**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第575回配信分2015年05月04日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その73 〜けじめをつけてスイッチを切り替える習慣をつける〜 **************************************************** <はじめに> ●ただ、何となく04月から新年度が始まった会社も多いかもしれない。官公庁 も、学校も、企業も03月末でいったん当年度が終わって、04月から新しい年度 に入る組織が多い。弊社は、たまたま設立が10月01日だったので、09月末決算 にしているが、特にそこで大きな切れ目があるわけではない。なんとなく、09 月30日の月末処理をして、すぐに翌日が10月01日になる。新しい年度が始まっ たといっても、さほど実感はない。大企業のように大量の新入社員が入社し て、入社式でも行えば別かもしれないが。 ●以前に在籍の出版社では、会社の規模が大きくなった昭和61年以降、毎年10 名〜20名前後の新卒大卒採用を続けていた。昭和60年からずっと採用の責任者 も兼務していたので、この03月から04月にかけては、入社から受入れ、研修、 配属、定着など、非常に忙しい時期だった。桜満開の休日には、相当数の新入 社員と人事部のスタッフを伴って、大阪城公園で花見をした。また、運動不足 になるので、ソフトボール大会やボーリング大会を企画したりした。男女半々 くらいだったが、終わってからの飲み会も気を遣う。 ●忙しかったが、時期的な切り替えは非常に明確にできた。なにせ、04月01日 は逃れようもなくやってくる。地方出身者も多かったので、学生時代の下宿を 出ないといけない人もある。住まいの手配から、新生活への切り替え、新しく 会社へ出勤する。すべての生活が切り替わるが、企業側は意外とそんな大きな 出来事は、たくさんない。盛大、この04月01日の新入社員の入社式くらいだ。 それも、学卒新入社員を採用しない企業なら、なんとなく新年度になる。社長 からのメッセージもなければ、なおさらだ。けじめがつかない。 <年度がわりにけじめをつける> ●年度が変わると、02か月以内に決算があって年度業績が確定する。しかし、 学校と違って業務はそこで途切れないから、表面的な業務は特に何が新しくな るわけでもない。成岡もシステムを担当していたときは、この年度の切り替え 時期は多忙だった。経営年度が変わり、新年度がスタートすると、いろいろな コードを新しく更新しないといけない。過去年度のデータのバックアップを更 新したり、これはこれで結構忙しい。しかし、これは裏方の仕事だから、営業 などの対外的な仕事では影響ない。かくて、何も変わらないまま新年度にな る。 ●そこで、経営陣は新年度になったら、何らかの形でけじめをつけないといけ ない。成岡の関わる企業では、たいていこの年度切り替えの時期に、全体会議 など社員従業員を集めて、全員集会のような形の会議を開催している。そこ で、代表者から前期の数字の結果、今期以降の計画などを報告、説明してもら う。うまくやっていただける企業もあれば、まだ経験が乏しく従業員にきちん と伝わらない企業もある。それでも、内容もさることながら、けじめをつけ て、前期を総括し、今期の決意を述べることに意味、意義がある。 ●代表者、経営陣にとっては、従業員にプレゼンするという場、機会なので、 非常に重要であり、大きなポイントになる。代表者によっては、正直人前でプ レゼンするのが苦手な方もある。いや、過去にやったことのない方もあった。 しかし、これは逃れようもない。代表者や経営陣にいる限り、これは当然の責 務なのだ。逃れようがないなら、正面から当たるしかない。まともに当たっ て、砕ける場合もあるが、これは貴重な経験だ。初めから、未経験のことをう まくやれるはずがない。大事なことは逃げないことだ。 <マンネリの打破は経営者自らが始める> ●マンネリ的な日常で新しいことを始めるには、スイッチを入れる必要があ る。ギアを変えないといけない。何もなく、平坦な道を走っている車は、燃費 はいいが一定の速度で走っている。そんな日常に、新しいプロジェクトや新し い大きな案件を始めるには、何かのきっかけが要る。人間は基本的に変化を好 まない、変化を拒絶する動物だから、変化を起こすには体内の免疫に打ち勝た ないといけない。免疫は自然に発生するから、この強い免疫力に打ち勝つくら いの強力な刺激がないといけない。 ●そのためには、時期的にけじめのつく時期が適している。年度の終了と、年 間の切り替え時期が一番適している。突然の会議でぶちあげても、何か違和感 があって、幹部社員のお腹の中にすとんと落ちない。経営トップは我慢して、 その適切な時期に大きな変化を起こす一石を投じる。満を持して、それまでに 温めたプロジェクトの構想を提示する。そのためには、時期的なけじめを明確 にできる時期が好ましい。それは年間にそう何回もない。なので、敢えてそれ を起こすことが必要になる。 ●だいたい、新しいことを言ったときの反応は分かっている。たいてい、賛成 派は少数だ。かく言う成岡も、以前の出版社のときは代表者が新しいびっくり するような企画を提示したときには、大きな違和感があった。どうしてもその 新しい企画が、ぴんとこなかった。日本ではあまり前例のないプロジェクトで あり、どうして自社がそんなリスクの大きな企画をするのか、納得がいかな かった。だから、最初は反対した。しかし、代表者は幹部の反対を押し切って 新しい企画を立ち上げ、成功に導いた。慧眼とはそういうものだ。 <チャンスは自らがリスクを取って作る> ●どうしても人間は保守的になる。特に、年齢が進むと考え方が保守的、守り に入る。守りはいいが、守っていただけでは得点は入らない。引き分けがいい ところだ。ときにはリスクを取って、攻めないといけない。しかし、攻めると きには勇気が要る。失敗したらどうしよう、うまくいかなかったらどうしよう と、マイナスの発想になる。そんなときに勇気を持ってリスクを取れというの は、簡単だ。それは、事業を自分の責任、甲斐性でしたことのない人の言うこ とだ。自分のおカネで事業をしていると、そう簡単には言えない。 ●しかし、一定の時期を選んで、けじめをつけて、反省をして総括をして、未 来に向けて一歩踏み出す。とりあえずは、大きな一歩でなくてもいい。確実 に、過去から未来に向けて一歩踏み出すことが大事だ。幹部社員や従業員に、 眼に見えて分かることが大事だ。形を変えることが一番わかりやすい。新しい 法人を作るとか、机の配置を変えるとか、組織図を変えるとか、チャンスは自 らがリスクを取って作らないといけない。移転や事業所の新設などは、最も分 かりやすい、眼に見える変化の象徴だ。 ●変化にはリスクが伴う。費用も伴う。時間のロスも起こる。面倒な手続き、 法的な手続きもある。税金のことも考えておかないといけない。移転などは住 所地の変更になる。しかも、業務が途切れてはいけない。金曜日までその地で 業務を行い、翌週の月曜日から新天地でスムースに業務が行えることが必要 だ。JRのダイヤの変更などは神業に近い。変化があるとくたびれる。しかし、 その変化を自らトップが率先して行うことが、組織の活性化に一番大きなイン パクトを与える。けじめの時期に一歩踏み出す。その勇気を持つことだ。