**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第570回配信分2015年03月30日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その68 〜社長室や会議室にホワイトボードを購入する〜 **************************************************** <はじめに> ●いろいろな会社の会議に参加させていただくことがある。本当に運営、やり 方、方法に関しては千差万別。その会社のカラー、歴史、空気、風土、文化、 レベルなどが一目瞭然になる。当方は、色々なケースを見ているので比較がで きるが、その企業の方はそれしか知らないので、あまりやり方に頓着されな い。こだわりもない。旧態依然と、同じやり方でずっとやっていらっしゃる。 こう変えたらいいのにと、遠慮がちにアドバイスしても、なかなかそう簡単に は変わらない。永年やってきたことは、変化するのは難しい。 ●会議で決まったことが、その通り実行され、結果が出るとなると、もっと大 変だ。社長が、トップが指示、オーダーしたことが、必ずしもその通り実行さ れるという保証はない。人数の少ない中小企業なら、なおさらだ。できない理 由は一杯ある。人数が少ない、人手がない、時間が足りない、おカネがない、 設備が古い、メンバーのレベルが低い、などなど。挙げればきりがないくら い、愚痴のオンパレードとなる。社長もある程度現場のことは分かるから、ど うしてもその理由、言い訳に理解を示す。かくて、何も変わらない。 ●いったん会議で決まったこと、オーダーしたことが、いとも簡単に反故にな る。それを誰も咎めない。できないのは仕方ないという空気が蔓延する。そん なことを言っても・・・、という言い訳がましい理由が先行して、せっかくい いテーマが上がっていたのに、誰もそれを我がことと思っていない。担当部署 の責任者の部長ですら、本当にそれをやるんですか?というような腹積もり が、みえみえだ。かくて、スローガンはぶちあがるが、実行に移らない。毎 年、毎年、04月の年度初めに同じことがテーマに上がる。 <ホワイトボードに書く> ●まず、社長室、会議室、社長の席がある大部屋の社長の席の後ろに、少々大 きめのホワイトボードを購入する。社長席の後ろに置かれるのがいいだろう。 そこに、社長はオーダーしたテーマ、課題を箇条書きに書く。その際に、@ オーダーした人の名前 Aオーダーしたテーマ Bオーダーした日付 C納期 の日付 を見やすく、分かりやすく、大きな字で書く。該当する人の名前を書 くのは気が退けるから、それは少々あいまいな表現になっても仕方ない。しか し、オーダーしたテーマを皆が見れるようにする。それが大事なのだ。 ●社長が、誰それに、このようなテーマをオーダーされていることを、皆が見 て、理解して、納得して、共有する。そのことが非常に大事なのだ。会議でい くら徹底しても、いくら議事録が回覧されても、いくら朝礼で言っても、ホワ イトボードに大きく大きな字で書いてあると、逃げようがない。人数が5名く らいだと、5つに分割して、縦に線を引いて、一番上にオーダーの対象になる 人の名前を大きく書く。そしてその下に、オーダーしたテーマを箇条書きに簡 潔に書く。日付と納期も書き込む。全員がそれを見れるようにする。 ●外部の方が頻繁にそこまで入って来られる建物の構造だと、それは少々まず いから、そこは工夫が要る。くるっと反転して見えない様にする、布をかけて その時だけ見えない様にする、模造紙でもいい。あまり外部の方に、あけすけ に社内の取り組むテーマが見え見えになるのは、嬉しいものではない。特に、 前向きなテーマならいいが、外部に対して少々まずいテーマもあるだろう。取 引先の社長さんに見せたくないテーマも多いはずだ。そのようなときには、や はり隠すしかない。いただけないが、仕方ない。 <全員が見ることができる> ●成岡も、大卒入社した製造業メーカーで、25歳くらいのときに異動転勤で赴 任したS部長の下で、徹底的にこの方法で絞られた。とことん、このやり方で 鍛えられた。S部長の部屋には、後ろに大きなホワイトボードがあり、その真 ん中あたりに成岡の名前があり、その下にオーダーされたテーマがびっしり書 いてあった。多くの人が部長室に出入りするから、そのたびに後ろのホワイト ボードは、いやでも目に入る。多くのスタッフ、多くの仲間がそれをまじまじ と眺める。そして、誰もがオーダーされているテーマを目の当たりにする。 ●そのテーマが終了し、一定の結果が出れば消される。そして、また違う新し いテーマが書き込まれる。オーダーされた日付も書かれているから、これが新 しいオーダーだとよく分かる。消されないといつまでも残っている。非常に古 い日付のテーマが、ずっと残っている。非常にまずいし、恥ずかしい。1年前 のテーマが、いまだ消されずずっと残っているのは、恥なのだ。それが、みん なの前でオープンになっている。当然、他の人のもわかるから、確かに技術的 に難しいものはあるが、それでもずっと残っているのは、恰好悪い。 ●もう30年前くらいのことなので、当時は今と異なりパソコンなどという便利 なこのはなかった。なので、部長秘書的な女性の方が、1週間ごとにそのホワ イトボードのテーマを書き取って、紙に書いて管理職全員に配布していた。当 時の管理職は20名くらい。その全員に担当者にオーダーしているテーマ、日 付、納期などの一覧表が毎週、毎週、配布される。それを見ると、これは評価 表以外の何物でもない。誰が、どのように評価されているか、一目瞭然。査定 や評価面談などなくても、誰もが客観的によく理解できる。 <実行してなんぼ> ●当初、この方法は非常に嫌だった。呼ばれるたびにオーダーが増える。消え ないテーマがどんどん増える。S部長の部屋には、管理職が入替り立ち代わり 頻繁に出入りするから、昼ごはんの休憩のときに、よく言われた。また、増え たなとか、あんな難しいテーマができるか?とか、可愛そうという人もいた。 しかし、何よりいいのは、オープンなことだ。情報を隠すことなく、余すこと なく、全員に見せている。誰に、何を、指示したかと言うのが分かることは、 部長の方針そのものだ。難しい会議をしなくても、よく分かる。 ●お客さんが部長室に来るときは、くるっとボードを反転して隠す。最後は、 1枚のボードで足りなくなり、2枚のボードになった。次から次へと、よくも まあ、あんなに出てくるものだと感心した。なかなか、やり手の部長だった が、敵も多く、最後は役員にはなれなかった。子会社に転籍になり、最後は多 少不遇だったと聞いている。出来過ぎの感もあったので、敵も多く、足を引っ 張る人も多かった。出る杭打たれるとは、まさにこのことを言うのだろう。大 企業は大企業の論理がある。当時はそうだった。辞める気持ちになったもの、 これと無縁ではない。 ●しかし、今でもこの方式は有効だと思っている。いじめではなく、鼓舞する 意味でも、全員に周知徹底する意味でも、コストをかけないことでも、非常に 簡単で有効だ。今まで多くの社長にこのことを面白くおかしくお話ししたが、 いまだかって取り入れた方はない。いいことだと思っても、いろいろなしがら みで一歩前に出ない。それでも、いいのだという従来の空気に支配されてい る。これをぶち破るのは、実は自分しかない。意思を固め、覚悟をして、会社 を変える気概を持たないと難しい。それをやるのは社長自身しかない。