと思うと、これは並大抵のことではない。しかし、上場はひとつの通過点で もあり、ぜひとも達成したい階段だ。そんな気持ちで一生懸命取り組んでい らっしゃる技術集団のベンチャー企業の経営者にもお目にかかった。 ●また以前に上場出来て、いま順調に業績が伸びている企業の代表者の方で も、今後のビジネスモデルが現在ではうまくいかないだろうと、未来に向けて 色々と対策を練っておられた。あまり長い時間おつきあいしていないにも関わ らず、自社の今後の方向に関して、非常に明快に方向付けをおっしゃっていた だいた。これくらい、きちんと方向が見えていると、社員、従業員や周囲のス タッフが安心して、モチベーション高く目標に向かって走ることができるだろ う。そんな感じを強くした。 ●翻って、現在業績が停滞している企業の経営者の方々の特徴は、過去の成功 体験が同じように現在も通用すると錯覚していることだ。環境が激変している ことも、あまり良くご存じない。今までと同じような環境で過ごしているか ら、世間の風の向き、強さが分からない。分からなくてもいいのだと、半ば開 き直っている場合もある。どうせ中小企業は大規模ではないから、なみなみ 細々と続けておけばいい、そう決め込んでいる年配の経営者の方もいらっしゃ る。やはり、過去の成功体験の呪縛からは、なかなか解放されない。 <地道な変化を継続できる環境を作る> ●飲食業であれ、サービス業であれ、製造業であれ、加工業であれ、業種に関 係なくこれから成長していくためには、この激しく動く環境変化に敏感にな り、細心の注意を払っておかないといけない。会社のデスクと会議室からは、 なかなかこの激変の環境変化を感じ取ることは難しい。よって、可能な限り社 外に出て、異質な人と会い、異質な体験をし、従来と違う価値観を持った人と の会話や体験をしてこないといけない。そこまでやるか、と相手が感心してく くれるくらい動いて、ちょうどまだ足りないくらいだ。ちょっとやそっとで満 足は禁物だ。 ●あまり深刻に考えると足が一歩出ないから、とにかく前向きに積極的に活動 するマインドを持つことだ。迷ったら行動してみる。迷ったら会いに行く。 迷ったら訪問する。食べてみる。体験してみる。出かけてみる。しゃべってみ る。読んでみる。聴いてみる。とにかく、現状を打破したり、変えたりするに は、自分自身が積極的に行動するしかない。それも全部が全部成功するはずも ない。しかし、最近は非常に小さな確率でも、トライしてみる、行ってみる、 会ってみる、それが重要だと気が付いた。 ●特に、初めてとか、めったに会わない人と会う機会があれば、決して見逃さ ない。もしかしたら空振りかもしれないと思っても、打率2割でもいいから、 5回に1回はOKになるから、残り4回は無駄ではない。大発明者や偉大な過去 の経営者のように、成功するまで粘り強くやっていれば、1万時間を目指して 毎日毎日3時間続ければ、10年でプロの入口に立てるくらいの習熟度になるだ ろう。あとは、いかに継続する、できる環境を自らが構築でき、実際に行動に 移せるか?それが最も問題になる。 <自らを変えるために自らが動く> ●最近、大口の仕事先の2年くらいのプロジェクトがいったん区切りがつい て、少し時間が作れるようになった。毎月1回日曜日がつぶれていた案件がな くなった。かくて、多少の余裕ができて、人に会いに行ったり、会食をした り、長い距離の移動も可能になった。そうなると、以前は参加できなかった会 合に出席できることになったり、行けなかった場所にも行くことが可能になっ た。もう少し時間がまとまれば、数日の海外旅行も可能だ。やはり、何かが変 わらないと環境も変わらない。オフィスの移転も敢えてしているのは、そのた めだ。 ●同じ環境、同じメンバーでやっていると、どうしても考えが保守的になり、 マンネリになる。議論も堂々巡りで革新的な意見が出てこない。自ら変える、 変えるといってもなかなか難しい。かくて、5年に1回はオフィスを強制的に 移転している。以前在籍していた企業では、何回も大きな事務所の移転責任者 を担当した。移転に関してはプロ級のキャリアだと自負している。これで身を 立てるのは難しいが、環境を強制的に変える一番いい方法だ。ずっと同じとこ ろでやっていると大胆な革新的なマインドにならない。 ●最近ベンチャー企業を立ち上げた経営者の方と面談していると、いかに社会 の、世間の、業界の、市場の動向にぴりぴりしているか、よく分かる。競争相 手も激しく動いている。ぼけっとしていると、あっという間に置いていかれ る。そういう激しい競争関係に身を置く企業と、永年同じことをのんびりやっ ている企業とは、最後は相手にならない。やはり、これは詰まることろ、経営 者のマインドの問題と感じる。経営者のマインドが変わらない限り、自らが限 界を決めている。そうなると、会社は変わらない。自らが限界を突破しないと いけない。