**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第573回配信分2015年04月20日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その71 〜自力で変化を起こす強い意志を持つ〜 **************************************************** <はじめに> ●SHARPが経営再建に苦しんでいる。2000億円の赤字決算の見通しで、主力銀 行が融資をして救済を検討している。本社ビルの売却、3,000人規模のリスト ラ、希望退職をするという。あの名門企業が、どこでどう間違えたのか。判断 を見誤ったのか。つくづく、経営とは怖いものだと思う。名門であろうが、老 舗であろうが、環境の変化は容赦ない。ぼやぼやしていたら、あっという間に 飲み込まれる。大企業だから大丈夫などというのは幻想に過ぎない。大企業で あれ、環境の変化に対応できないと、こうなる。 ●関西の名門企業では、SANYOもなくなった。パナソニックも一時おかしく なったが、現在の社長の英断で白物家電事業から脱皮し、車などへと事業領域 を大胆に変えつつある。相当勇気の要る決断だったが、果敢に変化を求めての 英断だった。結果でしか評価されないのが辛いところだが、これほどの大企業 の舵取りをするのは、至難の技だ。しかし、できた企業とできなかった企業 で、これほどの差が付く。表に出ないドラマはたくさんあったのだろうが、痛 みを伴う改革をどれくらいスピーディにできるか。 ●中小企業はできそうで意外と難しい。創業者である現在の経営者が興した事 業の場合、そう簡単に事業領域を変更できない。成功体験が強いと、どうして もそうなる。事業が成功したのは、20年以上も前のことだが、どうしてもそれ に引っ張られる。あっさりと捨てられない。成功体験はすぐに忘れるようにし ないといけない。真っさらな気持ちでいつも事業に取り組むことが大事だ。し かし理屈はそうでも、現実にはそうはいかない。特に創業者がまだトップで頑 張っている企業では、なかなか周囲から変化を起こすのは難しい。 <自らの変化するには何かを捨てる> ●つまり冒頭のコラムで書いたように、自ら仕掛けて変化を起こさないといけ ない。変化、変化とよく言うが、自分が変化することが一番難しい。他人や周 囲には変化を求めこそすれ、自らが自発的に変わるのは、非常に困難だ。それ ができれば、立派なものだ。普通は、なかなかできない。もし、仮にできたと すれば、通常は何か外部からの強烈な圧力に依るところが多い。いわゆる外圧 による強制的な変化だ。外圧とは、避けることのできない環境の変化。為替の 変動、アメリカ経済の動向、自然環境の変化、政治体制の変化などだ。 ●抗えようのない変化には速やかに諦めて対応するしかない。しかし、なかな か昨日までやってきたことを簡単に変えられない。未練もあるし、過去の投資 もある。在庫もあるし、従業員もその仕事を一生懸命やっている。得意先も一 部は残っているし、世間体も悪い。かくて、ずるずると引きずることになる。 引きずっている間に、状況が好転しないかと一縷の望みをかけて我慢する。し かし、状況は好転しない。どこで決断するか、非常に難しい。色々な人の顔が ちらつく。いつまで経っても決断できないで、時間が経過する。 ●背中をどんと押してくれるような人がいると、比較的楽だ。他人のせいに幾 分はできるから、肩の荷物の重たさが軽くなる。しかし、それは言い訳に過ぎ ない。ことの本質は変わらないから、実質的には何も変わっていない。残念な がらというか、やむなくというか、とにかく変化は外部で起こっているので、 それに対応するには自らが素早く決断し、実行するしかない。何かを捨てるこ とを決めないといけない。何も捨てないで、何も痛みがなくて、何も失うもの がなくて、それで変われるならご同慶の至りだ。そんなことはあり得ない。 <常に頭を煮詰めるとぱっと閃く> ●何かを決めれば、何かを捨てる。何かを始めるなら、何かを止める。若いう ちは時間もゆっくり流れるから、止めることはないかもしれないが、そこそこ 年齢がいくと時間が速く経過するから、何かを捨てないと何かは入らない。隙 間を作ることが大事で、どんどん要らないものは捨てる。半ば強制的に捨てな いといけない。なので、弊社は3年か4年くらいで事務所の式年遷宮を行うこ とにしている。そういう強制的な環境変化を起こさない限り、絶対と言ってい いほど、自ら変化することは難しい。 ●SANYOやSHARPのことに戻るが、どこでどう路線を誤ったかは別にして、修正 に時間がかかり過ぎた。あるいは、修正できないところまで一気に行ってし まった。ルビコン川を渡ると、もう戻る橋はなかったのかもしれない。しか し、どこへ行っても断腸の思いで過去を捨てることはできたはずだ。それは トップの決断以外に何もない。大きな決断は、あまり緻密に考えるとできな い。言い方は悪いが、ある程度アバウトに、えいやっと決める方が正しい決断 ができる。ざっくりと考えたほうがいい。 ●ざっくりと考えて正しい決断をするには、日ごろから脳みそをそのことに集 中する。突き詰めて、考えて、イメージして、どうしよう、どうしようと、繰 り返し、繰り返し反復する。そして、どこかにその経過を仕舞っておく。頭の どこかの引き出しに煮詰まった考えを仕舞い込む。そうしておくと、何かを見 た瞬間や誰かに会ったとき、何かふっとした一言を聞いたとき、書籍のある一 行を読んだときなどに、閃いたようにぱっと考えがまとまる。決まらなかった ことが、すっと決まる。決断とはそういうものだ。会議室での緻密な議論では 決まらない。 <変われた企業だけが生き残れる> ●決めたら、迷わない。反芻はしてもいいが、それは行動のこれからの過程を シュミレーションするために色々と迷い、考えをめぐらす。それは、何回して もいい。しかし、一度決定したことを、またスタート位置に戻すのは、よくな い。あまりに大きな環境の変化や出来事が起こったなら、それは一度戻しても いいだろう。しかし、意思の弱さから、またティーグラウンドに戻ってティー ショットを打ちなおすのはルール違反だ。過去を振り返るのは、「私の履歴 書」を日経新聞に連載するときだけでいい。 ●変化を起こすと、非常に疲れるし、くたびれる。昨日と違う環境に身を置く のだから、非常に消耗する。会社を変わる、事業部を転籍する、東京に単身赴 任に行く、通勤のルートを変える、業務のソフトを新しくする、携帯電話を新 しくする、などなど。忙しい日常にこのような変化を持ち込むと、非常にメン タルが消耗する。それがいやだから、敢えて昨日と今日で変えない。そうなる と、毎日が同じことの繰り返しになる。大企業も、一度安泰な環境に身を置く と、なかなかそのぬるま湯から抜け出せない。危機感が持てない。 ●中小企業は意外と変化を起こすことは難しい。要は経営者自身が変われない からだ。経営者自身が変われないと、あるいは周辺の同族一族役員の方々が変 わらないと、会社は変わらない。相当な覚悟を持って、これからの20年、30年 を考えたとき、今のままでいいはずがない。しかし、現実を館gなえると一歩 足が出ない。その中で悶々としているのが現実だ。そこで、勇気を持って一歩 踏み出した企業のみが残る。人口が減少する現代では、変えることが必須だ。 しかし、変わることは至難の技だ。勇気を持つことだ。