**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第563回配信分2015年02月09日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その61 〜現場で起こっている真実をきちんと把握する〜 **************************************************** <はじめに> ●先日、某サービス業の現場で遭遇した出来事。初めてその現場に行って見 て、現場の仕事ぶりを拝見して、いつも社長や役員の方から聞いていた現場の 状況と相当異なることを目の当たりにした。成岡がその現場に行ったことは、 ほとんどの現場の方はあまり気にしていなかった。普通のお客さんに近い扱い で、それはそれでよかったのだが、従業員、社員の方は普通の振る舞いだっ た。あまり気を遣っていただくことは遠慮なので、普通にしていただいたほう が有難いのだが。 ●接客も扱いもこれが普通かと少々驚いた。以前にお邪魔したときは、社長や 役員の方と一緒だったので、従業員の方も意識していた。今回は、成岡とその お友達だったので、あまり従業員の方もそんなに意識していなかった。それは それでよかったのだが、普通の通常の仕事ぶりが垣間見えた。やはり、なかな か接客も、扱いも、マニュアル通りには浸透していない。ばらばらだし、セッ ティングもいただけないし、説明も不十分だし、何よりサービス業の基本動作 ができていない。 ●以前に、同じサービス業の別の企業の社長に聞いたことがあるが、社長の知 り合いが食事をされて社長が印象や感想を聞いた時に、非常においしかった、 素晴らしかったとのコメントだったと。だから、うちのサービス、味は一流だ と胸を張って答えてくれたことを思い出した。誰が社長の紹介で食事をして、 その味や接客を批判がましい印象や感想を言うだろうか。ほとんどお愛想であ り、おべんちゃらだと割り引いて聞いておかないといけない。それを聞いたと きに、ああ、坊ちゃんだなとため息が出た。 <1通の投書の裏に100倍の人がいる> ●サービス業でよくやるアンケートも、成岡はほとんど信用していない。誰が クレーム的なコメントを、面倒くさいアンケートにわざわざ書くだろうか。も し、クレーム的な内容がアンケートに書かれていたら、それは相当頭にきたか らだ。非常に厳しい指摘だと真摯に受け止めないといけない。まだ、書いても らっただけでも、有難いと思わないといけない。某大手の居酒屋チェーン企業 のように、業態が数種類あり、全部の店舗が数百軒あるという大企業なら、ど うしてもアンケートに頼らざるを得ないかもしれない。 ●しかし、今回は数軒のお店の企業。そのうちの1軒での出来事だ。アンケー トが云々と言うことではないはずだ。現場の従業員の数も40名前後。全部の店 舗を掌握するのに、そんなに膨大なエネルギーがかかると思えない。なのに、 現場で起こっていることがきちんと把握できていない。毎日が適当に流れてい ると、それをどこかで流れを変えることは難しい。水は高きから低きに流れ、 人は困難から安直に移行する。どうしてもそうなるのは、自然の摂理だ。それ を何とか修正、変更、改革するのは非常にしんどい。 ●アンケートや投書にクレーム的な内容があったら、その裏に100倍の同じ意 見があると思えとは、以前に出版社に在籍していたときに、地元新聞の論説委 員をされていた方から聞いた教訓だ。サイレントマジョリティという、黙って もの言わぬクレーマーが、実は信じられないくらい多く存在する。1件の投書 の裏に100倍の同じ意見があるという。たかだか、これくらいの数だと見くび ると、とんでもないことが起こりかねない。それくらい謙虚に、文句、クレー ムには謙虚に応対しないといけない。 <現場で起こったことをすぐに把握する> ●アンケートに頼るのは現場を掌握していないからだ。現場を熟知している と、アンケートなどは関係ない。自分の目で見て、確かめて、お客様からじか に直接教えてもらう。社長がいちいち現場に出て行って、お客様に聞くことは 難しいだろうから、どうやってなまの声を集めることができるか。毎日、毎 日、そのことに心を砕く。どうすれば、現場のなまの声がトップにストレート に届くようにできるのか。それを間髪入れず、毎日毎日把握する方法はない か。とにかく市場の、消費者の、お客様の、なまの声をそのまま集める努力を する。 ●コールセンターにかかってくるお客様の声は、宝の山だ。商品改良の宝庫 だ。クレームや文句は、その企業に対する激励だと思えばいい。もうその企業 の商品を買わないと決めたら、文句を言う気にもならない。言ってきてくれる のは、有難いことだ。クレームを大事にして、丁寧に対応して、すぐに改善す れば、そのお客様は逆にファンになる可能性が高い。それは早くやらないとい けない。気が付けば、早くやる。これがクレーム対応の鉄則だ。犯人探しに時 間をかけて、もたもたしていてはいけない。 ●現場で起こっていることを、いかにきちんと把握するか。正直ベースで従業 員の多くの人が、毎日毎日現場で起こったマイナスの気づきを正直に上のポジ ションの人間に報告することは非常に勇気の要ることだ。そのことが、その店 舗、お店、企業で褒められることでないといけない。起こったことは仕方ない が、それでお客様からどういわれたのか、何が起こったのか、どうしてそう なったのか。当事者が悪かったで済ませていてはいけない。当人のスキル、レ ベルに原因を求めると、またぞろ同じことが起こる。問題は、その真因だ。 <変えるべきところは断固実行する勇気を持つ> ●どうして教育が行き届かなかったのか。新人アルバイトさんの教育が不十分 な原因はどこにあるのか。不慣れな初心者を現場の第一線に即日から送らない といけない人手不足を放置せざるを得ない現場の事情。その根本の原因を正さ ないと、もぐら叩きの対策に終始する。熱が冷めた頃に、また同じことが起こ る。一度ならずも二度、三度となると、これはもう深刻な病気以外の何物でも ない。現場の管理監督者が悪いと、他人のせいにしている限り、その企業、そ のお店のクレームは絶対になくならない。 ●トップがすべては自分の責任だと思えるか。自分が現場の把握が足りなかっ た。不足していた。現場の課題がスムースに、ストレートに上がる仕組みが出 来ていなかった。そう反省することから、改善、改革が始まる。強烈な動機を 持って、敢然と反対されてもやり通す覚悟を持てるか。何かを変えようと思う と、必ず現場から抵抗やブーイング、反対があるものだ。もろ手を挙げて賛成 など、夢のまた夢だと思えばいい。それくらい改革は痛みを伴う。しかし、 トップが自信があれば、断固実行する。その方向が正しいと確信がないといけ ない。 ●それには現場の実態を、いかに、どのように、グリップするかだ。これはな かなか難しい。社長が現場の視察する、などというと途端に余所行きになる。 掃除が始まり、非日常の動作になる。日常と異なる現場になる。突然行くと周 囲が迷惑する。だったら覆面顧客を作ってモニタリングすればいい。実際にコ ストを払ってあかの他人にお客様になってもらって、その店舗のサービス、接 客、応対のすみずみまで点検してもらう。その本当の現場を声を真摯に受け止 めることから改革は始まる。勇気をもって取り組む覚悟をする。