**************************************************** ・・・・・経営の現場から・・・・・ 【成岡マネジメントレター】(毎週月曜日発行) 第576回配信分2015年05月11日発行 中小企業の経営者が日ごろから備えること その74 〜7割見えたら実行する、7割見えるまでとことん考える〜 **************************************************** <はじめに> ●タイトルテーマの7割とは根拠のある数字ではない。また、何かデータの分 量が70%になったらという意味でもない。だいたいの目安と言う意味だ。古く は、某日本国の総理大臣が現在の消費税を導入することをぶちあげたときに、 消費税の税率の根拠を聞かれ、「腰だめの数字」と説明したことを覚えてい る。一国の総理大臣の発言としてはいただけないが、何となくニュアンスは分 かる。雰囲気として、落としどころ、納得性のいい数字と言う意味だ。7割見 えるということは、残り3割が見えないということだ。 ●逆の言い方をすれば、見えない部分が3割以上あったら、まだ決断できない ということだ。この「3」という数字は経営的には非常に重要な数字だと心し ている。まとめるときも、必ず3つに集約する。組織メンバーの構成は、リー ダー以下3名を基準にする。講演の最後に言うキーワードも3つにとどめる。 人間は3つ以上になると、散漫になり思考が分散する。見えない部分を3割以 下にするのは、考え方によれば非常に容易だし、逆に考えれば難しい。非常に 微妙な絶妙のバランスが、この3割なのだ。 ●7割見えるまでは、いろいろと考える。いろいろな人に意見を聞き、いろい ろなものを調べる。物知りの人に聞いてみたり、実際に自分も出かけて自分の 目と耳で確かめる。大事な部分は決して人任せにしない。どこが大事かを見極 めるまで、自分が自信が持てるまで、そこはとことん譲らない。どうでもいい 部分は、最初から人に任す。これを、ときに逆にされる経営者の方がある。そ んなことは部下に任せて、経営者はもっと大事なことをやるべきですよと、こ こまで口から出かかっても言いにくいことも多い。 <何げない一言が決め手になる場合もある> ●時間をかけても仕方のない場合もある。時間をかけたから自信の持てるデー タや資料が集まるとは限らない。どこの誰に会いに行って情報を得たのか。何 を調べたのか。どれくらいエネルギーをかけたのか。そんなことより、たった 一人の発言のキーワードが大事だったこともある。成岡の過去の経験では、意 外とそのようなことが多い。テスト販売の商品説明会で、参加したその企業の 女子社員の方が、「あら、これ、素敵ね」と言っていただいた一言で、発売の 意思決定ができたこともあった。 ●それまで随分、ああでもない、こうでもないと、悩んでいた。テスト販売の サンプルも3種類用意し、始まる前に雑然とテーブルに置いておいた。正式な プレゼンはまだ始まる前だったが、会場をセッティングに来た女子社員の方 が、乱雑に置いてあるサンプルの中からひとつを取り出して、「あら、これ、 素敵ね」と突然言われた。そばにいたので、すかさず「どうしてこれがいいで すか?」と質問すると、「恰好いいじゃない、私、これ買うわよ」と言われ た。多分に感覚的なもの言いだが、非常にリアルだった。これが決定的な決め 手になった。 ●この商品はその後全国発売して、大ヒットした雑誌だ。逆に、この成功があ だになり、その後慢心した企画が乱発された。結局、平成07年くらいに会社は 破綻したのだが、過去の成功体験を引きずった結果だ。過去の成功体験に拘泥 するなとは言うが、それは理屈。なかなかその呪縛から抜け出せないのが普通 だ。そこを突破した経営者は、本当に1000人に一人くらいかもしれない。たい ていは、過去の一番業績のいいときがイメージとして残り、そのイメージから 抜け出せない。いま、業績が悪いのは、自分のせいではないと錯覚する。 <普段から7割見えたら決断する習慣をつける> ●戻って7割見えたら決断できるように、日ごろから情報を仕込み、考え続け ておくことだ。会議が始まったから、急に頭をそちらに切り替えることは、難 しい。経営者としての優先順位を明確にして、優先順位の4番目以下のこと は、あまり考えないことだ。上位3つに絞り込んで、日常の8割以上をそのこ とに費やす。何もおカネを費やすことではない。自分の時間、思考の過程、エ ネルギーの集中度をその上位3つに集約する。決して、足下、目先のことに気 が散らないようにしないといけない。そうでないと、いち従業員の仕事をする ことになる。 ●業績が芳しくない企業は、これが逆転している。経営者が従業員レベルの仕 事をしているから、誰も将来のことを考えていない。そのような状態で、何か 急に外部からボールを投げられると混乱する。補助金の申請をするかどうか、 金融機関から持ち込まれる借り換えの案件をどうするか、急に依願退職が発生 し補充の募集をしないといけない、設備が急におかしくなり修繕するか買い替 えるかるかリースにするか、非常に迷う。迷うのは判断がすぐにできないとい うことで、基本方針が定まっていないから。出たとこ勝負の経営になってい る。 ●従来から7割見えたら決断するような習慣、習性をつけていれば、そう案件 の判断が停滞することはない。大事なことが決まらず、子細なことに時間をか けてしかも判断が間違うのは、すべて経営者の責任だ。7割が見えるように、 周囲にこういう情報が欲しいとか、集めてくれとか、人に会いに行きたいと か、場合によっては海外に行かないといけないとか、頭の中にあることを明確 にする必要がある。そういう意味で、連休などは非日常の環境に身を置ける一 番いい機会なのだが。果たして有効に使えたか。 <優先順位の4番目以下はやらない> ●会社にいると、意外と雑用が多い。いろいろなことが目につく。社内のちら かり具合も気になる。ときにそれも重要だが、ときには3割以上の見えないも のを見えるようにするために、外に出ないといけない。午前中は中にいても、 午後からは外に出て自分の眼で確かめる。重要な人物に会いに行く。聞きに行 く。新しい体験をしに行く。東京にも足を運ぶ。用事だけして帰ってきては勿 体ない。少し足を延ばして話題のスポットを見に行く。そういう普段の努力が ないと、急に見えないものが3割以下になることはない。 ●いま決断しても、その結果が出るのが相当先になる案件が多い。今日仕入れ て、明日販売するなら、まだわかりやすいが、ほとんどはそうはいかない。季 節感のある商材なら、ワンシーズン先送りになる。来年の連休がチャンスな ら、1年先の案件になる。では、本当にそのときに環境がどうなっているか、 正確には誰にも分からない。しかし、決断は自らしないといけない。とにかく 自信が持てる7割以上の情報を自分でつかむことだ。それがトップの仕事であ り、ミッション、つまり責務だ。誰も、最後の決断はしてくれない。 ●結論を先送りするのは、不作為の罪になる。罪と言うと大層だが、何も決め ない、しないということは、マイナスの結果しか残さない。まず、バッター ボックスに入る、次にバットを振るという意思決定をしないといけない。3割 打てれば大打者だから、残り7割は凡打なのだ。しかし、印象として3割打っ ている人は、毎回ヒットを打っているように見える。つまり、積極的に振って いる。振らないと当たらない。日常、優先順位をつけて4位以下のことはやな らいことだ。また、やらないで済むように組織を作らないといけない。