**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第562回配信分2015年02月02日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その60 〜大事なことは何度も繰り返し繰り返し伝達する〜 **************************************************** <はじめに> ●創業のときは数名の仲間でスタートしても、数年経過するといつの間にか10 名から20名くらいの組織になっている企業が多い。3年経過して順調にやって いければ成功の部類に入るが、人数が多くなるといろいろと人的なマネジメン トで難しい場面や局面が起こってくる。最初は子細なことでも、人数が少ない とすぐにコミュニケーションが取れるし、何より毎日顔を合わせて会話ができ る。ところが、人数が増えたり、業務が複雑になったり、場所が別にできたり すると、途端に意思疎通が難しくなる。なぜだろうと思うが、それが真実だ。 ●20名くらいまでは全員の顔と名前は一致するし、誰が、どこで何をしている かも完全に掌握できる。それこそ、家族のこともおおよそ分かっているし、入 社した経過も全員が共有している。俗に言う、箸の上げ下げまでわかってい る。ところが50名くらいになると目が行き届かなくなる。全員公平にマネジメ ントすることが難しい。しかし、まだ何とか1か所に集まっている。まだ、コ ミュニケーションは取ることはできる。会議も50名くらいまでなら、何とか一 堂に会して開催は可能だろう。しかし、50名を超えると途端に難しくなる。 ●昔の学校の1クラスが50名だった。成岡の中学から高校時代、昭和で言えば 40年代はほとんど50名学級だった。担任の先生は1名でなんとか全員をカバー 出来る最大の人数だった。企業で50名を超えると、フロアーが分かれたり、支 店が別の場所にできたり、工場が隣接の土地に建ったり、研究開発部門が別の 場所にできたり、いろいろと別れざるを得なくなる。そうなると、今まで一緒 にやってきたのが、途端にコミュニケーションが取りずらくなり、会話の頻度 が急激に落ちる。そうなると、何かが起こる。 <人数が多くなるとベクトルを合わすのが難しい> ●一番よくあるのは、意思疎通がうまくいかない。従来なら、10分で済んだ話 し、案件の検討が、まるまる1日かかることもある。あそこから誰それを呼ん で、ここからは誰が会議に出て、社長の都合は・・・・・、などとやっている うちに、あっという間に時間が経過する。ようやく、メンバーが揃ったのは、 深夜に近い夜の10時ということもざらではない。そうなると、途端に仕事のス ピード感が落ちる。意思決定は遅れる。お客様に対応するアクションが後手に 回る。今までなら、半日で済んだことが2日は十分かかる。非常に危うい。 ●しかし、会社が成長するためには、絶対に通過しないといけない通過点なの だ。20名の段階をまず、どうするか。次に50名前後になってきた段階をどうす るか。なってから考えていたのでは後手後手に回り、対応は遅れ、開発は進ま ず、クレームの処理は滞り、会議の回数だけが増えていく。大企業病と言えば それまでだが、これが現実の姿だろう。ここをうまく切り抜けて、突破し、次 の階段に上がれる企業がどれくらいあるか。創業後3年くらい経過し、事業が 順調に成長すると、必ずこの壁に当たる。 ●ここをどう切り抜けるか。まずは、コミュニケーションをどう円滑に図るか だ。経営の基本はいろいろあるだろうが、何と言っても人間の集まりが会社だ から、お互いの意思疎通を図らないといけない。トップ、代表者が考えている こと、今後の方針などを全員がきちんと理解し、俗に言うベクトルを合わさな いといけない。それが少数なら簡単だが、人数が多くなると途端に難しくな る。創業のメンバー数名なら可能だが、10人になり、20人になり、50人になる と一応組織らしい組織になる。伝言ゲームが始まる。 <いつも準備をしていること> ●よく言う伝言ゲームになると、だいたい隣の人に伝達すると密度が70%くら いになるという。つまり3割くらいは抜け落ちる。肝心なことがきちんと伝わ ればいいが、肝心なことが3割抜けると大変だ。これがさらに隣の人に伝達さ れると、70%の70%だから、一挙に半分くらいにトーンダウンする。それくら いだと思っていた方がいい。つまり、口頭でいろいろなことを伝達するには、 こういう障害が発生することを予め考えておかないといけない。そこで大事な ことは代表者のコミュニケーション能力なのだ。 ●書いたもの、文字、図や表、グラフ、画像、なんでもいいが、とにかく言葉 だけでメンバーのモチベーションを上げ、ベクトルを合わすのは非常に難し い。講演や大学での講義を本業にしている我々でも、30分の講演すら非常に頭 をひねって準備がいる。即興でやることなど、到底不可能だ。政治家はその場 でもいろいろと討論ができる人が多いが、そういう能力は特殊だろう。だか ら、組織の代表者は常に多くのメンバーの方に、どのように自分の気持ち、意 図、考えを伝えればいいか、常に頭を悩まし続けないといけない。 ●逆にそれが仕事だと割り切ればいい。話すのが苦手な方もいらっしゃると思 うが、上手、下手は関係ない。上手でなければうまくないなりに、一生懸命 やっていれば聞いている方は分かる。それより、きちんと準備をして、話すこ とをまとめ、箇条書きにして、順番はこれでいいか考えて、表現ももっとわか りやすいことはないか、いろいろと思考をめぐらす。そういう準備をきちんと していると大丈夫だ。聴いている社員、従業員もいろいろな経歴、年齢、学歴 の方がいるから、全員が同じではない。 <繰り返し同じことを言うと本気度が伝わる> ●いろいろな会議でも、検討会でも、発表会でも、どんな場面でも常にわかり やすく、分かりやすくが原則だ。自分の一方的なもの言いで終わらない。難し いことを難しく言わない。なるべく簡単な言葉で表現する。できる限り、多く の人に分かってもらえるような表現を使う。最近有名になっている池上彰さん は、NHK時代子供番組で大人の世界のことを子供に伝える仕事をしていた。難 しいことを子供に分かりやすく伝えるのは非常に技術が要る。だから、いまマ スコミで引っ張りだこになっている。あれが、プロの技なのだ。 ●そこまでいかなくてもいいから、とにかく会社の方針や今後のビジョン、当 面の課題やクリアーするべきテーマなどを一生懸命伝達する。それも、1回 やっただけではなかなか理解ができないから、何度も何度も繰り返し表現を少 し変えて、同じことを伝える。当方は1回やったら覚えているだろうと思う が、決してそんなことはない。耳から耳へ、そのまま抜けていくと思えばい い。管理職に伝達したら、部下に伝わるとあまり信じないほうがいい。末端で 確認してみると、想像以上に伝わっていない。 ●つまり重要なことは繰り返し、繰り返し話すことだ。目先の仕事のこともさ ることながら、経営者は、組織のトップは少し先の企業の、組織のあるべき 姿、こうありたい姿をいつも繰り返し伝える。あ、また、同じことを言ってい ると思われるだろうが、逆にいつも同じことを言うべきだ。聴いているほう は、何度も同じフレーズを聞くと、トップの本気度が伝わる。思い付きで言っ ていないことが分かる。トップの本気度を感じると、組織は動くものだ。言葉 だけでなく、行動にも本気度を感じると、理解は早まる。トップの日ごろのコ ミュニケーション能力を磨くことがいかに大事かだ。